7月8日 NOAHnoHAKOBUNE
ステージのサイドは舟を模していて、時折煙をあげる所なんかが生々しい。
乗船までの間は正しく船乗り場の音、それから鳥や動物の鳴き声が重なるからずっとワクワクしていた。注意事項のアナウンスが「乗船される皆様、」と始まった時、これはやられたと思った。あの大きな箱に入ってから、全ては始まっていたんだと思う。
なんならそれはもう、チケットを手に入れたその日に、「連れて行くよ」と言われたも当然。
MagicのMVのように、その手紙が届くまでの生活、届いてからの生活、彼らが迎えに来てくれるまであの海辺を恋しく思った時間。
ちなみに初日は開場も遅れ、開演も遅れました。
そわそわしながら📡を聴きながら、でももう集中して聴けなくなっている自分が可愛いと思えるくらい胸がちゃんと高鳴っていた。
イヤホンとスマホを片付けて、舟そのものであるステージを眺めながら暖色の照明を眺めていた。
夕方みたいだった。
暗転。
ずっとずっと前を見てた。そりゃ前を見るでしょう。アリーナ前から九列目、これでもかと前ばかりを見ていた。
綺麗だった。それは私たちを乗せていた。
揺れたのでは、と思うほどの船上のボルテージ。分かりやすいくらい体温が上がって眩暈がしたかと思った。
絶対に何も見逃さないぞと心に決めた。
後ろから歓声、振り向く、
「あ、そっちから登場すんのね」
と視界に捉えられた三人。
「衣装暑そう〜〜〜〜!!!!!!!!」
漕ぎ出す初動、全員が乗ったことを確認して駆ける彼らの身体が揺れる。船首を見詰める彼の背が、高揚していた。止まらない同じ気持ちを、彼もまた感じているんだと信じられる背中だった。嬉しかった。
本当に衣装暑そう。なんですそのまあ船長ぽいですよ、貴方がそうなるのは理にかなっていると思います。え〜〜〜絶対にもう汗拭きで出てるでしょう。可愛いねえ、楽しそうだねえ。そしてよくあんなに興奮したのにここまで覚えているなと思う、悲しい。
ダンサーさんがとにかく多くて最初は演劇が始まったのかと思うほど一瞬で引き込まれる。だからこの時「1曲目」という概念が無かった。このままあの物語が始まって私たちはそのト書通りに運ばれるんだと思っていた。だからいつか聴きたいと思っていたその曲が始まった時、少し首を傾げた。アッそれやってくれんだね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
【Viking】
私この曲、大好き。
期待をした人生、荒波に飲まれ、皆で楽しく過ごすはずだったのにその準備は全て無駄。出会いと別れの連続で大切な人ばかり波に引き離され失っていく。
ステージの中央、開幕がこれじゃあこの航海ちょっと心配になっちゃいますよと彼を見つめながら揺れる体が喜んでいた。
私たちは行くのだろう、この波に引き離されるのではなく、この波で引き寄せられるのだと、離さない渦に呑まれる合図の歌。
そして
【アウフヘーベン】
そして揺れる世界に雨を降らし嵐を呼ぶこの曲。
ノアの方舟の中で聴く「僕たちの住む世界は歪んでいて綺麗なものでした」。「大丈夫 心配ないよ 大勢が傷つくだけ」、さようなら、私を傷付けた世界。
「直に朝日が差す」と、彼等が歌うなら、私はその先で朝日を浴びたい。
舟の中だと不思議ね、この世界に生きる迷いよりも、新しい世界へ導いてくれる歌のようで。
【私は最強】
もう完全にテンションが海賊。一味ですよこれは。「私の夢はみんなの願い」と、誰かの願いを背負う彼らにいつも少し胸がきゅっとしながら聴いていたのに、この日の願いは私の願いだった。私の願いは彼らの夢になった。昨日書き損ねた短冊に書きたい。
Mrs. GREEN APPLE が 、
【CHEERS】
船上はあの歌で諦めた宴が始まる。
たくさんの船員と踊る踊る。
「byebye」のところ、好きです。
【Blizzard】
ステージ後方が坂のように角度が付き、足を伸ばし座る。📡収録曲の中で一番聴きたかった。大森元貴のソロ楽曲、「Midnight」と「French」の間にあるようなBlizzard。「待って行かないで」「深海へ還ろうよ」私を刺した歌が鳴る、もっと踊るのかと思った。汗ばんだ身体が、少し冷えたようだった。
【VIP】
そしてまた踊らせる。
煽りに煽るミセス、本当に格好良い。
LIVEを見に来たとは思えない、踊らされに来たくらい私は跳ねて頭振ってました。もう鞭打ちなんです。
凄く楽しかった。
沢山声出して沢山ドキドキして、本当に楽しかった。
【Hug】
ミセスを好きになった最初の頃、ずっと聴いていた。やさしくて、切なくて、私を愛せるのは私だけだと、私を抱き締めてくれる腕は、本当に私を抱き締めているとは限らない。おはようからおやすみまでを繰り返すこの曲で、随分と航海が進んだことに気が付いた。
船からの星空、降る声は星のようだった。
【私】
どうしてこのセトリだったんだろう。
私のTwitterを見てたの?というくらい、Hugからの私、は美しい流れ。
抱き締めてくれたあの人はもう居ない、私だけが残る。
あの世界からこの舟で離れ、私はその先も私として生きていく。別れさえも私を私として成立させる欠片になる。泣いている声がした。
【StaRt】
十周年、EDENに続くこの舟で、この先の航海をも見据え「初心」を歌う彼ら、愛おしい。
私は、あの日の映像を見る度に「おかえり」と叫んでいた。彼らが居なくなったことなど知らないのに、この曲はいつだって「おかえり」だ。
【ニュー・マイ・ノーマル】
時計の針がぐっと早まる。ずるい、「にくいねえ」と、笑ってしまった。にくたらしい。その時間の流れ。あんなことも、こんなこともあったね、と全てを振り返る語らいの時間のような流れ。
この航海を共に越えていこうと伸ばされた手を、私は掴むしかない。手を取ってる実感、しかと喰らえ。
【Loneliness】
な、な、なんでやね〜〜〜〜ん!!!!!
そう選ばれるとは思わなかった。
なんで今一緒に行こうね、と約束したばかりなのにあなたの孤独な夜に連れ込まれる。
その寂しさ、あなたにしかわからない、わたしにしかわからない苛立ちを帯びる夜。
頭を振って身体を揺すってその釘に抗いたい。
何も纏わず寂しさを絡ませる夜、報われないと分かっていても引き返さない夜。
【インフェルノ】
熱い熱い、どうしてあの火はあんなに熱い。怖くてちょっと目を瞑る。目が焼けそう。物理。
性の二乗と命の泉を護る意思、蝕む孤独を焼き払うような激しさ。
【Love me , Love you】
花束をひっくり返したかのようなあたたかくて賑やかなダンスと歌声。乗組員が踊り手を取る様子に照れ笑い祝福する瞳が印象的。結婚披露宴かと思った。長い航海、そんなこともあるでしょう。
【HaLLo】
何故か呆然としている寝ぼけた船員に「どうしたの?おはよう朝だよ」と言いたげなきっと熟睡していた船長たち。
「悪くもないけど綺麗じゃない」
「僕が思い描いてたものはこんなものじゃない ない」「君が思い描いてたものはどんな世界?また描こう」
私も寝ぼけていたので、そう、これが人の生き方よね、と、頷くだけ。
【ダンスホール】
とりあえず踊りましょうと。そんなことを言っても君は僕の太陽なんだもの。私たちの笑顔が途切れてしまわないように、僕が歌うよと。真っ直ぐだったなあ、けらけら笑ってしまう。私の太陽、あなた、と手を伸ばす。何度でも、繋ぎ直して。
【Folktale】
油断した。園………………?と。
懐かしくないはずの人間まで懐かしくさせる、少し前の物語。「変わりたい」は子守唄に。
色々なことがあって、色々なことがある中で、この先も色々とあるけれど、「見ていて」と幾つか幼く見える表情。
【norn】
懐かしい絵本の2冊目を開かれるようなあたたかい音、昼間しっかりと舵を取る三人の、食後の団欒のような時間。覗きに来たのにソファで微睡んでしまうような心地良さ。声だけ聴いてもまだ何を歌われているか分からないのに分かってしまう。やさしい。私たちは家族では無いのに、船長たちは親や兄弟のよう。素直に、おやすみもおはようもギューってしたいね。
【鯨の唄】
およ!!!!!!!!!沈んじゃったかも!!!!!ざぶざぶと波を感じる、ああこれは大変だ。でもそんなに深くは無いんだろうか、あの切なく高い声がする。
私たちは皆ここにいるのに、気付いてと。
ここにある幸せを壊さないで、ここにある苦しみから助けて。
約束の虹まで、鯨に見送られる。
【青と夏】
晴天、夏だもの。
本気になればなるほど辛い、ミセスへの恋心。全く平和じゃない。「赤い糸」とその小指まで愛情だけが届けばいい。愛で結ばれていたい。
【Magic】
おもちゃの剣がてろんてろんの金テープでとても可愛い。「こんなライブは見たことない、ライブと呼ぶことが正しいかわからない」と頭の片隅に残る理性を吹き飛ばす、この夏の自由を約束された歌。何度も耳にして何度も魔法を掛けられている。
ちょっとこの夏くらい自由にやっちゃいましょうかね、と思いもう8月。秋も冬も魔法をかけて。
【Soranji】
どんな歓声も黙らせる、少し長いブレス。その呼吸ひとつで私たちは、気付ける。そう、黙らせてしまえばいい。それがこの曲が持つ、重み。この愛を前に何を言葉に出来よう。これだけ伝わればいい、これだけを許されたい。私は あなたたちに、 その言葉を送り返したい。
【ケセラセラ】
なるようになると背を撫でてくれていたのに、「なるようになると一緒に思って欲しい」と。ミセスもこれを、自分たちに歌い聞かせるのか。歌い手でありながら、一番の聴き手。一番のJAM'S。ひとりひとりがただの人間。甘えその身を委ね、割れそうな奥歯を守るけれど、私たちもまた。
生まれ変わるなら Mrs. GREEN APPLE だと、今の彼らが、思えてしまう程に。
【Feeling】
Tシャツに着替えてくるわけでもなく、最先端の着こなし方。なるほど、そんな手もあるんですね。真似することはハイレベル過ぎて無いでしょう。
さらりと聴ける曲だと、何度でも聴ける、と言葉に反比例した、一言一音を噛み締め、取りこぼさないでと願う表情、さらりとは聴けやしない。
私は私の感性を少しは受け入れられるのだろうか。本当に、嘘偽りなく、抱えた“宝物”を宝物と呼んであげられる日が来るのだろうか。
「背負わせてしまえばいい」、全て私の感性が引き起こした幸せな事の顛末。
「試されてる。」
「私はきっと 愛されてる。」
愛されてる、と言い切って終わるのに「きっと」だなんて。
愛されてると、言い切らせてくれよと。
「愛されたい」と、もうひとり天を仰ぎ泣かなくていいように。
愛していこう、受け入れ、見詰め、許し、
私は私ひとりで、
Mrs. GREEN APPLE を
愛していこう。
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