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佐藤多佳子『サマータイム』新潮社〔2020年首都圏中学入試頻出作品/背景説明・短編あらすじ×4/無料/筋がすっかり分かります。

佐藤多佳子『サマータイム』新潮社

この作品は2020年に

・神奈川大学附属中学校
・吉祥女子中学校

で出題されました。


★背景説明


 この作品は短編集です。ゆるやかにつながり合った四つの短いお話からなっています。第一話の語り手は伊山進、第二話が進の姉の佳奈、第三話が二人の友だちの浅尾広一で、第四話はまた佳奈に戻ります。


★あらすじ


第一話「サマータイム」


 伊山進〔いやま すすむ〕は小学五年生の夏休み、プールで二つ年上の浅尾広一〔あさお こういち〕と知り合います。広一は事故のために左腕がありませんでしたが、母親がジャズピアニストで、広一自身も片手でピアノを弾きました。広一は進の姉の佳奈〔かな〕とも仲良くなり、片手だと上手く乗れない自転車の特訓を二人でするようになります。進は広一を姉にとられたような気がして面白くありませんでした。十一月の中頃、佳奈が、自転車をこわがってばかりいる広一にいら立ってけんかをしてしまいます。それからすぐに広一は引っ越してしまいました。六年後、十七歳になった進は高校のジャズ研究会でピアノを弾くようになります。その年の夏、大学一年生になった広一が家をたずねてきます。進がピアノを弾いていると伝えると広一は喜びました。広一は自転車に乗れるようになっていました。


第二話「五月の道しるべ」


 伊山佳奈〔いやま かな〕は七歳のとき、道につつじの花をたくさん並べて家までの道しるべ〔道案内〕にしようとしました。しかし、一つ年下の弟の進が自転車でひいてつぶしてしまいます。佳奈が怒って元通りにするようにというと、進は自転車のかごにつぶれた花を拾い集めました。家に帰って、佳奈はかんしゃくを起したこととつつじをたくさんつみすぎたことを母親から怒られます。佳奈はますます腹を立てて、進にまた花を元通りにするようにといいます。その夜、佳奈がお風呂に入っていると、進が急にやってきて細かくさいたたくさんのつつじの花びらを投げ入れていきます。佳奈は、初めに自分が生きている花をむしってしまったことに気づいて反省します。


第三話「九月の雨」


 浅尾広一が十六歳の夏、母親の友子が再婚を決めます。広一の父親は七年前に亡くなっていて、友子はこれまでにも何人か恋人を紹介してきましたが、彼らはみな広一の父親に似ていました。しかし、種田一郎は全く似ていません。広一はいら立ちを感じますが、母親の問題だと思って自分の気持ちを隠そうとします。種田一郎はそんな広一に、もっと正直に気持ちを話すようにと言います。九月、広一は一郎に手伝ってもらって、ずっと乗れないままだった自転車の練習を始めます。


第四話「ホワイト・ピアノ」


 伊山佳奈は十四歳のとき、中古ピアノの修理会社を経営している友だちの亜紀の家で、古い白いピアノ〔ホワイト・ピアノ〕を見ます。そのピアノの修理をしたのは若い調律師の千田義人〔せんだ よしと〕でした。佳奈は同級生の男の子には興味がありませんが、千田には好意を持っています。ホワイト・ピアノを買ったのは、義人の初恋の相手だったもう結婚している女性でした。しかし、女性はピアノが気に入らず、無理をいって返品してきました。千田はピアノを自分で引き取り、ていねいにそっと弾きます。それを聞いていた佳奈は、ふいに、自分が以前けんか別れをした広一が好きだったのだと気付きます。


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