「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論552」
皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。
~Fitness Business通巻第15号(2004.11.25発行)「スイミングクラブの成長戦略」25~※名称等は当時、一部文章省略
Ⅲ成長クラブの事例研究
事例研究8「フィットネスに強いパートナーとのコラボレーションで店舗展開」(株式会社ベストスイミングスクール「ベストスイミングスクール」「フィットネスクラブBEST」)
鴻巣店のリニューアルオープンとともに会員制を導入、成人会員の集客を大幅に増加させた。
その後2002年にはフィットネスクラブ2号店となる行田店をオープン。
この施設も大ヒットした。
行田市の人口8万人の中に3クラブが競合しているのにも関わらず、である。
T氏は温浴施設を充実させることを始め、多くの会員のニーズをいち早くキャッチし、他にはない空間を提供していった。
こうして2つの高収益店に恵まれることになったのである。
そして今年、さらなる飛躍に向けて3ヶ所の出店を決め、地元金融機関複数行から総額10億円を調達した。
同社のフィットネスクラブ成功の要因の1つはアイデアを全面的に活かしている点が挙げられよう。
一方、子供向けスイミングスクールにはK氏の経験が活かされている。
まさに2人の強みがコラボレーションして、それぞれの会員満足に繋がっているのである。
成長軌道を突き進むK氏は「運が良かった」と口にするが、実はスイミングスクール全盛時代に幾多の苦労をしてきている。
K氏が埼玉県熊谷市に1号店をオープンした当時、スイミングクラブはオープンすれば数千人はすぐに集まると言われていた時代であり、近隣にあったイトマンスイミングスクールも3,000名以上の子供で賑わっていた。
ところが、K氏のクラブはオープン時会員数はわずか260人。
もともと強力なスイミングクラブに囲まれた地であったことから、K氏もそれなりに覚悟は決めていたが、状況は想像をはるかに超えるものだった。
広告を打っても小学生はすでにイトマンに入会しているので反応はない。
そこで同氏は幼稚園に営業回りをして就業前の子供たちにターゲットした。
そして、その幼稚園児たちが就学時に競合クラブに行かれないよう特典を出すなど引き止め策も様々に打った。
すると今後は競合店が仕返しをするように幼稚園マーケットを低価格で奪っていく。
そこで今後は3歳児をターゲットし、ベビーへ、マタニティへとターゲットを広げていきながら会員数を伸ばしていった。
鴻巣店でも苦労があった。
物件を継承することが決まった時は既にそれまでの会員に閉館のお知らせが配られた後であり、どう調整してもオープンまでに2ヶ月間クラブを閉鎖しなければならなかった。
前クラブ解散時のスクール会員数が1,000名であったことから、それを見込んで事業計画を立てていたが、オープンの準備が整い、募集をしてみると、1日目60名、2日目30名、4日目3名と惨憺たる入会状況。
その苦戦は明らかだった。
5億もの投資をしていたことからK氏は青くなる。
「とにかくチラシ配りに走りました」と当時を述懐している。
こうしたいくつもの苦境を乗り越えた実績が今の勢いの源泉にある。
そしてK氏は再び挑戦に挑む。
そのことについて同氏は「優れた人材に協力して貰うためには、目標や夢が持てる職場環境を提供することが重要です。そのためには経営者である自分がリスクをとり、彼ら彼女らを信頼しながらも責任を持って事業展開を続けることが必要だと考えています。」と話している。
~ここまで~
記事にある「ベストスイミングスクール」は、2023年1月時点で九州エリアに8校展開されていることを確認しました。
そして関東エリアについては、行田店以外の情報がないため、店舗が継続されているか不明でした。
記事以降の状況は不明ですが、確認できる情報の範囲においては、スイミングクラブは堅実に展開され、フィットネス併設クラブは旗艦店以外、苦戦したことが想定されます。
これまで8つの事例を見てきた中、約20年後の現在の状況を確認すると、存続しているクラブとしていないクラブが現実としてあることが分かります。
取材時には好調であったとしても、20年という長期スパンで見ると、経営者のある意味、力技で業績を上げたクラブはその後、苦戦してきた印象が残りました。
ムリやムチャは数年可能であっても、10年20年という時間軸の中では、シュリンクしていくと考え、短期視点と中長期視点のバランスを取ることができる経営感覚がやはり求められるのでしょう。
お読みいただきありがとうございました。
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