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TikTokが大人気なわけを、勝手にNPS®調査してみた

調査会社と一緒に、TikTokほか動画サービス4社の推奨度の調査を、勝手にやったので公開メモ。先日、THE GUILDとしての仕事のほうで、テスティーという、リサーチ会社の顧問となりました。ティーンエイジャーに特につよい、ネットリサーチ会社です。

で「一緒にやるなら、せっかくだからNPS®調査の商品作って欲しいんですよ」と、無茶なおねだりしたら…実験的にアンケートをしてくれました。

以下は、NPS®アンケートをベースに、THE GUILDデータ部のみんなによる分析です。サンプル数は200-400人程度。対象はTikTokと、競合A、B、Cの3アプリ。内容は推奨度の調査(NPS®調査)となります。


そもそもNPS®調査とは

Net Promoter Score(System)の略です。簡単にいうと、「そのサービスを熱心に勧める人、批判する人はどれくらいいるのか?」を測る調査です。

海外では、Apple、Amazon.com、Google、Facebookなど、顧客志向を重視する企業で特に採用されるケースが多く、米国のフォーチュン500のうち、約30%がNPS®を経営指標として採用しているという統計もあるメジャーな調査。

質問は非常にシンプルで、基本的な問は以下の図の2つです。

こちらの回答を集計し、
・回答者を上図のように推奨者、中立者、批判者にグループ化
・自由回答されたコメントにタグをふり、グループ別に分析
などをして分析を進めていきます。

一般的に「推奨者」ほどサービスに対するロイヤリティが高く、利用頻度や金額が多い傾向があり、ポジティブな口コミをしてくれます。
一方「批判者」は、ロイヤリティが低く、ネガティブな口コミを発信する傾向があります。

実際にDELLが行った調査では、

・推奨者は年間に8人に肯定的なコメントをしていた
・批判者は年間に4人に否定的なコメントをしていた
・否定的なコメント1件を打ち消すには、最低5件の肯定的コメントが必要

という結果がでており、
新規獲得するためにはいかに批判者を少なくし、推奨者を増やす必要があるかがわかります。

それでは早速、TikTokと競合3サービスのNPS®をみてみましょう。


NPS®でみる各サービスの立ち位置

当初は4サービスの実名レポを書くつもりが、TikTokが圧倒的すぎて他社が可哀想な感じになったので、匿名比較をします。NPS®スコアは高いほどよいのですが、TikTokはダントツの好成績で-1.4。


ユーザー帯の分布は以下のようになります。TikTokは圧倒的に推奨者が多く、批判者が少ないことがわかりますね。中立者の割合はどこも変わりません。


TikTokを楽しんでるのは誰なのか?

このNPS®の差を深掘りするために、まずはシンプルに各サービスの年代構成を見て、どんな人がメインユーザーなのかをみていきましょう。

TikTok圧倒的に若い!TikTokとサービスAは10代が7~8割を占めています。
実際にTikTokを見ると女子高生などの投稿が多いので、ここは肌感と近そうです(*注、テスティーのサンプル母体はティーン多めで、10代が40%ぐらい。ですのでTikTokおよびA社が、相対的にB社,C社より10代を多く抑えていると考えるのがよさそうです。)。

さらに踏み込んで、各サービスごとに年代別NPS®ランク構成をみてみましょう。

どのサービスも10代が最も推奨者割合が高く、20代の2倍近くあります。
サービスを問わず、10代は推奨行動がかなり活発であるといえます。

つまりTikTokの強さの根源は、「10代を多く抱え込んでいる」こと、そして「10代が一番ヘビーにこのタイプのサービスを使い込んでいる」ことといえそうです。実際に10代が同じく多いサービスAもNPS®は2位となっています。B社、C社は実際のユーザー数にくらべて、あまり活発でないユーザーを集めている可能性があるわけです。

ただし、各年代ごとにサービスを比較すると、TikTokは20、30代以上でも相対的に評価が高いことがわかります。

これにはいくつか理由が考えられそうですが、、、試しにTikTokを触ってみると、親が子供の動画を投稿し家族で楽しむようなコンテンツもあり、世代を超えて楽しめる要素が強いといえるかもしれません。

若い女子高生を見にくるおじさんが多いのでしょうか? しかし、後ろめたい理由では、推奨しやすさには繋がらないため、違うと考えてよいでしょう。


プロダクトとしてのTikTokの評価はどうか?

今回の調査には、NPS®に加えて性能評価の項目も3つ設けてもらいました。
項目は『操作性』『コンテンツ』『デザイン』です。それぞれについて5点満点で評価してもらっています。

赤のTikTokはどの項目でも他競合を圧倒しており、アプリの完成度としても他のサービスより優れていると考えられます。


なぜ勧めたくなるのか?

スコアだけでなく、その理由のほうも見てみましょう。自由回答の推奨理由にタグをつけ、各サービスで登場した頻度の多い回答TOP3を並べてみました。

TikTok推奨者が最も言及している理由は圧倒的に「楽しさ」が多く、次いで「かわいい」や「友達」と続きました。TikTokの武器は、シンプルに「楽しいから」といえそうです。

もちろんTikTokにも有名ユーザーは沢山いるのですが、それが理由にはあがってきません。有名人を理由としている人は、回答者の1%以下でした。

他のサービスはどうでしょうか?

サービスA:「動画作成が簡単」が1番で、投稿者がハッピーなサービス
サービスB: 「芸能人」「応援」などがあり、芸能人応援サービス
サービスC: 「楽しく」「色々みれる」何でも屋的サービス

サービスCに関してはNPS®が4サービス中最低なので、なんでも見れるが、
勧めるほどではないという中途半端な立ち位置になっているのかもしれません。

TikTokというと「広告がウザい」というイメージもありますが、どうやら広告で無理やりユーザーを集めているわけでは「ない」ようです。まず「楽しい」プロダクトを作って、楽しさを求めてる人に、「楽しいよ」と声をかけています。大手アプリのマーケは、無理やりお金で関係ないターゲットまで集めて、大量離脱やミスマッチを引き起こしがちですが、そうなっていません。

有名人や力づくマーケティングによらない設計が、TikTokの本質ですね。


まとめ

今回のテストでTikTokの特徴は、

- 推奨アクティブな10代をしっかり囲えている
- 世代を超えておすすめできるサービス
- プロダクトとしての評価も他社を圧倒
- 推奨理由はシンプルに「楽しい」こと
- この楽しさはプロでなく、素人の投稿に支えられている

どうも有名人推しによるマーケティングは、この事業ドメインではオススメできる戦略ではなさそうです。各社はマーケティングに予算を投入する以前に、プロダクトそのもののブラッシュアップを行うのが良さそうです。


実際にTikTokをGoogle Trendsで調べてみると、かなりの勢いで伸びています。(赤がTikTok、他の色が今回調査した競合サービス)

これはTikTokが推奨者を多く獲得しているため、ポジティブな口コミがさらなるユーザーを呼び、健全に成長を続けていると解釈できるかもしれません。(広告ももちろんぶち込んでいると思います)


最後に

NPS®は単にスコアをみるだけでなく、こうしてスコアの原因を定性的に解釈したり、グループごとに比較するのが重要です。そして単発ではなく、継続的に調べ続けること。クライアントさんにお願いしても、なかなかやってもらえないので、軽く自力でやって公開してみました。


というわけで、太っ腹にアンケートを実施してくれたテスティーさん。分析を手伝ってくれた、THE GUILDデータ部の安藤さん渡邊さん、三古さん、森下さん、ありがとうございました!手弁当なので、ミスやもれがあったらツッコミをいれてください。

まだ商品化されてませんが、テスティーさんにはぜひこのままNPS®調査パッケージを作ってもらえたらなぁと(仕事が増えたらやってくれそうです)。またチャンスがあったらソーシャルゲームの課金周り、FGOやアズレンなどを調べてみます!

注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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深津 貴之 (fladdict)
いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。