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Rosen Life Itself - Relational Biology-

RosenのLife Itselfは従来の還元論的なアプローチでは生物について理解できないと論じています。
とくに、生物が目的を原因として動作するというアリストテレスのFinal causeあるいはAgent causation(Immanent cause)を機械論では理論化不可能であると「証明」している。(この証明は、Final causeの定式化自体が適切か、という点や、機械論の定式化(前提)が正しいか、という点で疑問があるが)

Relational Biology

従来の生物学は、生物を構成する物質を保持して組織を断つアプローチであったとされています。
そして、新しいRelational Biologyでは、逆に、組織を保持して構成する物質を断つアプローチであるとしています。

システムの機能について、哲学では、Multiple Realizationという言葉があります。これは、Marrのレベルとも関係するのですが、同じ機能を異なる物質によって実現できるという考え方です。
たとえば、計算は脳のようにタンパク質によって実現できますし、シリコンを用いて実現することもできます。

RosenのRelational Biologyというのは、Marrがいうところの実装レベルの理論ではなく、より上位の理論が必要であるという見方もできます。

Component

Rosenは、生物は、Particleではなく、Componentによって構成されていると考えます。ここで大事なのは、Componentはそれを部分とするシステム全体に依存して、機能を持つと述べています。

このような考えは、創発主義では一般的にみられる考えです。

実際、次のように言及しています。

A particle does not acquire new properties by being associated with a larger family of such units; on the contray, the larger family is itself endowed with precisely those attributes that are contributed individually by its members.  
Thus, a thoroughgoing reductionistic, structural approach to the natural world must deny reality to such concepts as novelty or emergence at any fundamental level. 
(粒子は、そのようなユニットのより大きなファミリーと関連付けられることによって、新しい特性を獲得することはない。逆に、より大きなファミリーは、そのメンバーによって個々に寄与される属性を正確に備えているのである。 したがって、自然界に対する徹底的な還元主義的、構造的アプローチは、いかなる基本的なレベルにおいても、新規性や創発といった概念の現実性を否定しなければならない。)
The situation is quite differnt with a functional unit or component. … Its description changes as the system to which it belongs changes. 
It can thus acquire new properties from the larger systems with wich it is associated. 
(機能ユニットやコンポーネントの場合は、状況がまったく異なる。......
その記述は、それが属するシステムが変化するにつれて変化する。そのため、機能ユニットは、それが関連する大きなシステムから新たな特性を獲得することができる。)

Rosen, Life Itself, P121

創発、非還元性

創発主義は、生物は物理学に還元できないと主張していたので、Rosenの考えと合致しています。
Rosenは、生物を物質の法則に還元できると考えた場合、Componentが新しさ、あるいは、創発を持つことができないため、Epiphenomenal(因果的効力を持たない無意味なもの)になってしまう、と言っています。

しかし、生物の素晴らしい組織化を見れば、そんなことは到底信じることは難しいです。各組織は、システムとして統合されてはじめて意味があるように構成されており、細胞や分子のレベルでは持っていない、創発した機能を持っているように見えます。

私は、創発主義に影響されて、Rosen的にいえば、組織レベルというマクロなレベルから、それを構成するミクロレベルに対して因果的効力を持つという下向き因果の定式化に取り組んでいます。その意味で、まさにRosenのRelational Biologyが可能となる前提について、その理論を構築しようとしているとも言えます。

Rosenの問題点

私は、"throw away the matter and keep the underlying organization"も"throw away the organization and keep the underlying matter"のどちらも問題だと思っています。

組織を無視して、それを構成する部品だけ見るのは論外として、matter(物理)の方もしっかりと考えないと、創発をうまく説明できないと思います。

大事なのは、matterもOrganizationもどちらもthrow awayしないことだと思います。

Organizationはマクロレベルであって、還元論は、それを構成するミクロレベル(matter)によって、完全に説明できるため、新しさ・創発はないと仮定します。

Rosenは、創発をまず前提としたうえで、Organizationレベルは、matterにはない原理があるはずだから、matterを捨てて、Organizationの理論を作るべきであると言っています。これによって、生物を、物理的実体から切り離された抽象的な数学的構造に還元されてしまっているように見えます。

私は、生物が特異的であるのは、マクロレベルのOrganization(Rosenが考えたように数学的・代数的(圏論含む)で理論化)が、ミクロレベルのmatter(Componentを構成するparticles、物理)に対して因果的効力を持つ点であると思います。
こうすることで、数学と物理が相互作用するようなシステムを考えることができます。そして、ここが一番大事だと思うのですが、Organizationのルールに還元できるわけでもなく、Matterのルールに還元できるわけでもなく、その両方のルールが相互作用するような複雑なシステムが生物のモデルとなると考えています。

関係構造は、Rosenも着目していたように、時間的に不変であって、物理現象のような一方向の時間の流れはありません。つまり、数学的な関係は、時間から切り離された存在です。
対して、物理はEfficient causeという原因が結果を生み出す関係に関するルールを規定します。
この2つは異質なものですが、生物学は、物理に還元するのでも、関係に還元するのでも十分に扱えないと思います。

Rosenは、Efficient causeなしに、Final causeを説明しようとしましたが、私は、数学的関係を目標とするような負のフィードバック制御(Efficient causeによって作られるシステム)がFinal causeを説明すると考えています。

Organizationを定義する「関係」を目標とするように、それを構成するmatter(particle)を制御することで、matter レベルに存在しない、Organizationレベルのルールに、matterを従わせることで、Epiphenomenalを回避できるという考えです。

マクロは普通ミクロによって完全に決まるはずで、創発は起きないはずです。しかし、マクロルールをミクロが観測してフィードバック制御するのであれば、マクロがミクロを決定するように見えるシステムは構築できます。
Rosenの誤りは、OrganizationとMatterの相互作用ではなく、Organizationのみの生物学を定義しようとした点にあると思います。
Final causeは時間なしの関係ではなく、通常とは逆向きに目的が原因となるように見える因果ですが、フィードバック制御は自然に、なぜ逆となるのかを説明できると思うのです。



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