デュポシオンの迷宮#4:土器人形と壺に宿る思考の痕跡
(この記事はストーリーパズルでありフィクションです)
前回:デュポシオンの迷宮#3
隙間を満たす土器
この建物にある中途半端な隙間の一つに、高さが僅か30cmほどしかないものがある。奥行きは2m以上あり、物置にするにも使い勝手が悪すぎる空間だ。そんなデッドスペースを埋め尽くしているのが、人の形をしたたくさんの土器である。それぞれ形の違うその人形たちには、細かい模様がびっしりと描き込まれており、中でも繰り返される目のモチーフが何かを訴えかけてくるようだ。
また、人形たちの向こう側は壁ではなく、一応別の通路に繋がっていることが分かっている。しかし、繋がっていると言っても向こうのフロアは2mほど低くなっており、ただ口を開けているだけと言った方が正確だろう。果たして、行き当たりばったりでなくして、こんな構造が生まれることがあるのだろうか。
道具部屋の壺
建物の中には、用途を推定できる部屋も少ないながらある。その一つに、道具部屋とされている場所があり、そこにはいくつかの壺が残されていた。顔料などが入れられていたようだが、特筆すべきは中身ではなく壷の表面に描かれた模様で、職人の町から出土したものとは全く異なる。
一見、それは単なる装飾に見える。格子状の曲線が壷の周囲をぐるっと囲んでいて、美しいリズムを生んでいるのだ。しかし、よく観察すると、ところどころに塗りつぶされた箇所があることに気づく。それはとても不規則に現れ、せっかくのリズムを狂わせている。
いったい、何のためにそのような細工をしたのだろうか。その疑問を解き明かす鍵は、塗りつぶされた箇所どうしの位置関係にあった。壺を真上から見ると、それらはどうやら特定の季節の星の配置に重なるのだ。言わば大まかな天文図だ。
しかし、それを描くのになぜ道具部屋の壺が選ばれたのか。それは未だ分からないままである。
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