高齢糖尿病患者のフレイル予防 - 都市部と地方の違いから見える課題と対策
はじめに
近年、高齢者の健康維持において「フレイル」という言葉をよく耳にするようになりました。フレイルとは、加齢に伴う心身の機能低下により、健康な状態と要介護状態の中間に位置する状態を指します。特に糖尿病を持つ高齢者は、フレイルのリスクが高いことが知られています。
今回は、最新の研究結果から、都市部と地方における高齢糖尿病患者のフレイルの特徴と、その予防対策についてお伝えします。
都市部と地方で異なるフレイルの特徴
地方部の方が高リスク
研究によると、地方在住の高齢糖尿病患者は都市部と比べて:
フレイルのリスクが2.55倍高い
健康な状態(ロバスト)の割合が低い(地方29.7% vs 都市43.9%)
特に社会的活動や日常生活動作に関する機能低下が顕著
社会的活動の違い
地方在住者で特に目立った課題:
公共交通機関の利用頻度が低い
15分以上の継続的な歩行が少ない
友人との交流が少ない
家族や友人への相談が少ない
フレイル予防のための具体的な対策
1. 移動手段の確保と運動機会の創出
病院の駐車場を少し離れた場所に設定し、歩行距離を確保
地域の散歩コースや運動施設の情報提供
グループでの運動プログラムへの参加促進
2. 社会的つながりの強化
糖尿病教室などでの交流機会の提供
オンラインを活用した遠隔でのコミュニケーション支援
地域のサポートグループへの参加促進
3. 健康管理能力の向上
わかりやすい健康情報の提供
スマートフォンなどを活用した健康管理支援
定期的な健康チェックと相談機会の確保
おわりに
フレイル予防において、地域による特徴を理解し、それぞれの環境に合わせた対策を講じることが重要です。特に地方在住の高齢糖尿病患者さんは、社会的活動の機会を意識的に増やすことが大切です。かかりつけ医や地域の医療機関に相談しながら、自分に合った予防策を見つけていきましょう。
参考文献
Nishimura et al. BMC Geriatrics (2024) 24:688
日本糖尿病学会編:糖尿病診療ガイドライン2024