ふくろう

趣味は登山、クライミング、スキー、読書です。 好奇心の塊。 ここでは山と向き合う自分の内面を主に綴っていきたいと思います。 山での行動の記録はヤマレコに。

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最近の記事

【詩】雪解け

ついに開かれた 長い眠りから目覚めた大地は 大号令をかけたに違いない 生物はその使命をはっと思い出したように 一斉に動きはじめた 光を求め 水を求め 獲物を探し 敵から身を守り 子を産み育て 虫を誘い 胞子を飛ばす 山はユートピアなどではない 生存をかけた戦いの歴史が刻まれた場所 命を紡ぐ壮大な物語は 昼夜を問わず そこかしこで繰り広げられている 私は無数に存在するその物語の ほんの数冊ほんの1ページを 垣間見ているに過ぎない 2024.6.1

    • 山は人生の縮図。遺書の代わりに残した言葉たち。(2024.4.16)

      2017年から2022年までの5年間、私はブログで趣味の登山に絡めて心の内を綴っていた。 2017年の5月、私は乳がんの宣告を受けた。 当時私はまだ30代で、ひとり娘は小学2年生だった。 8月末に腫瘍の摘出手術を受け、切り取られた体の一部は病理検査へと回された。 病理検査によって、実際のがんの大きさや周辺リンパ節への浸潤の有無、がん細胞のタイプや悪性度などすべてが明らかにされる。 その結果次第で、今後の治療方針(放射線治療、抗がん剤の投与、ホルモン療法など)が変わり、QO

      • 最後の粉雪(2024.3.20)

        今度こそ最後のパウダースノーになるのだろう。 積もりたてのきめ細かくなめらかな雪。 板が雪面をつるりと撫でる。 私の足の裏はそれらを繊細に感じ取る。 友人が口にする何気ないひと言の数々が、わたしの幸福を高めた。 「勿体無いからゆっくり滑ろうかな」 「スキーが喜んでる!」 「これはパウダーの赤ちゃんだな」 私たちのスキーは、先端から粉飛沫を舞い上げながら、斜度のないブナの林を走り抜けた。 冬に別れを告げる時がきたのだ。

        • 【詩】逡巡 (2023.3.17)

          どうせ不自由しかない人生なのだ せめて山では…と思うのはおかしなことだろうか? 人間関係の綻びや 子どもじみた一切の干渉を跳ね除けて 本当は信念を貫きたかった わたしはただ、好奇心を頼りに追求したかっただけなのだ わたしの自由はどこにある? 「しかし自由という名の孤独を おまえは受け入れる覚悟があるのか?」

          【詩】自問自答(2024.3.10)

          最も忌み嫌っていたあのふた文字が まさか自分に投げつけられるなんて 私が間違っていたのだろうか 山は何も答えない 私は再び考える 私が間違っていたのだろうか 凍てつく風は容赦なく 思い上がった心を切り裂いていった 認めたくはない けれども認めなくてはならない 山は何も答えない 私は知っていた それが答えなのだ 2024.3.10

          【詩】自問自答(2024.3.10)

          鳥海山追憶② 2023.5.4

          ちょうど1年前、私ははじめて新山からスキーで滑走をした。 あの時はギャラリーの多さにとても緊張して、とにかく板についていくのに必死だった。 やり遂げた自分自身に感動し、山に刻まれた自分のシュプールを眺めて涙を流していた。 今回、当初の計画は中島台からの登頂だった。 けれど最近のそのルートの人気ぶりを知るうちに、もっと人がやらないような特別なことをやりたいという気持ちが、徐々に大きくなっていった。 それならばやはり湯の台しかないだろう。 過去何度も冒険の思い出がある湯の台以外

          鳥海山追憶② 2023.5.4

          鳥海山追憶① 2022.5.5

          スタートから5時間 ついに新山に立った これまで歩んできた長い年月が思い返されて 涙がとめどなく溢れ出た ここは9年間かけて少しずつ登ってきた、私の人生のひとつのピークでもあった そこに懸けていた思いは半端なものではない それまで運動経験が全くなく 筋トレをするための筋力すらなかった私が初めて登山靴に足を通したのが9年前 その2年後にスキーを1から始めた 2度の闘病もあり、道のりは決して楽ではなかったけれど それでも諦めずに頑張ってこれたのは 山とスキーが大好きだった

          鳥海山追憶① 2022.5.5

          開拓(2023.4.1)

          山はすっかり春めいて 行動できる時間と距離が増えた。 地形図を眺めて以前から気になっていた場所やルートを吟味する。 この沢はまだ渡れるだろうか? ここはオープンバーンなのかな? それとも樹林に覆われているのかな? 急斜面をトラバースするより、迂回しても緩やかな地形を直登した方が楽かな? この気温でこの方角の雪質はどうなるだろう? 頭の中で組み立てたルートを実際に歩いてみて、 イメージとの違いについて考察する。 あるいは予想通りだったことに自信を深めたりする。 今日はひ

          開拓(2023.4.1)

          【詩】光と影(2023.4.23)

          思い返せば、この日一体どれだけ流れる雲の影を見ただろう。 幾重にも層を成す雲が偶然途切れてできる空洞の、遥か上空に見えた鮮烈な青色に、何度心を震わせたことだろう。 視界と体温を奪われ続けていた私に、時おり差し込む光がどれだけの歓びと救いを与えてくれただろう。 真っ白な世界に色彩が戻る歓喜の瞬間に比べたら、私の自信ある計画が思い通りに運ばなかった悔しさなど、本当に瑣末なことで、思い上がった感情でした。

          【詩】光と影(2023.4.23)

          昇り龍と水晶の棘(2023.3.5)

          出発から既に4時間以上が経過していた。 永遠に続くように思われた長い龍の背は、巌鬼山の稜線にまで達していた。 龍鱗のように逆立つ足元のシュカブラばかり見ていた私は、その時ようやく目の前に、二つの尖ったピークが聳え立っていることに気がついた。 そのピークのひとつ、耳成岩を纏っていた雲が、煙のように立ち昇り空へ消えていった。 岩木山の頂がついに私たちの前に現れたのだ。 激しい風雪に叩かれ続けた山の北面は、巨大な霧氷の棘に覆われていた。 山全体が水晶の結晶のように見える。

          昇り龍と水晶の棘(2023.3.5)

          THE DAY(2023.1.19)

          抜けるような青空の下、北八甲田の山々が微笑みながら私たちを見下ろしていた。 前夜降った雪は、本来の姿を保ったままふんわりと積もっている。 見渡す限り真っ白なブナの梢の隙間から、朝日が雪面を照らし出した。 結晶のひと粒ひと粒がそれに反射して、無数に散りばめられたダイヤモンドのように輝いていた。 この日、私は新しい相棒のスキー板、そして新しい友人とともに大岳の東斜面を目指した。 高気圧のど真ん中が上空を通過していた。 アクティブチェックもピットチェックも問題はなかった。 周囲

          THE DAY(2023.1.19)

          【詩】娘と滑る(2023.4)

          砕けた氷の粒がしゃらしゃらと さざ波のように広がっていく 大きく開かれた2本のスキーの上で 波の先頭をゆっくり進む小さな女の子 彼女は滑り終えると突然言った ポニョの気分だった 波の魚を引き連れて 海を走るポニョの気分だった 砕けた氷の粒は 今度はさざ波から大きな滝へと変貌した 女の子は初めて出会ったその不思議な光景を 輝くふたつの瞳でじっと見上げていた 彼女はけらけら言った ママを滝がずっと追いかけていたよ でも、追いつかれなかったね 山肌一面に薄く張られた氷を

          【詩】娘と滑る(2023.4)

          山頂を照らす光

          スタート直後から足が重い。 これは雪質のせいなのか、それとも前日の疲労や寝不足のせいなのか。 ゆっくり歩いていても背中に汗がにじむ。 気温が高いということは、ホワイトアウトの可能性も高いということだ。 ひとりでホワイトアウトを探検したことはほとんどないので、今日はそこでめげずに、冷静に自分をコントロールする。 それが最大の課題だ。 えっちらおっちら樹林帯を登った。 徐々に雪が深くなり普段ならラッセルとも思わない雪の深さが、私の気持ちをさらに重くした。 こんなにしんどいルート

          山頂を照らす光

          雪崩に関して思うこと

          昨年に引き続きプライベート雪崩講習会に参加させていただくことができた。 参加者は昨年とほぼ同じメンバー12名。 今回はゲレンデ内ではなく、実際にBC装備で山に入って行った。 内容はチームごとに行うビーコン捜索、斜面深くに埋没した人を効率よく掘り出すための技術「スノーコンベアベルトシャベリング」の練習、さらに雪の埋没体験や、ピットの掘り方と積雪観察の仕方など、盛りだくさん。 ビーコン捜索では、実際に発信モードになっているビーコンが入ったバッグを雪の中に埋め、それを探し出す。

          雪崩に関して思うこと