企業が社会課題・地域課題に向き合うために大切なこと【後編】
徳島県三好市で孤独・孤立対策支援の実証実験を開始
富士通Japanの濱上です。
前編では、官産連携の観点で行政から企業に期待することを中心に三好市の高井市長からお話を伺いました。後編では株式会社Tサポートの村上稔社長との対談をお届けします。社会課題・地域課題解決にボランティアではなくビジネスとして取り組む方がなぜ良いのか、利益との両立についての考え方やなど、詳しくお聞きすることができました。
事業だからこそ責任あるサービスが提供できる
濱上:先日は、高井市長との熱い対談、ありがとうございました。これまで買い物難民の移動スーパーの取り組みをされていましたが、今回、どのようなきっかけで孤独・孤立対策支援をスタートされることになったのでしょうか。
村上:2015年に移動スーパーで起業して、現在は31台の移動スーパーの運営と全国の研修サポートをしています。実は、コロナ禍になって中山間地域の独居高齢者が孤独死されて警察からの問い合わせが何件か続いたんです。亡くなった方のご自宅からは、とくし丸で買い物したレシートが出てきて、「買い物されたときの状況を教えてほしい」と。そんなことが続いたため、これは社会課題として取り組めないかと考えたわけなんです。
濱上:そうだったんですね。具体的には、どのように課題を解決しようと思われたんですか?
村上:移動スーパで山間地域まで走って行っていろんな方々に買い物をしていただく。じつはその場にも来ることができない方々もいらっしゃるんです。そういう方への訪問ができないかと考えたんです。買っていただいたものを、軒先まで持っていき、お渡しする、その時に雑談や対話を通じて見守りをして帰る、そういうサービスを考えたんです。
濱上:買い物だけでなく、雑談もする、そしてそれを事業とするという発想が斬新ですね。
村上:ボランティアだけだと限界があります。焼け石に水の場合も少なくない。そこに対価をいただくからこそ、サービスを提供する側にも責任がついてくるわけです。
利益は目的ではなく必要なこと
濱上:ビジネスで社会課題・地域課題を解決するということですね。ビジネスでは利益を求めますが、その両立についてはどのようにお考えですか?
村上:もちろん私だって多少はいい生活もしたいし、お金儲けもしたい。だけどそれだけでは満たされないものもありますし稼ぎだけが目的ではありません。でも利益は目的ではなく必要なことだということですね。「この市場を牛耳ってやろう」「囲いこもう」という行き過ぎないことが大切だし「FIREやEXIT目指そう」というのでもないと思うんですよね。
現場の一次情報は宝の山
濱上:現場でのサポートで大切にされていることは何でしょうか?
村上:現場の情報を大切にしています。一次情報ですね。こういうところに住んでおられるのか!とか、息子さんと一緒に住んでいるのにお互いに無関心になってこういう状態で孤立しているのか、という情報が目の前でわかる。こういう情報は宝の山なんですね。
濱上:ややもするとビジネス企画やマーケティングに時間をかけて、現場に行く時間を惜しんでしまいます。そうではなく、現地で対話し、感じることが大切なんですね。
村上:大企業は、大きなところから入ってしまう可能性があります。そうすると情報は入ってこない。伝達ゲームの二次情報になってしまう可能性があります。現場には何倍もの情報量があり現場はとても面白いです。
地域課題は成長とセットでは解決しない
濱上:中山間地域での課題に向き合っていてどのように感じておられますか?
村上:過疎地での課題に向き合っていますが、成長とセットで解決しようとは思いません。人口を増やそうとか、成長市場でないとダメという観点では過疎地の山奥の課題は解決できません。5年10年先はどうなるかを考えてみると、終末期のケアをしているように感じるときもありますが、いかに今を幸せに暮らしていけるかを考えています。
現場を大切にしながら余裕のある大きな視点で社会を見てほしい
濱上:今回の事業では当社は技術支援をさせていただいています。富士通Japanに期待することはどの様なことでしょうか?
村上:富士通さんには、テクノロジーの支援では本当にお世話になっています。それと並行して、現場を大切にしながら、企業の責任として余裕のある大きな視点で社会を見てほしいと思います。富士通さんの技術的なサポートを受けながら。現場を知っている私達が動く、この形には希望を感じます。
濱上:徳島支社でも若いメンバーが支援させていただいております。
村上:とても積極的に提言いただいたりアドバイスをしてもらっています。新しい技術の話や世の中の動向などを教えてもらえるし、こちらも刺激を受けています。自分自身が成長している感覚ですし、一緒にやっている感があります。これからも引き続き、よろしくお願いいたします。
濱上:こちらこそ、よろしくお願いいたします。前回に引き続き、対話の時間をいただき、ありがとうございました。