「箱」と外向き思考(その14) 父と息子
よりよい人間関係を築くとともに、組織やチームの成果を高めることができる考え方である「『箱』と外向き思考」について書いています。
前回、自分が『箱』に入ることによって、相手を『箱』に入れてしまい、お互いがお互いに望まない行動を引き起こさせ、対立の関係を深めてしまう状態である「共謀」について解説しました。
今回は「共謀」が何をもたらすかということを表す、ある事例を紹介させていただきます。
父親と息子の話です。
父親は息子のことを「どうしようもないヤツ」だと思っていました。素行が悪く、不良仲間と付き合っていたからです。常々、息子のことで頭を悩ませ、ことあるごとに対立していました。本当に困った息子だ、そう思い続けていました。
ある日、息子が父親に車を貸して欲しいと言いました。友達とドライブに行きたいということです。
父親はほんとうは貸したくなかったのですが、ケチな親父だと思われたくないので、渋々貸すことにしました。その代わり、条件を付けました。
「貸すのは構わないが、夜10時までには必ず帰って来るように」
息子がドライブに行っている間じゅう、父親は家にいながらずっとイライラしています。息子のこれまでの行動が次々と思い出され、腹が立って仕方ありません。今回のことについても、当然のような顔で俺の車を使いやがって。どうせ10時までに帰ってくるはずがない。全くけしからん。もう二度と車を貸すものか。
やがて9時になり、9時30分が過ぎ、9時40分、50分、55分…
約束の時刻がどんどん近づいてきます。
よし、これまでだ。
もう二度とあいつに車を貸さない。
父親がそう思った時、玄関前で車が止まる音がしました。
時計を見ると、9時59分です。
ドアが勢いよく開かれ、息子が帰ってきました。
「やったぜ、父さん、間に合ったぜ!」
さて、これで父親は満足できたでしょうか?
息子が約束を守ったことを、心から喜べたでしょうか?
残念ながら、そうではなかったのです。
父親は息子に対して言いました。
「なんだ、ギリギリじゃないか」
息子が門限を守ったからと言って、ケチをつける理由はいくらでもあります。
急ブレーキをかけなかったか、スピードは守ったか、ガソリンはちゃんと入れておいたか、などなど。
これが、「共謀」がもたらす結果です。
父親は息子に対して「箱」に入っているので、常に息子のことを必要以上に悪く避難し、自分自身のことを実際よりいい人物に仕立て上げています。息子を悪いヤツだと思っている自分自身を正当化するためには、息子には悪い息子でい続けてもらわないと困るのです。
だから、関係性をよくすることよりも対立を選んでしまうのです。
この事例では、父親が自分自身を正当化するあまり、家族の幸せを犠牲にしてしまっています。
息子は息子で同じようなことを父親に対してしているでしょう。
こうして、「共謀」は互いの関係性をますます悪化させ、対立が対立を呼び、修復不可能になっていきます。
家族内であれば、家族の幸せや穏やかな時間が犠牲になります。
会社であれば、生産性、働きがい、お客様へのサービスなどが犠牲になります。
本来は必要のない心の対立により、多くの大切なものを私たちは犠牲にしてしまっているのです。
いかがでしたでしょうか?
次回は、このシリーズのタイトルである「箱」と「外向き思考」の関係について書いてみたいと思います。
どうぞお楽しみに!
株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
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「『箱』と外向き思考」は、アメリカの Arbinger Institute という機関が生み出した考え方で、今では世界中の国で、自己啓発や組織開発に用いられています。日本では、福岡に本社を構えているアービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社が日本の総代理店としてセミナーやコンサルティングを提供しています。
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