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旅はめんどくさい。なのになぜまた旅に出たくなってしまうんだろう。

旅が楽しいのは予約するまでだ。

まだ行ったことのない国、まだ見たことのない景色を求めてどこへ行こう考える。ツアー会社を選び、金額、日数、航空会社、ホテルのランク、周遊する観光地なんかを比較する。
この土地のおいしい物はなんだろう、お土産にはどんな物があるんだろう。
どんどん気持ちが盛り上がってくる。
言葉も文化も異なる国へ行って私は新しい発見をするのだ。

勢いのまま予約ボタンをポチッ。続けてクレカで支払い完了。

やっちまった。やっちまったよ、あたし。大丈夫か? ちゃんとまた働いて稼いでこいよ。旅行のために。

その夜、軽い高揚感と少しの疲れと共に私は満足して眠りにつく。戦い終えて……の気分だ。
そしてこの時こそが心弾むピークだ。

実際に出発日が近づいてくると、あの多幸感は徐々にしぼんでいき、反対にどんどんめんどくさくなる。
どうしてこの国に行きたいと思ったんだっけ?
持っていく服はどうすればいいんだろう。
お土産も買わねばならない。誰と誰と誰に?
そうだ、両替はどうしよう。
自由時間があるけれど、お店とか調べておいた方がいいかな。
ホテルは大丈夫なんかな、幽霊は出ないか。

などなど色々なこと余計なことが頭の中を駆け巡り、旅行を決めたことをうっすらと後悔する始末。

体は動かない。しかし自らキャンセルする気はない。いっそのこと不可抗力で、例えば台風が来て欠航になるとか、突然何かの都合で催行中止にならないかななんて、不謹慎なことを考えてしまう。

それでも。
重い腰を上げてのろのろと荷造りを始め、パスポートとクレジットカードを確認し、スーツケースをバチンと閉じて鍵をかけた時には、すっと立たたせたスーツケースのように私の気持ちもキリッととしている。
私は心地よい日常のマンネリズムを叩きこわして、まだ知らない空に会いにゆくのだ。
いざ。

つづく


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