筋をちがえそうな夕方


本を読む時はなるべく下を向かずに顔の高さに本を持ち上げたい。鏡を見て毛穴よりもフェイスラインが気になるようになったのはいつからだろうか。顎が存在しているか不安になる。それにしてもそれなりの時間をかけて読むからどうしたって手は疲れてしまってテーブルの高さが丁度良くなってしまう。待って今、顎は無いかもしれない。

思ったより厳しい暑さが早く終わった24年の夏、9月は去年ならまだ夏だった。「夏よ終わるな」、などと言わなくても各地で「夏が始まった合図」は流れていた。9月、夏の予定は終わりましたと言わんばかりのスケジュール帳は寂しくならないように夏を終わらせないように人との予定で埋められていく。

何度か鳴る扉のチャイムに振り向いても待ち人はまだ来ず。喫茶店に来ると人の出入りがある方は気が散るからどうしても背を向けて座ってしまう。会話を上手に聞き取ってしまう耳を塞ぎたいけれど、扉のチャイムが気になる。そろそろ来るかな、多分そろそろなんだけど。席の場所は伝えてあるから気にしなくてもいいけど気になって振り向いてしまう。本に目を落として顎が無くなって、振り向いてフェイスラインが浮き出る。浮き出ていて欲しい。横着をして顔だけが振り向くせいで、筋をちがえそうな気がする。

今夜、湿布を使わなくてもいいように
早く来てください。



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