やりなおせる失敗は、失敗ではない
CXOとしてよく言うフレーズに「やりなおせる失敗は、失敗ではない。どんどんやれ」があります。
企業が成長するにつれ、意思決定は遅くなり、失敗を許さない文化が少しづつ生まれてきます。
ところが、この世に存在する大半の問題は、実はそれほど重要ではありません。なぜかというと、ほとんどは失敗しても、やり直しがきく問題だからです。そういった問題について、全体会議で延々と議論するのは、あきらかにリソースの無駄です。
では、なぜ企業の意思決定がどんどん遅れてしまうのか… それは2つの大きな原因があります。
恐怖が組織を動けなくする
1つは、組織が成長し安定するにつれ、リスクをとったことのない人、ダメージ・コントロールの未経験者が増えていくことです。ぬるま湯で育った人間は、未知の冒険を避けるものです。
もう1つは、過去の失敗を学習しすぎた場合。こちらは、すべての意思決定が「最悪の不祥事」と同等の基準で、判断されるようになるためです。
ですが、こうした失敗を過剰に恐る組織は、実は失敗すること以上の大きな問題を抱えこみます。
失敗に厳しい文化がもたらすもの
失敗に厳しい企業文化は、3つの致命的な毒を飲んでいます。
1つ目は、過剰なリスクヘッジ。失敗を許さない文化では、安全策が過剰に選ばれます。このため意思決定は先延ばされ、とれる選択肢は減少し、どんどんと保守化します。
2つ目は、機動力の低下。失敗への過剰な備えは、ビジネスのスピードを遅くします。硬直した組織では、非常時でもチャンスでも、対応力が大きく低下するのです。
そして3つ目は、何もしない人が出世すること。失敗者が脱落する環境では、何もしなかった人の生存率が高まります。このため長期的には、会社の上層部にチャレンジしない人、決断しない人が集まりやすくなります。
失敗に厳しい文化の生むもの
・機動力の低下
・過剰なリスクヘッジ
・何もしない人が出世
どんどん失敗するほうが
noteではこのような問題を避けるため、失敗してもよい問題は、どんどん試すよう推奨しています。
「やり直しのきく問題」や「素早く結果がでる問題」は、そのリスクが小さいならば失敗してもよい。行動の遅さこそ、より問題である…という考えです。
実はAmazonも、似たような考え方で課題を管理しています。Amazonの経営者であるジェフ・ベゾスは、「じっくり考えるType1型の課題」、「素早く実行するType2型の課題」と問題をわけて考えます。
取り返しのつかない大きな問題は、しっかり考える。一方で、リスクの小さい問題(やり直しのきく挑戦)は、素早く決断して試す。そんな風に、スピード感とリスク許容度をコントロールするわけです。
Type1型の議題
・マクロ、戦略より
・一度決めたらやり直しできない
・方向転換に莫大なコストがかかる
・成否が時間をおかないとわからない
Type2型の議題
・ミクロ、実務より
・いざとなったら巻き戻せる
・方向転換にコストがかからない
・成否が短時間でわかる
このように議題をリスクで2分割すれば、意思決定はとても明快になります。
企業の失敗の多くは、2つの極端なシナリオのどちらかに属します。1つは思い込みで暴走して、取り返しのつかない投資を行うケース。もう1つは、慎重すぎて、時代に取り残されるケース。
問題を「じっくり考えるべき、取り返しのつかないこと」と、「素早く試すべき、やりなおせること」に分類すれば、どちらの失敗も回避しやすくなります。
まさに「兵は拙速を聞く、未だ功の久しきをみざるなり」ですね。多くの物事は、ダラダラと無駄に考えても、自体は好転しません。
たとえ失敗をしたとしても、はじめから失敗が織り込み済みであれば、人はよりチャレンジができるようになります。そのためには、あわせてリスクを織り込んだ「取り返しのつく失敗」で、人を叱責しないことが大事です。
失敗は打率で管理するのが望ましい
成功失敗は本人の能力だけでなく、外部要因に大きな影響を受けます。運やタイミング、ライバルの動向しだいでは、優秀な人が失敗することも多々あります。
このため、能力を個別事例の成功・失敗で評価をするのは、望ましくありません。理想的には「打率」で管理されるべきでしょう。
個々の成功を評価しすぎると、「生き残ったギャンブラー」が出世しやすくなります。これは大きなリスクです。「生き残ったギャンブラー」というのは、「たまたま大バクチが成功した人」です。「生き残ったギャンブラー」は自身の成功体験から、その後の意思決定で、大きなギャンブルを繰り返します。このため、この瞬間の評価は高くても、長期で見た場合には、取り返しのつかない大損害をあたえるリスクとなります。
プロジェクトを打率で管理し、ある程度の時間と事例数をもって人事評価すれば、このような一発ネタのギャンブラーは排除しやすくなります。
まとめ
多くの企業では、最高経営会議で議論を1週間保留をしても、誰もそこまで熟考してません。単に間が空くだけで、理解も分析も深まっていないことがほとんどです。
変化の速いデジタルの時代では、全部の失敗を回避するために遅くすることはリスクでしかありません。最初から一定確率の失敗を折り込み、最悪のリスクに準備をしたら、あとはどんどんと足を進めてしまほうがよいわけです。
まとめ
・失敗していい問題は、素早く試す。遅いことがリスク。
・失敗できない問題は、じっくり考える。即断がリスク。
・成功・失敗は、個別事例でなく打率で評価するほうがよい。
そんなことを考えながら、日々の仕事をしています。noteチームは、「やりなおせる失敗は失敗ではないから、どんどんやれ」かなりオススメです。
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