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蘇寧業績急減速について(1)グループストラクチャー
先日日本経済新聞にこのような記事が出ていました。
中国蘇寧、拡大戦略のツケ
スーパー買収やコンビニ攻勢不発 ネットとの融合進まず
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67438120X11C20A2FFJ000
記事の内容は収益の悪化により祖業の家電量販事業で大量閉店を進める、というものです。
それらの内容は日本経済新聞の記事に譲るとして、この記事の内容をもとに、何回かに分けて中国企業(特に上場企業)の特徴をご紹介していきます。
今回は、グループストラクチャーです。
私が考える中国大企業の実態把握の一番難しいところは、このグループストラクチャーにあると思っています。
というのも、「日本企業のグループストラクチャーと比較して、極めて複雑」なのです。
日本の企業では例えば、創業者が上場会社株式を一定の割合で持ち続ける場合は、こんな形が一般的で、資産管理会社は誰が見ても創業者の税金対策であることがほとんどです。
他方、中国の上場企業のグループストラクチャーはこのようになっている(或いはその変形)ことが非常に多いです。
例えば、今回日経の記事に出ている蘇寧易購という会社の株主構成は以下の通りです。
(カッコ内は筆者注)
この会社の大株主は張近東さんとなっており、所有株式の割合は20.96%ですが、「最终受益股分(実質的な支配権の割合)」は33.30%·となっています。
これはどういうことでしょうか?ここで、もう少し調べてみると以下のことがわかります。
そうなんです。実は、蘇寧電器は50%、蘇寧控股は51%の株式を張近東が保有しており実質的に支配しています。尚、日経記事本文にも簡単に出てきますが、蘇寧控股の張近東以外の持分は彼の息子と、この親子の資産管理会社が保有しています。
では、蘇寧電器や蘇寧控股はどういう会社なのか?蘇寧電器は実は一定程度決算数値が公開されているのですが、こういった会社は決算数値が公表されていないことも多いので、まずは公開情報から見ていきます。
蘇寧電器集団は資本金17億元(≒271億円)で36の子会社を、蘇寧控股集団は資本金10億元(≒158億円)で17の子会社を持っている会社で、かなり大きな会社だと予想できます。
*ここでやっかいなのは、必ずしも「登記してある資本金=実際に払い込まれた資本金」ではないということです。例えば詐欺を働きたい会社では、大きな資本金で登記しておいて実際は少しの資金しか払い込まず、必要以上に見せかけの会社規模を大きくすることが可能です。従って、資本金の規模と子会社の数や、その他の情報を総合的に判断していく必要があります。
また、別の問題もあります。上場会社である蘇寧易購、蘇寧電器、蘇寧控股全ての子会社にたくさん「蘇寧」とついている場合がほとんどで、蘇寧グループであればこの3社がそれぞれどのような役割を持っているか?というのは、決算の情報等を注意深く読み取っていかないとわからないことがほとんどです。
従って、例えば中国株に興味があって投資対象となるかを検討したり、中国の企業と取引があってその会社の与信を判断したい場合、「その会社がグループの中でどういう位置付けなのか?」というのは常に考えた方がいいと思われます。
日本語、英語の情報が少ない中で、こういった「ブラックボックス」になっていることが多いのも、中国企業と日本企業がビジネスを行う上でこういったところが難しいところだといえます。
今後、冒頭の日本経済新聞の記事を題材として何回かに分けて中国上場企業について、蘇寧について検証してみたいと思います。