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レンズ運搬用のアタッシュケースを作る
アタッシュケース。憧れません?男児たちには理解してもらえると信じています。現金、金塊、銃、麻薬。そう、ありとあらゆる貴重品はアルミのアタッシュケースに入って輸送されるのが常。ということは、カメラオタクは自慢のレンズをアタッシュケースに並べたくなるのです。
製作の言い訳
レンズが防湿庫に入り切らない
100Lの防湿庫があるのに、レンズが防湿庫に納まっていない、という事実があります。そもそも、毎週、毎月どこかに持ち出すレンズを防湿庫に入れる必要性があるのかも疑問です。レンズがカビなきゃいいんだから、防湿庫に戻す理由がない。それはもはやそれは手間。
カメラバッグは保管場所ではない
しかしカメラバッグに入れっぱなしにするのは少し気が引けます。周りは布製品だし、多少の吸湿はあるでしょう。整理方法としても一覧性に欠けます。ポケットが多いのはカメラバッグとしては長所ですが、保管場所としては失せ物の原因になりがちです。
なにより、その時々で撮影条件に合わせて選んだカメラバッグを、一度リセットしたいじゃないですか。一度空っぽにしてリセットした後、次の撮影にフォーカスして準備をしたい。そう思うのは私だけでしょうか。
いちいち準備をするのがめんどくさい
前の段落と矛盾するのですが、準備というのは正直めんどくさい作業です。今週末、撮影に行く場所、目的が決まっているなら、準備するものもおのずと決まり、簡単に用意できるでしょう。
しかし、「何を撮るか分かっていないけど移動する」ような週末においては、準備は「何を準備するか迷う」ところから始まります。
これはいろんな可能性を想定する必要があり、結果として意外と心理的負荷が高くなりがちです。どんなシチュエーションでもある程度対応できる機材を持ちつつ、軽量化や可搬性なども考慮する必要があるのですから。
アタッシュケースという解決策
前述の3つの課題はどのようにしたら解決できるのでしょうか。
レンズが防湿庫に入りきらない
カメラバッグは保管場所ではない
いちいち準備をするのがめんどくさい
これの裏返しが求めているモノのはずですね。
防湿庫とは全く別の保管場所で
カメラバッグではなく
準備不要で全部一気に持ち運びのできる
保管場所が必要という事です。
ここで登場するのがアタッシュケースです。
つまり、防湿庫でなく、カメラバッグでもなく、一気に持ち運び可能で、耐久性に優れ容積のあるモノ。
それはつまりアタッシュケースに他なりません。アタッシュケースに並んでいれば、上述の問題点の解決に加え、見た目の良さも加えることができます。最高の解決策なのではないでしょうか?
製作
さてここにゴミ捨て場に転がっていたアタッシュケースがあります。昔は工具入れだったのか、エフェクターが入っていたのか、なにはともあれケースだけを拾ってきました。錠はありますが、鍵はありません。
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ざっと劣化した内装をはがし、内部の寸法を測定します。レンズを並べてみると、良い感じに入りそうです。今回はSigma Art単焦点をズラッと並べることにしました。
レンズの方も採寸します。Sigma Artラインはデザインが一貫しているので、採寸するのも比較的楽です。突拍子もない突起とか変な形状がないですからね。
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採寸ができれば、ケースもレンズも3D CADにぶち込んで、レンズサポートの設計です。3Dプリンタのテーブルサイズの制約と、失敗したときの影響を減らすため、レンズサポートはレンズ1つ1つに分割することにしました。
レンズサポートとレンズ本体との間はクリアランスを0.5mmほど確保します。フィルター径が77mmや86mmのレンズは、ステップアップ/ダウンリングを付けたままでも収納できるようフィルター部分に余裕を持たせていますが、細かすぎて伝わりませんね。
こういう「他は誰も気にしないけど、自分は絶対気になる部分」にこだわれるのが自作の良いところです。
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3Dプリンタでレンズサポートを出力している間に、アマゾンでポチッた波型ウレタンスポンジをカットし、蓋にはめ込みます。これが付いているだけで精密機械用のアタッシュケースっぽさが増しますね。
完成
一箱目
完成形はこちら。
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やはりSigma Artはデザインコンセプトが一貫しているので、ズラッと横並びにすると迫力がありますね。拾ってきたアタッシュケースもピッタリサイズで、専用にあつらえた様に見えます。フードは入っていませんが、GFXに付けたらケラレるんだから、あんなもの使わない使わない。
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通常、こういうケースはウレタンフォームをレンズの外形に切り抜くのが一般的ですが、僅かな凹凸やカーブに追従することは難しいです。また、底面がフラットになるので、105mmのような大きく広がった形状のレンズは収めるのに工夫が必要。
一方、3Dプリンタであれば、細かな凹凸も複雑な曲面も出せるので、上記の問題点が解決します。ピタッと収まり吸い付くような固定感が、独特の触感を作っています。
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ただ重量はえらいことになります。1本でも重たいArtラインが9本も集まり、レンズサポートも決して軽くはなく、アルミのアタッシュケースだってそれなりに重量があります。
製作後、全部詰めて体重計に乗せたところ、驚異の13kgでした。ダンベルかな?
二箱目
一箱作っていい気になると、入りきっていないSigmaレンズも入れたくなりますよね。120-300mm f2.8 Sportsとエクステンダー用のアタッシュケースも欲しくなってきました。
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さすがにもうゴミ捨て場にアタッシュケースは無いので、安価なトラスコ中山のアタッシュケースを購入。新品ですが内張りをべりべり剥がし、同じような製作をして2箱目が完成。
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レンズそのものがかなり大きいのと、レンズフットの収納にスペースが必要でかなり空間効率が悪くなってしまいました。余った空間は出来る限り有効活用しようと、エクステンダーのサポートの下には小物入れ、エクステンダー下には湿度計を配置してみました。
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材料はマットブラックフィラメント比較会で評価が悪かったSUNLUを惜しげもなく使用。やはりちょっと出来は悪いですが、かなり消化することができました。
製作後記
作りながら、映画「TENET」のワンシーンを考えていました。
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主人公の男がマイケル・クロスビー卿と面会した際、クロスビー卿から「これで世界を救いたまえ」とブラックカードを受け取ります。
もしスーツ姿の諜報部員が自分の前に現れたとしてですよ。私は庶民なのでブラックカードは渡せませんし、そもそも持ってません。しかし何もできないとストーリーが進まない。
ブラックカードの代わりと言ってはアレですが、レンズをズラッと詰めたアタッシュケースを滑らせて「これで良い写真でも撮ってきたまえ」と言えばギリギリ…格好はつくかもね?
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