「箱」と外向き思考(その4) 心の状態と行動
よりよい人間関係を築くとともに、組織やチームの成果を高めることができる考え方である「『箱』と外向き思考」について書いています。
今回は、「箱」に入ってしまうと、どのような行動をとってしまうか、ということについて考えてみたいと思います。
まず、箱に入るということのおさらいです。
前々回の記事(本稿、その2)に書いたとおり、私たちは自分の良心を裏切ったときに、相手のことを必要以上に悪く思い、自分のことを実際以上に高く評価して自分の裏切りを正当化してしまいます。これが箱に入っているという状態です。
このような状態なので、心の中では相手のことを非難したり、責めたり、恨んだり、妬んだりしています。
ですから、相手に対してキツく接したり、相手を責め立てたり、厳しく叱ったり、恨み辛みをぶつけたりといった行動をとってしまいます。相手にとってみればハードな仕打ちです。
ところが、箱に入りながら、相手に対してソフトな行動を取ることもできてしまうのです。
たとえば、相手に対して謝るというのはソフトな行動です。
でも、謝るときの心の持ち方は、箱の中(相手を物として見ている)と箱の外(相手を人として見ている)のどちらでも可能なのです。
自分自身の行動を本当に心から反省し、これから相手のためにどうしたらよいかを考えて謝るのは箱の外の心です。
一方、自分が悪いとは思っていないけど、今後の関係性を考えて一応謝罪しておこうと考えて謝るのは箱の中の心です。
ほかにも、相手を叱るというのはハードな行動です。
叱るときの心の持ち方も、箱の中(相手を物として見ている)と箱の外(相手を人として見ている)のどちらでも可能なのです。
相手のことを心から考え、相手の成長を応援しようと考えて叱るのは箱の外の心です。
一方、相手が変わってくれないと自分が困るから叱るというのは箱の中の心です。
このように、行動にはハードな行動とソフトな行動がありますが、どちらの行動も、箱の中の心の持ち方でも、箱の外の心の持ち方でもできるのです。行動は相手から見えますが、心の持ち方は相手からは見えません。しかしながら、相手はこちらの心の持ち方を感じ取ります。しかも、瞬時に感じ取ります。
皆さんも経験があるのではないでしょうか?
誰かに謝罪されたけど、本気で謝られている気がしなかった。
誰かにお礼を言われたけど、本気で感謝されている気がしなかった。
誰かに厳しく叱責されたとき、反発心が湧いて言い訳をしたくなった。
誰かに過ちを指摘されたとき、素直に受け入れることができなかった。
これらは、相手が「箱の中にいる」と瞬時に感じ取っているのです。
逆に、
誰かに謝罪され、相手の気持ちを素直に受け入れることができた。
誰かにお礼を言われ、素直に嬉しく感じられた。
誰かに厳しく叱責され、自らの過ちを素直に反省できた。
誰かに過ちを指摘され、自分の非を認めることができた。
これらは、相手が「箱の外にいる」と瞬時に感じ取っているのです。
いかがでしょうか?
自分自身が箱の中にいても外にいても、同じ行動を取ることができる。けれども、それが相手にどのように伝わって相手にどのような影響を与えるかは全く異なるということがお分かりいただけたかと思います。
だからこそ、心の持ち方はとても大切なのです。
次回は、このことについて具体的な例を挙げてもう少し考えてみたいと思います。
どうぞお楽しみに!
株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
https://www.fl-a.co.jp/
「『箱』と外向き思考」は、アメリカの Arbinger Institute という機関が生み出した考え方で、今では世界中の国で、自己啓発や組織開発に用いられています。日本では、福岡に本社を構えているアービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社が日本の総代理店としてセミナーやコンサルティングを提供しています。弊社は、アービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社の代理店として、その普及に努めています。