瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』(背景説明・登場人物紹介・あらすじ・読み解きのポイント/じっくり筋を知りたい受験生向け〕
瀬尾まいこ『あと少し、もう少し』新潮社2015年
2021年に
・春日部共栄中学校
・昭和学院秀英中学校
・東京純心女子大学
で出題されました。
★背景説明
この物語で扱われているのは駅伝です。駅伝は知っていますか? バトンの代わりにたすきを受け渡して何人もの人走り継ぐ長距離走です。駅伝で勝つために重要なのは最初の走者と最終走者。最終走者のことを「アンカー」と呼びます。 物語の中心になるのは市野中学校の陸上部のメンバーたち。市野中陸上部は人数が少なく、三年生が四人と二年生が二人、入ったばかりの一年生が三人で、合わせて九人しかいません。そして彼らの出ようとしている十月の駅伝大会は全六区。つまり六人の走者が必要です。 九人いて六人なら足りるんじゃないかな? そう思うかもしれませんが、市野中の陸上部は長距離と短距離のパートに分かれていて、長距離の三年生は二人、二年生は一人しかいないのです。一年生はまだまだ力不足ですから、六人制の駅伝に出るには走者が三人足りません。そこで部長の桝井は陸上部以外でも走れそうな三年生を捜しては駅伝に出て欲しいと頼むことになります。登場人物がたくさん出てきますから、名前と立場を正確に覚えながら読むこと! 試験の場合は余白にメモをとるといいかもしれません。それから、物語は「章」と呼ばれる文のまとまりに分かれることが多いですが、この物語では章のことを駅伝の区間になぞらえて〔~区〕と呼んでいます。
★登場人物
桝井日向〔ますい ひなた〕
序章〔0〕と最終章〔6区〕の語り手。市野中学校三年。陸上部の部長。中学校10月の駅伝大会の朝、顧問の上原の指示で急にアンカーである6区を走ることになった。
設楽亀吉〔したら かめきち〕
第一章〔1区〕の語り手。市野中学校三年。陸上部の部員。小学校のころいじめられっ子だったが、中学校に入ってから桝井に誘われて陸上部に入り、それ以降はいじめられなくなる。
大田
第二章〔2区〕の語り手。市野中学校三年。不良。金髪で煙草を吸っている。運動神経は抜群なのに、転部をくりかえして今は何の部活にも入っていない。夏休みに入ってすぐに駅伝の練習に加わる。設楽を秘かにライバル視している。
仲田真二郎
第三章〔3区〕の語り手。市野中学校三年。バスケ部の部長で生徒会書記。同級生からも教師からも気軽に「ジロー」と呼ばれている。夏休みの後半に駅伝の練習に加わる。渡部に嫌われていると思っている。
渡部孝一
第四章〔4区〕の語り手。市野中学校三年。体育の1500m走で桝井の次に足が速かった。吹奏楽部でサックスを吹いている。夏休みに入って二週間ほどしてから駅伝の練習に加わる。人に頼まれるまま何でも引き受けるジローを秘かに心配していた。
河合俊介
第五章〔5区〕の語り手。市野中学校二年。陸上部の部員。足が速い。桝井の走りに憧れて陸上部に入った。
上原
美術教師。市野中陸上部の今の顧問。二十代後半の女性。駅伝大会当日の朝、桝井に急に6区を走るように指示する。
満田
体育教師。去年まで市野中陸上部を指導していたが、今年から別の中学校に異動してしまった。
★あらすじ
市野中学校の陸上部は十月の駅伝大会に出ようとしていますが、六人必要な走者が三人足りません。そのため、顧問の上原先生と部長の桝井は陸上部以外からも走ってくれるメンバーを捜します。その結果、夏休みのあいだに大田、渡部、ジローの三人が駅伝の練習に加わってくれました。
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