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憧れの

今までの人生は何色だっただろう。
振り返ってもわからない。
あまり綺麗な色だとは思えない。
きらきらしたかけがえのない青春でさえ、苛立ちや、涙が混ざり合って、ぼやけている。
よく愛され、よく疎まれた。
あたたかい、とは言い切れない。
そんな私が、今焦がれる色を見つけた話。


今年は申し込み、当落、交通手段、申し込み、当落、と繰り返した年だったと思う。仕事の休みはどう取ろう、服は何を着よう、ご飯は、知っている人は誰が来るんだろう。文字だけの世界から、声で話すようになり、それでも毎日のようにお互いの言葉を目にしながら、他人同士仲良く過ごしてきた。「会いましょう」という言葉は何だか義務のような約束が嫌だった。私は好きなアーティストに、あの男に会いたいだけで、それ以外に目的などなくていいのだ。果たすべきことは、人は、ステージに居るのだから。始まった万人という数を相手にしたかくれんぼ。私の服の色、アクセサリーの情報だけで探し出せれば会える。今思うと何て嫌な奴なんだ、誰がお前を探すのだという話である。それも懐かしい夏の思い出、溺れるような熱気の夏の話。

秋、気温が高かったから秋と呼ぼう。
この季節はかくれんぼがお泊まり会へ変わった。遂にホテルの手配と来た。お泊まり会だ、そんな早さで自分の子供がお泊まり会など言ったら私は止めるだろう、あまりにも心配だ。どこに頭のおかしい人間が隠れているかわからない、近付きすぎることで嫌なところに気付いてしまったりもする。今一時楽しくとも、必ずどこかで違えるのだから。青春の学び直しは止まらない。

タイトスケジュールで駆け込んだ、ぴあアリーナ。何とも近くて見やすい。ドキドキした。「おめでとう」を、大きな声で言うぞ、と思っていた。
姿を見ると、涙が出てしまうようになったのはいつからだろう。あまりの美しさに、息を呑んだ。「最近は黒スーツが多いから、白い衣装が見たいなあ」と前日の夜に話していたばかりだった。あまりにも美しかった。本当にホロ元貴とか言うてインライでふざけ倒した人だったろうか。じわじわと浮かぶ涙に、張り付いたコンタクトが楽になった。いつまでも見ていたかった。皇族の挨拶。
脳が焼けてしまうので全然気付かなかったけれど、意外といつも通り手を振ったり、呼びかける声に笑ったりもしていたようで。

タイトスケジュールはあまりにもタイトスケジュール。ばたばたと歩き回ったせいで6cmヒールの足は疲れ、好きな人の見る光景の一部になるとは思えぬほどの汗。ミセスの出番というものは、「今か今か」と待ってしまうのに、「そりゃトリよね、大トリよね」と思っている自分もいる。三冠、ようやくこの辺りで声が出た。おめでとうミセス、アーティスト オブザイヤー 、シンプルで、疑う余地の無い賞。その背を今年ずっと、追えていたことが嬉しい。最後の一冠を前に挙がる名前は、どれもテレビから聴いていた曲だった。それでも、祈った。駆け抜けると話してくれた、大切な一年。アクセルを踏み倒してくれた一年に、ファン一同からの愛と一緒に、その愛が国中に響き渡った結末の冠を、ミセスに贈りたいのだ。

史上初の、四冠。

「わからない」と、喜びと動揺を隠せない彼が愛おしい。前夜、「去年レコ大の話を頂いた時、僕新人賞ですか?って聞いたんだ」と、初心を忘れない素敵な人。謙虚で、けれど誇り高い。
「おめでとう」の声が震えていた。
泣いてしまうなんて勿体ないのに、夏に買ったライトスティックを額に寄せて、じっとしていた。
喜びで身体がいっぱいだった。
Magicに続いて、ケセラセラ。
今までに無い、歌声だったと思う。
噛み締めながら、喜びを感じながら、でも踏ん張って、浮かれぬよう込み上げる幸せに、上擦った声色が忘れられない。
「今日はちょっとだけご褒美を」、そう、今日くらい、これだけ日本中が、Mrs. GREEN APPLEの活躍を見詰めていたのだから。どうか。名誉や、お金よりも、大切なことがあるけれど。しっかり伝わる、伝わってきた一年だったから。どうか、と思う。


Kアリーナでは最上階にbarがあるので終演後にお酒を飲むこともできる。最高。
大森がどこかで飲むと言っていたファジーネーブルにした。らしくないものを選ぶ時、擽ったい。
初めましてとお疲れ様の乾杯をして、街はもう冬だったからイルミネーションを公園まで見に行って、疲れた脚で沢山歩いた。
ミセスもどこかで見るだろうか。冬の妖精には出会えるだろうか。
きっと一人で行っていたら、こんな夜の散歩も無かったろうにな。ミセスとの思い出だけがあれば、良いのだから。

女子の夜は長い。早朝からの情報番組で今日の模様を見るぞと言っているのに眠らない。結局3時間程眠って、きちんと各チャンネルを追った。きちんと朝ごはんを食べて身支度をして、藤澤涼架の食べたかき氷であり、大森元貴の食べたかったかき氷を食べに行った。ミセスで繋ぐ思い出は、あっという間に増えてしまう。
次のライブは、春夏のフェスは、海外公演あるから、と何の報せも無い話をずっとした。それならあんな服を着て、こんなものが必要で、ミセスの今までよりも、ミセスのこれからの話をした。ミセスのこれからは、当たり前のように、私たちのこれからだった。


全員と別れた後、「私は最強」を聴いていた。ミセスがいれば、みんなが居れば、私は強くなれる。何処へでも、みんなでなら行ける。何も目の前には無いのに、わくわくしていた。
順繰りに回る曲、その曲で、珍しく胸が高鳴った。この先のきらめきを前に、影を濃くする今日で在りたくないと思った。振り返れば、その日は、「橙」が良いと思った。そんな色の、そんな歌のような、今日を昨日にしたい。あたたかい陽射しの濃ゆい色、柑橘のような、甘酸っぱい青春の味。
大好きな Mrs. GREEN APPLE というアーティストがくれた、大切な繋がり。Mrs. GREEN APPLE という青春、学び直しには時間がかかる。

もう少し、もう暫く、
お付き合いください。

おめでとう
Mrs. GREEN APPLE

おめでたいね、
わたしたち。

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