F. クリックは、DNAの二重らせんの発見で有名ですが、「分子と人間」という書籍で、意識に関して議論しています。
クリックは、意識の神経相関という概念を提案して、意識の科学研究の土壌を形成しました。
この「分子と人間」では、生気論という考え方を批判し、意識がどのように説明されるべきか論じています。
生気論の本性
前途に期待されるもの
「意識を語る」
所感
クリックは、晩年意識の研究を行い、NCC(意識の神経相関)という考えを提示した。
クリックは、宗教が嫌いで、同時に霊魂などの生気論を嫌っていた。
決定論者で、一元論者で、自由意志を信じず、還元論的な考えを強く感じる。
自然淘汰すらも、生物固有の原理ではなく、化学によって説明されると考えていたようだ。
わたしは、ここまで極端に、すべての現象が下位のレベルから説明できるとは思わない。死後の霊魂は信じないし、世界は物質によって構成されているとは思うが、一方で、物理や化学では説明できないような「特殊法則」が存在すると思う。
どちらかというと、科学において、異なる階層間を接続するための理論が不足しているというのが問題であると思う。
また、NCCに関しても、相関から原因を見つける方法論自体の限界も近年指摘されている。たとえば、フィードバック制御系では、原因(外乱)などの情報は、制御によって打ち消されてしまう。神経系にある種の負のフィードバック制御がある場合、相関から原因を見つけられないといった主張もされている。フィードバック制御があるところでは、相関を見つけたところで、本当に知りたい原因はわからないかもしれない。
フィードバック制御では、カルマンが観測と制御の二元論を定式化している。線形の系では、観測可能性と制御可能性は、独立に決まる。非線形の系へ一般化できるかはわかりませんが。わたしは、この制御と観測という2つの異なるメカニズムからフィードバック制御が成り立つということは大事だと考えています。なぜなら、制御と観測が、異なる階層で生じる事が可能であるからです。このことは、ミクロ決定論ではなく、マクロがミクロを拘束することを可能にします。クリックが信じるようなミクロ還元主義、ミクロ決定論に対して抜け穴が生じると思うのです。