6月18日(火):自治と共同体運営
昨日は少しずつ広がりが出てきたラーケーションに付随した子どもの一人旅について記しましたが、本日はそこから派生した話をもう少しばかり。
一人旅と関連して先般に中学一年の息子と話をした際には夏休みに自由研究を兼ねて長野の野沢温泉村に行ってみたい旨を聞きました。
その理由は野沢温泉村の自治の仕組みなどに興味があるようで実際に自分の目で見たり、話を聞きにいきたいとの意向です。
ほかにも神奈川県秦野市が行っている共有財の保護やスペインのバルセロナの脱成長を取り入れた街づくりなどを自分なりに調べてみたようで、そういったものとあわせての知的好奇心だと思います。
野沢温泉は戦国時代から現在までつづく温泉地ですが、息子の話によれば野沢温泉は村の地域共同体である「野沢組」によって運営されているといいます。
こちらは室町時代の「惣」を起源にしたもので、温泉源や山林、用水路などの資源、共有財産を長年にわたって皆で大切に守り、そして適切に活用してきたのだそうです。
野沢温泉村には村長もいますが、その村長と比類する権限をもつのが野沢組の惣代である一方、「任期1年、再選なし、報酬なし」の制度で、惣代と特定の個人が結びついて権力や利権が集中しないようにもなっているようですね。
一般的な市町村とは異なる仕組みの自治、コモンの管理運営など、たしかに息子が興味関心を抱いたのも納得です。
今は少なくなってしまった伝統社会のような共同体運営からは、現在の民主主義とは違った形の民主的な運営のあり方が息づいていて、そこからの学びや現在に活かせる要素もあることでしょう。
少し話は飛びますが、NHKの「100分de名著」では今月にピックアップしている一冊が宮本常一の「忘れられた日本人」です。
宮本常一は民俗学者で日本各地をまわって、それぞれの地域で行われている日常の営みを研究していた方です。
著書の中では様々な共同体についての話も出てきて、そこでは寄合いで合意形成する姿も事細かに描写されています。
なかには一度集まったら結論が出るまで二日間にわたって話が続けられるような様子もあり、効率や多数決とは対極にある運営です。
時間は要するし、非効率ではあるものの、全員が言いたいことを口にして議論を尽くすから、事が決してからの納得感はきっと高いものがあるはずです。
また現在の合意形成と比べると非効率に映るものの、その社会においてはそれが意味のある形であり、有効であったのだと思います。
なぜなら、本当に非効率で無意味なことは、どんな社会や地域であれ、姿を変えたり、形骸化をしていくからです。
そうならずに長く大事にされてきた形であるのならば、そこにはその社会にとっての意味や意義が内包されているのだと考えるのが自然です。
今回、長男が行きたがっていた野沢温泉村での自治にも、おそらくそれと似たようなところがあるのかもしれません。
そんなこんなで息子の一人旅の参考までに、せっかくだから一緒に100分de名著を見てみようと思った次第です。
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