「箱」と外向き思考(その3) 相手を物として見るとは?
よりよい人間関係を築くとともに、組織やチームの成果を高めることができる考え方である「『箱』と外向き思考」について書いています。
前回の記事で、自己裏切りをして箱に入ると、相手を人ではなくて物として見るようになる、と書きました。今回は、「相手を物として見る」というのはどういうことなのか、考えてみたいと思います。
たとえば、私の部屋には椅子が何脚かあります。
この椅子、普段は座って食事をしたりテレビを観たりパソコンを操作したりするために使っています。
でも、ときどき違う使い方をします。
たとえば、天井の照明器具の電球が切れたとき、この椅子を踏み台にして電球を交換します。書棚の上のものを取ったり掃除したりするとき、踏み台にして作業します。
このとき、椅子は私にとって「便利な道具」です。
玄関のチャイムが鳴り、インターホンで確認したら宅配便の配達でした。ネット販売で注文していた商品が届いたのです。喜び勇んで玄関に向かおうとしたところ、ちょうど部屋のドアの手前に、先ほどまで踏み台にしていた椅子があり、私は蹴つまづいてしまいました。
このとき、椅子は私にとって「邪魔な物」です。
宅配便の荷物を受け取り、部屋に運んで開梱しました。趣味の山登りで使う道具を何種類か取り寄せていたのです。山に持っていくことを想像しながら、一つひとつ床に並べて使い方の確認を始めました。床に座り込み、取扱説明書を確認したり、道具の感触を確かめたり、ネジを締めてみたり緩めてみたりしながら、山でのシーンを想像していました。
このとき、先ほどの椅子は私にとって「どうでもいい物」です。
このように、同じ一つの物でも、「便利な道具」だったり、「邪魔な物」だったり、「どうでもいい物」になります。
だから何?
はい、物はそれでいいのですが、人をそのように扱っていませんか?
ということです。
あなたの大切な家族、友人、会社の同僚、部下、上司、お客さまなど、周りの人を自分にとって「便利な道具」とか「邪魔な物」とか「どうでもいい物」として見ていませんか?
もし、あなたが逆に人から物として見られたり扱われたりしたとしたら、その相手のことを信頼できますか?
私たちは誰でも、自分のことに夢中になるあまり、他人のことを軽視してしまいがちです。そして、自分にとって役に立ちそうであれば「便利な道具」として都合よく使い、自分のやりたいことや目標の妨げになりそうであれば「邪魔な物」として問題視し、自分にとって関係なければ「どうでもいい物」として無視してしまいます。
本来、自分自身に願望や目標やニーズや課題や悩みなどがあるのと同じように、周りの人にも願望や目標やニーズや課題や悩みなどがあります。あたりまえのことなのですが、「箱」に入ってしまうと、このあたりまえのことが見えなくなってしまうのです。
なんとなく、お分かりいただけましたでしょうか?
さて、では私たちは「箱」に入るとどのような行動をしてしまうのでしょうか?
そもそも、心の状態と行動はどう関係しているのでしょうか?
それについては、次回、詳しく説明したいと思います。どうぞ、お楽しみに!
株式会社F&Lアソシエイツ
代表取締役 大竹哲郎
https://www.fl-a.co.jp/
「『箱』と外向き思考」は、アメリカの Arbinger Institute という機関が生み出した考え方で、今では世界中の国で、自己啓発や組織開発に用いられています。日本では、福岡に本社を構えているアービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社が日本の総代理店としてセミナーやコンサルティングを提供しています。弊社は、アービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社の代理店として、その普及に努めています。