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地球に出会う旅② ノルウエー&コペンハーゲン ホテル編 

私は超怖がり。
だからホテルにひとりで泊まるなんて、よほどのことがない限り無理。

真夜中、寝ているときにユーレイが出たらどうしよう。
いい年をしてこれである。
ベッドに入って明かりを消すと、どんどん想像は膨らんでいく。
部屋の電気が勝手についたらどうしよう。鏡になんか映ったらどうしよう。
窓の外から……。

やめよう。

だから国内旅行は日帰りのみ。宿泊を伴う旅はほぼ友達と一緒だ。
どうしてもひとりで行かなければならないときは、先に述べた理由で朝まで電気はつけっぱなし、テレビもつけっぱなし。
当然寝た気がしないので翌日は寝不足でぐったり。

そんな私がいまやホテルの一人部屋に宿泊している。
ここはデンマークの首都コペンハーゲン。
スカンジナビア航空で到着して、ホテルにチェックインしたばかり。

友達となかなか都合がつかないお年頃になり、新型コロナもあって誰かと旅行に行くという機会がめっきり減ってしまった。
しかし旅行に行きたい。やっぱり行きたい。
気持ちは募る。
その欲求の方が勝ってしまった私は、思い切ってひとりで国内の旅行に行き始めた。
やはり人間、慣れである。
いくつか数をこなすうちに、一人でホテルに泊まっても眠れるようになった。
まだちょっとビビりではあるが。

そして昨年とうとう海外ひとり旅(添乗員付きツアー)デビュー。
疲れたときの一人部屋はかなり快適だった(なんと大きな成長!)。
そこで味をしめたわけである。
ツアーなら同じホテルに添乗員も他の客も泊まっているという安心感もある。
何か出ても(何?)逃げ道があるので大丈夫。

ホテルの窓からはかわいらしい鉄道が見える。
ミニチュアのようだ。近くに駅があるらしい。
時刻は夜の8時。
白夜のお陰で窓の外は昼間のように明るい。
お陰さまでちっとも怖くない。

しかし北欧のホテル。話には聞いていたが、部屋にはアメニティも備品もほとんどない。
歯ブラシはもちろんティッシュもない。
かろうじてシャンプー&ボディソープ、コンディショナーがあるばかり。

ワインを冷やしたかったが、ミニ冷蔵庫もない。

北欧はエコが進んでいて必要最低限しか備品を置かないのだそうだ。
必要最低限の基準ってさあ、めっちゃ安い宿ならわかるけど。
これはエコと言いつつ、ていのいい経費節減では? 
と心の中でぶつぶつ文句を言う。

日本も最低限のアメニティしか置かなくなったところも増えてきたが、それでもまだましだ。
そのサービスに慣れすぎてるんだけども。

日本から持ってきた緑茶やコーヒーを飲みたかったが、電気ケトルもカップもなかった。
歯磨き用のグラスが洗面所にぽつんとあるだけだ。
下調べしたときには確か電気ケトルありと書いていた気がする。

お茶が飲みたい。日本茶が。
ティーパックはある。しかしお湯がない。カップもない。

ロビーに降りて添乗員さんに「電気ポット借りられますかね?」と聞くと、フロントのスタッフに確認してくれた。
ポットの貸し出しはないが、ロビーの有料のコーヒーマシンからお湯が出る。
それは無料なのでどうぞとのこと。
しかし今度はカップがない。
有能な添乗員さんはすぐにそばにあるバーのカウンターの中にいたおじさまに交渉してくれた。
バーのおじさまは快くマグカップを貸し出してくれた。
英語の話せない私には、こういうときやっぱり添乗員さん付きツアーである。
しみじみとありがたさを感じる。

部屋で日本茶を飲みながら、やれやれとくつろいでいると今度はお腹がすいてきた。
このツアーに初日の夕飯はついていないのだ。
持ってきたカップ麺を食べたい。
ロビーに降りればお湯はある。

少々面倒くさいと思いつつ、カップ麺を持ってロビーに降りた。
と、エレベーターの中で重大なことに気がついたのである。
なんと箸を持ってくるのを忘れてきたではないか。
どうしよう。手で食べる? いや無理。熱い。 
何か代わりになるものはないかと頭の中は高速回転、ぐるぐる解決策を探す。
しかしどう頭を巡らしてもいいアイディアが浮かばない。

仕方ない。
またバーで借りるか。と先ほどのやさしいおじさまの顔が浮かぶ。
しかしいかんせん英語が話せない。
まさかこんなことくらいで、部屋に入った添乗員さんを呼び出すわけにもいかない。

しょうがないのでエレベータの中でフォーク貸しての英語を頭の中で繰り返し、意を決して先ほどのバーのおじさまにたどたどしく伝えた。
おじさまははじめ「?」ってお顔だったが、理解すると「あーはいはい」ってな感じで笑顔でフォークを一本取り出した。
と、急に元に戻して新たにナプキンにくるんだナイフ、フォーク、スプーンの一式を取り出して、私によこした。

それだけのことなのに、私はうわあ、と大感激である。
心を込めて「サンキュー」と言うと「ユアウエルカム」と笑顔で返すナイスガイ。

無事お湯とフォークを手に入れて、おいしくカップ麺をすするコペンハーゲンの夜であった。

こういうささやかなハプニングが後から旅の楽しい思い出になるんだよね。


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