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8月19日(土):エコロジカルアプローチ、「縮退」と「機能的バリアビリティ」

このところは書籍「エコロジカル・アプローチ『教える』と『学ぶ』の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践」の内容に付随したことを綴っています。

エコロジカル・アプローチの運動学習理論を支えている基本原理は自己組織化で、昨日はその点について言及しました。

人間の身体の構造からすれば無数にある選択の中から何らかの運動の動作が生まれてくるのは、それを制約する要素があるからだとの話でした。

そのなかでコーチ側が「個人制約」、「タスク制約」、「環境制約」の3種類を意図をもってデザインし、学習者が自らそれらを知覚して動作を学び、自己組織化を進めていくように促していくのが制約主導アプローチになります。

そんな自己組織化にとってポイントになるのが「縮退」の概念です。

縮退とは骨格筋、分子、遺伝子など、あらゆるレベルに存在する性質で、人の環境変化への適応力を高めるための性質だと説明されています。

これを運動学習の領域にあてはめていえば、同じ運動結果を出すために、異なる複数のソリューションを持つことに当たるのだといいます。

バスケットボールのフリースローやサッカーのフリーキックの名手など、傍目には同じ動作を正確に行っているように見えても、実際のところは微細なレベルでみると変動性(バラつき)があるのだそうです。

意外だったのは一般的に名手とされるようなハイパフォーマーほど微細なレベルではバラつきがあり、その変動性は意図した結果を出すための複数のソリューションの形ということでした。

こうした望ましい変動性は機能的バリアビリティと呼ばれ、機能している変動性(バリアビリティ)との意味合いです。

従来的な運動指導のアプローチは「パフォーマンス結果の安定性=動作の安定性」との考え方で型の習得のための反復が重視される一方、エコロジカル・アプローチでは「パフォーマンス結果の安定性=動作の安定性+機能的バリアビリティ」と考えられています。

そして、こうした機能的バリアビリティの伴ったスキルを習得するには、厳密に同じ動作を反復するのではなく、「同じ結果を出すために、違う動きをすること」がポイントで、それを「繰り返しのない繰り返し」と表現されています。

そうした繰り返しのない繰り返しによるトレーニングで運動課題をバリアビリティ豊かに解決していくには、練習環境に存在する制約を意図して継続的に変更していく制約操作が不可欠という考えです。

昨日に触れた自由度問題からの制約とあわせ、機能的バリアビリティのための制約でもあり、制約主導アプローチへの理解が深まりました。

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