地域活動には「個人のパーパス」が必要だ。
自分の行動の質を変える「個人のパーパス」とは?
初めまして。設楽秀之と申します。
2021年12月にそれまでいた富士通のプロダクト開発部門を離れて、富士通Japan徳島支社の一員となりました。以来、主に徳島の地域課題解決に取り組んでおります。
実は徳島に来て、様々な方たちと対話する中で、あることが地域活動に取り組む人たちにとても役に立つのではないかと思うようになりました。それは「個人のパーパス」です。
パーパス(Purpose)は、一般に「目的、意図」と訳される言葉ですが、近年では、経営戦略やブランディングのキーワードとして用いられています。企業などの組織が何のために存在するのか。すなわち「存在意義」の意味合いで使われることが増えています。
私がパーパスと出合ったのは、富士通が推し進めるパーパス経営の一環で、社員全員のパーパスを作っていく取り組みを通じてでしたが、実際に企業などの組織がパーパスを設定すると、いろんなメリットを享受できます。中でも重視されているのは次のものです。
このように、パーパスは企業などの組織の活動に大きな影響を与えうるものです。
しかし、パーパスは組織だけのものではありません。個人にもやはりパーパスは重要な影響をもたらします。例えば、次のようなことです。
他にも、組織に所属している人であれば、組織の中での自分のあり方や、組織との向き合い方を考える際の手がかりにもなります。先ほども書いたように、最近はパーパスを設定している企業が増えていますから、それと自分のパーパスを重ね合わせることで、バランスの良い働き方や貢献の仕方が見えてくるだけでなく、仕事の質の向上をはかることもできます。
私は富士通の社内で、個人のパーパスを見つけ、言語化する「パーパスカービング」のコミュニティを運営しているのですが、富士通の社員の中には個人のパーパスを活用して、仕事における個人の幸福感を向上させつつ、生産性をアップさせている人も数多くいます。
「個人のパーパス」が地域にもたらすもの
一方、地域活動の場合は、個人もしくは小さなグループで様々な課題に取り組んでいる人たちがたくさんいます。その意味では、私たちの会社で実践している個人のパーパスの考え方を、そのまま生かすことができるわけではないのですが、それでもいくつかのケースでは「個人のパーパス」が問題解決の手がかりとなったり、活動の活性化につながったりする可能性があるのではないかと見ています。
例えば「一緒に活動するメンバー探し」もそのひとつです。
よく地域活動では「何をやるかより、誰とやるかが大事」と言われたりしますが、活動を通じて地域にインパクトを与えていくには、やはり「仲間」が必要です。でも、ただ目の前の事柄に取り組んでいるだけでは他人から理解されづらく、なかなか誰かと意気投合するようなことは起こりません。そんなときに「個人のパーパス」を設定して掲げれば、自分の考えや価値観を理解してもらいやすく、一緒に活動するメンバーとの出会いが生まれやすくなります。
あるいは、「自分が取り組むべき課題の発見」にも「個人のパーパス」は役に立ちます。
地域のために何かしたいと思ったものの、何から始めればいいのかわからないと悩んでいる人は少なくありません。でも、自分自身の「個人のパーパス」を設定すれば、それと地域の課題との重なりから、自分が取り組みやすいテーマや方向性などを見つけやすくなります。
こう書くと、地域活動に取り組む人たちは「個人のパーパス」を持っていないかのようですが、現実には「個人のパーパス」がまったく意識されていないわけではありません。徳島で色々な人たちと対話してみると、地域課題に取り組む方々の多くは、パーパスに近い強い思いを抱いておられると感じますし、目的意識のようなものをもっておられたりもします。ただ、その思いを無形のままにしておくのか、それとも言葉にして形にするのかによって、現実に及ぼす影響や効果の大きさが違ってくるのです。
実際に、地域の環境防災研究活動をしておられるある方に「パーパスカービング」を使って個人のパーパスを明文化してもらったところ、後日、「自分のやるべきことが定まり、自分の想いや、やりたいことをいろんな人たちに自信もって宣言することができるようになりました」との感想をいただいたこともありました。言葉はよくありませんが、看板がなくて何屋かわからなかったお店が、わかりやすく大きな看板を掲げるようなものです。地域活動に取り組む人たちが「個人のパーパス」を設定し、それを表明するようになれば、周囲との関係は確実に変わります。
先ほどあげた例も含めると、具体的には、次のような効果が期待できるでしょう。
もちろん、これ以外にも効果はあるでしょうが、おおむね「個人のパーパス」は地域活動の様々な局面に推進力をもたらす可能性が高いと言えます。
ちなみに、私、設楽のパーパスは、「自己理解と相互理解により、人々に輝き・笑顔・調和をもたらし、楽しく幸せな世界にする」で、最近は、初めてお会いする人には、パーパスをお見せして説明するようにしています。そうすることで、「私が何を大切にしているか」「何をしようとしているか」を理解してくださり、会話が生まれやすくなったり、コミュニケーションを取りやすくなったと実感しています。
地域の財産は何といっても「人」です。その「人」の特性や能力、経験を活かしやすくするためにも、地域活動には「個人のパーパス」が必要なのです。