「箱」と外向き思考(その23) ラグビー日本代表(続)
よりよい人間関係を築くとともに、組織やチームの成果を高めることができる考え方である「『箱』と外向き思考」について書いています。
前回は、ラグビー日本代表が2015年のワールドカップで南アフリカに勝つに至った過程について、エディー・ジョーンズHCのマインドセットについて書きました。
では、彼の「鬼のような指導」の下で、選手たちはどのように変わっていったのでしょうか?
エディー・ジョーンズHCは、日本代表に苛烈なトレーニングを課しました。海外チームと渡り合うためには、まずは強靭な体力を作る必要があります。もちろん日本代表チームに集まる選手たちは既に国内ではトップレベルなのですが、当時はまだ世界との差がありすぎました。そこでエディーHCは日本ラグビーフットボール協会やトップリーグの各チームと調整し、代表選手がチームを離れて長期間の合宿に参加できる体制を整え、世界に類を見ない長期間の合宿などを行いました。
練習は朝から夕方まで、何回も行われます。夜は夜でミーティングなどもあり、選手たちの疲れとイライラは募るばかりです。代表選手といえば、結婚して小さな子どもを持つ人もいます。そんな彼らが家族から引き離されて高校生よりもキツい練習を課せれれているのです。
選手たちの中に、
「俺たちはいったい何のためにこんなにキツい練習をしているのだろうか?」
という疑念や迷いも生じてきていたようです。
そんな時、チームのリーダー陣が集まって、このことについて話し合ったそうです。
その結果、
「日本のラグビーの新しい歴史を作ろう」
「日本のラグビー選手たちの憧れの存在になろう」
という大きな目的ができ、そのために一丸となってハードなトレーニングに取り組んだということです。
その結果が、あの南アフリカに対する勝利となって現れたのです。
実際はもっといろいろなことがあったのでしょうが、ごく簡単に選手たちのマインドセットの部分だけに焦点を当てて紹介させていただきましたが、彼らのマインドセットの変化を、「内向き」「外むき」という観点で考えると、どんなことが言えるでしょうか?
「俺たちはいったい何のためにこんなにキツい練習をしているのだろうか?」と考えている時は、そうです、これは「内向き思考」です。意識が自分のほうに向いていて、自分のことを考え、全体の成果やそれが及ぼす影響に気持ちが向いていません。
では、
「日本のラグビーの新しい歴史を作ろう」
「日本のラグビー選手たちの憧れの存在になろう」
と考えている時はどうでしょうか?
そうです、これは「外向き思考」の状態にあります。
全体の成果に意識が向き、ファンや若い選手たちへの影響も視野に入っているからです。
ちなみに、この時にリーダー陣の一員に五郎丸歩選手がいました。
彼は2015年のワールドカップで一躍時の人となり、その後、いろいろなメディアに取り上げられましたが、自分が影響を受けた忘れられない本としてアービンジャーの「自分の小さな『箱』から脱出する方法」を挙げているのです。記事によると、大学2年生の時にこの本と出会ったということでした。そのことがラグビー日本代表の変革に影響したかどうかは分かりませんが、少なからず何らかの関係があったのではないかと想像しています。
その後のラグビー日本代表の進化は皆さんもご存知のとおりです。
2019年のワールドカップで大活躍し、いろいろな国から集まった選手たちで構成されたチームは「ダイバーシティー」の象徴とされていますし、チームのスローガンだった「One Team」という言葉は2019年の流行語対象にもなりました。
「ダイバーシティー」も「One Team」も、外向きマインドセットなしには語ることができないものだと考えます。
このように、マインドセットの変化は一見不可能と思える組織の成長に貢献し、組織の成果に大きな影響を及ぼします。
もし、皆さんが続している組織やチームに何らかの課題があるとしたら、マインドセットから見直すことに取り組んでみてはいかがでしょうか?
次回は本題に戻り、マインドセットを内向きから外向きに変えるために役に立つ「影響のピラミッドモデル」について紹介します。
どうぞお楽しみに!
株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
https://www.fl-a.co.jp/
「『箱』と外向き思考」は、アメリカの Arbinger Institute という機関が生み出した考え方で、今では世界中の国で、自己啓発や組織開発に用いられています。日本では、福岡に本社を構えているアービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社が日本の総代理店としてセミナーやコンサルティングを提供しています。
弊社は、アービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社の代理店として、その普及に努めています。「箱」や「外向き思考」についてもっと深く知りたいという方は、無料説明会や有料セミナーに是非ご参加ください!
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