見出し画像

図解で学ぶ成功事例の横展開方法

1967年、米国内陸部の最強を決めるアメリカンフットボールの大会「オレンジボウル」でジョージア工科大学のコーチが、フロリダ大学に負けた理由をこのように語っています。

「我々はゲータレードを飲んでいなかったからね。」

ゲータレードはポカリスエットやアクエリアスのように、選手が激しい運動によって失う水分と電解質を素早く補給するための飲料水として開発され、長年にわたって世界中のアスリートたちに愛されているスポーツ飲料水です。


Ekkamai Chaikanta / shutterstock

偉大なゲータレードは、意外な開発ルーツを持っています。1960年代、南アジアでコレラが大流行した際、東パキスタン(現バングラデシュ)では多くの人々が命を失いました。原因は、適切な給水や衛生状態が整備されていなかったことによる感染症でした。

WHO が現地に赴き、調査を開始すると、意外な方法で下痢を止められることが明らかになりました。それは、ココナッツやニンジンの絞り汁、米のとぎ汁などを配合した飲料を患者に飲ませるという民間療法だったのです。その事実を知った、当時のゲータレードの最高科学責任者は、脱水症状の患者がその方法で素早く水分を補給できるならば、アメフト選手にも適用できるだろうと考えたのでした。

このエピソードは、事例をシンプルに構造化することの極めて重要な役割
を示しています。例えば、「野菜の絞り汁を別の患者向けに横展開する」という具体例だけで思考を停止してしまうと、企画は通らなかったでしょう。ここで、ゲータレードの科学者たちが優秀だったのは、「脱水症状の人へ塩分に炭水化物と糖を加えた水分を与えると急速に吸収される」という事に構造化したことです。


そして一度上げた抽象度を「スポーツ飲料水」「スポーツ選手」という具体に落とすことで、ゲータレードが誕生したのです。

ゲータレードの成功事例をさらに抽象化してみましょう。例えば、上司から「A 社への提案が成功したから、B 社にも横展開してくれ」との指示があったとします。しかし、A 社での成功事例を、そのままそっくり真似してB社に提案しても、うまくいく確率のほうが低いでしょう。なぜならば、次の図に示すように、A 社とB 社の間には目に見えない「違いの壁」が立ちはだかっているからです。


この目に見えない壁は図解によって一度、抽象度を高めてから、もう一度具体に落とすことで横展開できるようになります。重要なのは、A 社の成功事例から、何が良いポイントだったのか、何が顧客にとってメリットだったのかを要素に分けて構造化し、抽象度を上げることです。そこで初めてB社にも応用できるようになるのです。



ダイアグラム思考 ver.2024についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

さらに図解に興味が出た方は書籍『ダイアグラム思考』を手に取ってみてください。



いいなと思ったら応援しよう!