note 月間2000万MAUによせて(あとCXOになってちょうど2年)
noteの月間アクティヴユーザー数(MAU)が2000万を突破いたしました。
大きくなると、スケールに合わせてできることも増えてきます。TV局さんとの連動ドラマ制作など、新しいnoteクリエイターの活躍の場が増やせるのは嬉しいこと。
一方で、数字のグロースはお目出度くはありますが、手放しで喜べることではありません。歴史上、フリーザ様の例のように、数字スペックに奢って消えていった強者は無数にいます。
ここは油断したくないので、noteに関わる、チームみんなで意識をすり合わせたいと思います。
数字に踊らされすぎずに行こう
2000万MAUって、ドラゴンボールの戦闘力みたいですよね。そういえば黄金期の少年ジャンプは、キャラの強さを数字化するのが大好きでした。戦闘力、超人強度、妖力値…子供の読者も多かったジャンプで、シンプルに強さを表現するためには、数字化がフィットしたのかなと思います。
一方で、数字による抽象化は、抜けるおちる要素も多くあります。フリーザさんの戦闘力53万のように、スペックにおごったキャラは、多くの場合、そのあとに負けてしまいます。
「数字指標は、絶対性を担保しない」というのは、ジャンプを読んだ子供には当たり前のこと。でも、大人になると、みんな忘れてしまいます。
今回は節目なのでプレスリリースを出しました。でも本来noteではPVやMAUなど、表面的な数字指標はあまり重要視してません。経営会議や取締役会にも出席もしていますが、儀礼的に報告はされていても、がっつり議論された記憶はほぼありません(たぶんCFOが見えないところで超頑張っています)。
もちろんデータはちゃんとみています。ただしデータチームが活躍するメイン領域は、noteにおける作品の「発見性」や、クリエイターの「継続性」の話が多めです。どうしたら、もっとnoteを使い続けてもらえるか、創作のはじめの一歩の障壁を取り除くかとか。
あと、世界人口は有限なので、永久に二次曲線で成長などありえません。今の成長カーブを基準に、脳に認知モデルを構築してしまうと、皮算用になりがちです。あくまでボーナスタイムとして認識するとよいでしょう。
単純な数字ではなく、数字の裏にあるバランスをみるべき
本来、僕たちが大事にしているのは、コンテンツパワー、発見性、継続性の3要素のバランスです。このバランスの維持こそがnoteのキモです。
エコシステムのような有機的なサービスには、「この数字が高ければ解決!」みたいな魔法の弾丸はありません。
人間ドックを思い出すとわかりやすいですが、尿酸値だけを完璧に100点満点にしても、ヒトは健康にはなれません。そんなことよりも、血糖値も中性脂肪も血圧もコレステロールも、「全体になんとなくバランスがとれていること」が大事なわけです。(単機能特化系サービスは、一点突破が逆にオススメです)。
急激にユーザーが増加しているということは、それに見合うだけの、コンテンツの発見性(露出)が必要となります。また新しいクリエイターが挫折しないように、治安を守ったり、大事にしているカルチャーを伝えたり、継続性の補強も必要となります。
単純に何かを伸ばすのではなく、「健康バランスがとれていること」あるいは「健康バランスを崩してまで、筋トレしたりしないこと」です。持続可能性をもった成長こそが、もっとも大事なことです。
「健康のためなら死ねる」というジョークが、健康業界にありますが、スタートアップ業界では割と本気で「短期の目標達成のためなら、持続可能性を壊してもいい」という意思決定が行われる印象があります。
そういう落とし穴に陥らないようにしつつ、noteチームの注意は、より大きなチャレンジに意識を割いていきたいと思います。
noteのネクストチャレンジ
表面上の数字よりも、僕らが真に頑張らないといけいこと。それはユーザー数の急増と、noteの理念や世界観とのバランス取りです。
サービスの急拡大は、擬似的な移民問題などを引き起こします。EUやドイツで起きてる社会課題のミニチュア版が、noteでも起こり得えます。
ソーシャル格差の拡大
巨大化につれ、ユーザー間のソーシャル格差が極端化していきます。これは無条件に再分配をすれば解決する問題ではありません。再分配が強まりすぎると、強いユーザーは「優遇をしてくれる別サービス」に移動してしまうためです。再分配は持続可能性が担保される範囲内で行われなければなりません。直近では、再分配特化よりも、「格差の固定」を防ぎ流動性を高めることが有望なアプローチと考えられます。
先住市民のマイノリティー化 / メインカルチャーの変質
グロースにつれ、古くからnoteにいたユーザーは、比率的にはマイノリティとなっていきます。このため「noteは変わってしまった」という言及は、多くなっていくでしょう。運営は明示的に「守らなければいけないカルチャー」と「時代やスケールとともに、変わっていくカルチャー」が何か、議論をする必要があります。
帰属アイデンティティの低下
巨大化とともに、noteが有名・儲かるといった文脈でのユーザーが増えていきます。放置すれば、いままで大事にしていたカルチャーと共に、帰属意識も薄れていきます。運営は守るべきカルチャーの優先順位をしっかり決めなければなりません。利益や数字のために犠牲にしてはいけないものの明確化が必要になります。
保守化と不寛容の増加
格差の拡大や、カルチャーへの帰属意識が失われるほど、保守化と不寛容が増加していきます。前者は、「成長や変化、施策をとめて、小さいnoteを永遠に」といった動きを。後者は、「意見やスタンスの違いを、寛容やスルーではなく、叩くこと」の活発化を見せます。
分断化をふせぐための融和政策
こういった諸々は、最終的に分断化と闘争を招きます。なので多くの異なった背景のある人々を、融和していかないとならない。融和できないケースでも、多様性が分断化にならないためには、寛容と住み分け、スルー力が必要。noteの設計レベルで、こういった風土をインストールしていく必要性は、今後どんどんと高まっていきます。
と、僕たちnoteチームは数字アップに浮かれてる暇などなく、色々なことのために種まきや準備をしなくてはなりそうです。
僕がCXOとしてジョインしたのが2017年の10月1日。ちょうど2年になります。この日にプレスがでたのは、まったくの偶然ですが、素直にめでたい限り。
「サービスは成長させる」「カルチャーも守る」
「両方」やらなくっちゃあならないってのが「CXO」のつらいところ
3歩進んで、2歩下がる。そういう気分で、ちょっとづつ山を登っていきたいと思います。
いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。