7月19日(水):土台をなすカルチャーの重要性
昨日は中古車販売のビッグモーターによる自動車保険の不正請求に関連して、情報の非対称やアドバース・セレクション(逆淘汰・逆選択)に触れました。
本日も本件に関連した話題をもう少しばかり。
前述の不正請求に関して弁護士でつくる特別調査委員会が従業員の一部を対象にアンケート調査を行った結果、4人に1人が「不正な作業に関与した」と回答していたことがわかっています。
具体的には車の修理などを担当する382人のうち、27%にあたる104人が「不適切な保険金の請求につながる不正な作業に関与した」と回答したといいます。
また、17%にあたる68人が「自分以外の人が不正な作業に関与しているのを見聞きしたことがある」と答えたということで、報告書では「現場レベルでは不適切な行為がまん延していた」との指摘です。
これに付随して改めて重要だと思うのが組織のカルチャーです。
組織の風土や文化は、それが良いものであれ悪しきものであれ、好むと好まざるとにかかわらず、そこに属する人に影響を及ぼします。
修理を担当する人の4分の1相当が不正に関与していた点や保険金不正請求が5年以上前から行われていたことから考えると、不正が組織的に行われて常態化していたことを示しています。
これだけ多くの人が関与していながら、どこかでNOが出てこなかったり、ストップがかけられなかったというのは、まさしくカルチャーによる影響に他なりません。
顧客の車に対してゴルフボールを靴下に入れて振り回してへこませたり、ヘッドライトカバーをわざと壊すなど、普通に考えればありえない行為の数々です。
はじめはそこに違和感を抱いた人も周囲で不正が当たり前に行われている状況を受けて、次第に感覚が麻痺をしていったものと思います。
この点は静岡県の保育園で生じた児童虐待と類似しており、そこでも状態的に虐待が行われて周囲もそのことを知りながら事件発覚までブレーキがかけられなかった面があります。
組織内に流れる考え方や行為、そこに流れる同調圧力や言い出せない空気感は組織のカルチャーが作り出すものです。
ちょうど先週に実施したFitness Businessスクールの講義でも、最後に現場力の土台になるのは「カルチャーとしての現場力」である旨に触れたばかりでした。
本件は土台としてのカルチャーの重要性を改めて認識させてくれる事案だったと思います。