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3月28日(火):居場所をめぐる「空間と身体性」

本日もこれまでの続きをもう少しばかり。

この1週間ほどは政府が進めようとしている学校や家庭以外の子どもにとっての「第三の居場所」づくりに向けたモデル事業に端を発して、コモンのことやコミュニティに触れてきました。

それに付随して先般からは書籍「孤独と居場所の社会学(阿比留久美著)」を引き合いに「居場所」について掘り下げ、①「主観/客観的承認」②「他者との関係性の有無」③「空間性の有無」という3つの観点から考えを広げています。

一昨日は①「主観/客観的承認」、昨日は②「他者との関係性の有無」に触れたので、今回は③「空間性の有無」についてです。

③「空間性の有無」

同書によれば空間性の有無とは、ある人にとっての居場所が物理的空間をもつかどうかとの軸です。

居場所には学校や職場、自宅のような物理的空間をもつものもあれば、SNSなどのオンライン空間でのつながり、電話やメールを通じた相手とのやり取りのなかに居場所を感じることもあります。

また、同一の相手と物理的空間をともにし、さらにオンラインでもつながるなど単純な空間の有無だけでの線引きではなく、それが入り混じるものになっています。

それだけに物理的空間とオンラインなどの仮想空間・間接的なつながりは、優劣でも主従でもなく、パラレルなものだと思います。

ただ決定的に異なる要素は物理空間の場合は身体性が伴うことです。

相手を直接的に見る、触れる、感じるなど、対面と身体性によってしか得られないものがあるのは確かです。

東北大学の川島教授が著者である「オンライン脳」によれば、物理的な距離や空間的な制約を飛び越えるオンラインはこのうえなく便利ではあるものの、そのことと私たちの「脳がどう感じているか」は、まったくの別物だという指摘しています。

例えば対面でのコミュニケーションだと実際に人と接することで脳がさまざまな刺激を受けることで活発に働きます。

これに対してオンラインミーティングでは画面のなかの情報に限定されるために刺激が少なく、脳の一部しか働かないといいます。

また、対面でお互い顔を見ながらよいコミュニケーションがとれた場合には、お互いの脳活動が「同期する」という現象が起きるそうです。

一方のオンラインミーティングでは脳が「同期しない」との実験結果が出ており、換言すれば脳活動が同期しないことは脳にとって「オンラインでは、コミュニケーションになっていない」とも表現されています。

つまり情報は伝達できるけれども、感情は「共感」していない、という状態です。

こうした点は書籍「ストレス脳」でも言及していて、オンラインでの画面越しでは社交欲求が十分に満たされずに孤独感が深まっており、リアルでの肉体的な側面への重要性に触れています。

居場所の認識はアイディンティティの承認などをめぐる問題でもあるだけに脳やそれに伴う感情などとも密接に関係するはずです。

オンラインや間接的なつながりなど、身体性から乖離したコミュニティも大事な場ではあるものの、それ偏重だと孤独のによる心の空白を埋めていくのは難しいようにも感じますね。

やはり意図して取り組んでいくのだとすれば、物理的な空間で身体性を伴った形での他者との関係性、その延長線上で主観的な承認につながる機会を創出していくことかなと思っています。

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