【散歩】自力でのぼらない高尾山
緊急事態宣言になって、リモートワークの比率がまた高まった。土日も人に会う予定は入れないし、都会のはざまに暮らす中で時々限界を感じる。
息してるっけ?みたいになる。都会のワンルームで職住をまとめて、土日も雑談を気軽にできないのは生きてる心地がしない。
生きてる心地ってなんだっけ?と土曜日の11時に思ったとき、とりあえず緑を見たい、あと車の排気ができる限り混じってない空気を吸いたい、と思った。人と会えないのは仕方ないから、一旦都会から離れたかった。
東京の人がちょっと遠出して緑とたわむれたいと思うとき、高尾山って結構ベタな選択肢だと思う。例に漏れず、真っ先に思い浮かんだし、迷わず行ける近さはやっぱりお手軽。
いこうと決めて12時過ぎに家を出て、14時には着いた。近い。あと、緊急事態宣言下だけど結構人がいた。ちょっと後悔した。まぁ私もその一人なんだよな。
お昼も現地で食べようと思って、京王線で北野で高尾山口方面に乗り換えてからの短い時間にササッと調べてた。
食べログで一番評価の高いそば屋は行列ができていたので、密を避けるべく近所のとろろそばがあるそば屋さんに入った。野菜も食べないとな、という理由で山菜とろろそばにした。
登山客が下山後に瓶ビール開けながらそばを待ってる会話をラジオがわりに、そばをすすった。こんりゃおいしい。お昼ごはん、無理に家で食べなくてよかった。私は高級な人間じゃないからそばの違いは対してわからないけど、このそばはおいしい。あと私の代わりにしゃべってる会話も癒やしてくれた。
マスクの下でニヤニヤしながらリフトに向かう。時間はかかるけど、ケーブルカーよりリフトっしょ。
振り返れば東京一望。ベルトのないリフトなので十分に気をつけられたいし、結構揺れるけど、やっぱり空気おいしい。周りに人のいないタイミング見計らってマスクとって深呼吸した。
上に着くと、やっぱり結構人がいた。
高いところ、見晴らしのいいところが昔から好きだったことを思い出した。中学生のとき、実家を引っ越すための土地を決めるときも、私が頑なに見晴らしのいい場所にこだわるため、親に車で連れ回され、「ここの眺めはどうだ」と聞かれ「いいね」と言ったら土地が決まったことがある。おかげで実家は最寄り駅から大変遠い閑静な丘の上にある。今はもう年老いた親には悪いことをしたな、とか思ったり思わなかったりして山を散歩した。
今日の目的は登頂ではない。緑を見て、空気を吸うことだ。かと言って大して山を楽しまずとんぼ返りするのも癪に障る。
どう歩いたか、適当だから覚えてないが茶屋を見つけた。山から眼下を見下ろせるデッキカウンターがあった。一服することにした。
完全に目的を果たした。今日はここに来るために来たんだ。家で仕事の合間の気分転換に淹れるコーヒーも、プロに淹れてもらったコーヒーもいいけど、一緒に吸う空気がおいしいとコーヒーは輝き出す。あと器も大事。
あとこのみたらし団子、焼き立てでおいしかった。そばでぶっちゃけお腹いっぱいだったけど、余裕で食べられてしまった。
そういえばビアガーデンは、冬は鍋をやっているらしかった。ひとりでも鍋させてもらえるらしい。今度は鍋をしに来よう。
西陽に照らされてセピアに色づく冬のさみしい山の中で、相対的に鮮やかなリフトが際立った。子供の頃に見た風景みたいだ。
ハー、今度は鍋も食べるしビールも飲んでやる。でもビール飲むとリフト乗れないんだよな。そしたら行きリフトで帰りはケーブルカーだな。
思考はいつ何時も、ほっといてもスルスルと展開される。思考の手綱を放して自由にさせたら楽になった。都会だとこの思考すること自体に息が詰まりそうになるけど、こう山の中だと全体的にまぁいっかって逆に自由な気持ちになれる。なんでだろうな。
駅にあるお風呂屋さんに寄ろうとしたけど入場規制中だった。おそば屋さんもだいたい店じまいしていたので、そのまま帰った。
夕闇が迫る多摩地区を車窓から眺めて帰路につく。地上を走る電車はいいな。くそ、京王線のCMそのままじゃないか。悔しいな。なお、私はいかなる電鉄会社とも無関係な存在なので念の為断っておく。
明日からも仕事頑張ろ。寝よ。
おしまい