「明日食べよう」と先延ばしにし、新年早々冷蔵庫に籠ったぜんざいの異臭で鼻がちぎれかけた私は「ぜんざいって日が経つと洗ってないキツめの雑巾みたいな臭いするんだな……」と、歯茎と牙を剥き出しにし、普段より白目の面積を多めにとり必死に鼻を掻く犬と同じ顔をしながら思った。

街中ですれ違った人や好きな人たちの匂い、柔軟剤の香り、シャンプーの香り、好物の良い匂い、好きな香水、苦手な匂いなど、世の中には本当に色んな匂いがある。同様に、幼少期に親の車で流れていた歌、外食中に店内BGMとして流れている音楽、ふらっと入った店でデモとして流れていたBGM、スーパーのお肉コーナーで流れているオリジナルソングなど、意識をしていなくとも、別段好みでなくとも記憶に残っていたりする。

匂い(嗅覚)や音(聴覚)は記憶に深く関わるらしく、それらが昔の記憶や感情を引き出すこともあるそう。

ここから少し話が逸れるのだが、私は、歌い手の島爺(SymaG)さんが大好きで、Neruさん作詞作曲「東京テディベア」の「うたってみた」からファンになった。当時好きだった作品のファンアートに使われていた音源がそうだった。最初は、正直好みじゃなかった。映像が好きだったから見ていた。しかし、気づくと「好きな作品のファンアートを観る」ためではなく「島爺さんの歌が聴きたくてその動画を観ていた」。冒険という言葉を知らなかった当時の私は、それ以外聴いたことがなかった。さらに言うと、彼の作品のページに飛び、飽きずに毎日その歌だけ聴いていた。例えるなら、遅効性の毒のようだった。しかし、ここまでしておきながら私は「好き」なことを認めたくなかったため、新しい「うたってみた」があがると聴いては、「ふ、フーン・・・イイじゃん・・・」と、試食コーナーで味見して美味しかったので気になったが、買わずにずっと商品だけ見ている客のようだった。今思えば本当に謎行動だと思う。

そして、現在の彼の「うたってみた」作品で代表的な存在となる曲、日向電工さん作詞作曲「ブリキノダンス」。当時の私はいつものように試食コーナー気分で動画再生ボタンを押した。初めて視聴した瞬間、曲が流れた瞬間全身の毛という毛が逆立ち、曲が終わるまで鳥肌が収まらなかった。あの瞬間私は鶏になっていたのかもしれない。動画を視聴し終えたあとも鳥肌は収まらず、パソコンの前から動けなかった。人生で生まれて初めて「感動で打ち震える」を体験した。今思えばとても良い体験をさせていただいた。

話を戻すが、私は現在も島爺さんの「ブリキノダンス うたってみた」を聴くと、当時の感動で打ち震えた気持ちと、心の底から湧き上がる高揚感を昨日のことのように思い出す。

他にも、通勤途中に聴いている音楽を休日に聴くと、仕事に行く前の気持ちになったり、電車移動の際によく聴く音楽だと、揺られながら外を眺めているときの景色を思い出したり、好意を寄せていた方がオススメしてくれたアーティストの歌を聴くことに抵抗を覚えていたり。良いことも悪いことも、思い出すキッカケは音楽によるものが多い。

匂いに関してはあまりいい思い出がないが、例え話をふたつ。長い汚い話なので嫌な予感がした人は見ないようにスクロールなどしてください。

学生時代、胃に大きな石が引っかかっているような気分が悪い日があった。普通に体調が悪かったのだが、当時の私はその自覚が無いため「きっとお腹空いてるんだな!」と思っていた。学校帰りに寄った姉の家にあったカレーうどんを食べたが、横になっても気分は治るどころか悪化してしまい、大人しく帰宅し何もせず布団に入った。いつの間にか寝ていた私は、口の異臭と胃の中にあるものがあがってくる感覚で飛び起き、そのまま飛び起きた流れに沿って滑らかに顔を柵の外に出し、見事にぶちまけた。もどす瞬間、消化されることがなかったカレーうどんの匂いが口内に充満していたため、成長した今でもカレーうどんの匂いを嗅ぐと当時を思い出してしまう。

もう一つは、一昨年の話。半年ほどお付き合いさせていただいた方に訳の分からない一方的な別れを告げられた。ご飯も飲み物も喉を通らず、不眠気味になり、仕事もままならないほど精神にきた。しかし、その二日後に島爺さんのライブ遠征を控えていた。友達が当ててくれた2桁の良整番チケットで、ツアーファイナルである。「行かない」という選択肢はなかったし、むしろ元気を貰いに行こうと思った。遠征当日、私はほぼ眠れていないまま早朝3時に起き、身なりを整え家を出た。その際、空腹だと乗り物酔いすると思い、大事に食べようと思って置いていたアップルパイを持って家を出た。空港のロビーについたが搭乗まで1時間ほどあったので、件のアップルパイを食べた。失恋をした直後で弱っていたが、完食した。完食してふと袋を見る。消費期限が六日前だった。案の定、緩やかに体調が悪くなっていく。そんななか、搭乗時刻が近づいてきたので搭乗口に行き、乗った。そして、到着まであと30分ほどだったが、連日の睡眠不足・精神面の不安定・アップルパイの打撃により見事にもどした。思ったより出なかったのが幸いだったが、周りのお客さんへの罪悪感で早く飛行機から降りたかった。その後目的地の空港に無事到着し、トイレにふらふらと入り、本当の地獄を見た。消費期限の切れた生ものを1週間ほど放置していた己を恨んだ。カレーうどんとアップルパイに罪はないが、未だに食べるのが少し怖くなる。アップルパイに関しては、もうすぐ3年経つ今も食べていない。

全て読んでくださった方、ありがとうございます。お目汚し失礼致しました。スクロールしてくれた方、ここまで飛ばしてくださりありがとうございます。

話を戻します。

このように、匂いと音は当時の記憶と感情を鮮明に思い出す大きなキッカケになることがあるんです。

匂いも音も、いつどこから香ってきて、聞こえるか分からず、自然と体内に入ってくる情報であって、自分の意志で遮断できる触覚や視覚と違い避けようがないもの。

人にとって、薬で、癒しで、力になり、背中を押してくれる音楽と香りも、人によっては毒になり、呪いにもなる。

と、私は思う。もちろん全て私個人の体験を踏まえた上の考えです。

新年一発目の投稿の内容じゃなくない?

わかる~~~~!!!!!!!!

既に1月下旬に差し掛かっていますが、新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致しますハッピーニューイヤー

それではまた

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