7月6日(水):「見えないものを見る」ために
フィットネスクラブ運営における定性のマネジメントについての続きです。
昨日は数字をベースに何らかの営業施策を打つような定量的なマネジメントとは大きく異なり、無形の領域を扱う定性マネジメントにおいてはそれを形にしたり、結果につなげていくには一定の時間も含めた忍耐が要ります。
そこで必要になってくるのが不安定な状態を支える力の「ネガティブ・ケイパビリティ」であると説明をしました。
マニュアルに沿って仕事をするとか、データを分析して出来るだけ効率的に解答を出すようなアプローチとは異なり、性急に答えを出すのではなく考え抜くこと、それに耐え抜く能力としてのネガティブ・ケイパビリティです。
そうした不安定に耐えうる力があることで、その先の発見や創造が生まれてくるわけですが、本日の問いはそれらを得ていくためにできることは何か、ですね。
こちらについて書籍「見えないものを見る力」ではネガティブ・ケイパビリティの概念を用いた精神分析家であるビオンの考え方として相手への「共感」が示されています。
具体的には「他人の心、精神の動き、変動、葛藤を理解する努力」などの要素です。
これは「精神科医が患者と接する際の忘れてはならない診察態度」であり、「既成の教科書にある知識だけでもって患者を診るのではなく、できる限り自分の知識をいったんなしにして、患者の在りようを坦懐に直視すること」と補足されています。
このビオンという方は非常に面白くて第二次世界大戦当時には新兵の適性検査としてそれまでの既成の手法をやめて、「リーダーなしの集団」をつくり、彼らに何らかの課題を与え、この課題の遂行過程を詳細に観察し、各人の適性を見出す、といった方法を取ったそうです。
あらかじめつくられた形式的な基準で相手を測るだけでなく、一人ひとりの言動を注意深く観察的に捉えることをそのまま実践しているのがうかがえます。
同書では相手への共感というものを進める意味では、「自己を持ちつつ、自己を出し過ぎず、全体のなかに自己を置くこと」である旨も記されていました。
補足をすれば、在りのままに見たり、その背景にあるものを掴むためには、そこに利己心や雑念などの余計なものが入り込んで、見ているものを曇らせないように、ということでしょう。
それが「見えないものを見る」ことにつながっていくのだと思います。
定性的なものは形がないだけに表現も含めて、どうしても抽象的なものにはなりがちですが、そのあたりは行間を汲んでもらえると有難いですね。