持続可能なカカオ開発への連結:アセアン・カカオ・クラブ(ACC)第24回年次会議(2024.10.08~11、ブンタウ)
2024年12月13日(金)、ハノイ市オンイクキエム通りのベトナム・コーヒー・カカオ協会(VICOFA)事務局長ドー・スアン・ヒエン氏を訪ね、現在のベトナムにおけるコーヒーとカカオ生産をめぐり意見交換を行った。その際、ヒエン事務局長から、今年2024年10月にブンタウで行われた東南アジア諸国連合カカオ倶楽部-第24回年次会議(ACC-24ブンタウ会議)に関する言及があった。ACC-24ブンタウ会議はベトナム農業農村開発省国家農業普及センター(NAEC: 国家勧農中心)と欧州連合気候対応型デジタル循環経済事業のひとつ「EUベトナム・カカオ循環経済計画」(EU Vietnam - Circular Economy Cocoa: From Bean to Bar)が資金提供元であり、サステイナブル・カカオのための有意義な討論が行われたそうである。OCAからもグエン・ティー・トゥー代表が参加し、会場ロビーで各国から来た農村開発専門家やカカオ・バイヤーらに製品紹介を行った。以下は、2024.10.09づけ越字紙「バリア・ブンタウ報」の報道:
https://baobariavungtau.com.vn/kinh-te/202410/lien-ket-de-phat-trien-cay-ca-cao-ben-vung-1023297/index.htm
「農林業普及事業におけるASEAN内協力とASEAN共通アプローチ」をテーマに、ASEANカカオ倶楽部-第24回年次会議(ACC-24ブンタウ会議)が、2024年10月8日から11日まで、ベトナム農業農村開発省国家農業普及センター(NAEC, 国家農業中心)の主催で、ブンタウ市内で開催され、各国・各地の行政官やカカオ合作社(生産者協同組合)・企業代表者・農村開発―栽培専門家らが参加した。国家農業普及センター(NAEC)レー・クオク・タイン センター長は、会議の中で、「現時点のデータでは、ベトナム国内のカカオ作付面積は3,471ヘクタール、カカオ収穫面積は2,836ヘクタール、カカオ発酵乾燥豆の年間生産量は4,786トン、その年間生産性は1ヘクタールあたりカカオ発酵乾燥豆(生豆ではない)1.69トンで、カカオ栽培は中部高原(西原)、東南部、メコンデルタ(西南部)、南中部沿海に集中している」と報告した。
生産・加工と体験観光とを組み合わせた集中的規模でのカカオ生産への投資や、生産者組合との生産連結は、バリア・ブンタウ省のOCA-タインダット(成達)公司などの複数の企業によって実施されている。ドンナイ省のチョンドゥク(重徳)公司、ダクラク省のグリーンハイランド(高原青)公司、ピュラトス・グランプラス・ベトナム公司などは、生産チェーンに投資し、大規模なカカオ集中栽培面積を拡大させている。ベトナム産カカオ豆は 100% 発酵乾燥カカオ豆であり、バイヤー、加工業者、輸出業者に向けて高い品質を保証している。
この会議において、ASEAN 地域のカカオ生産国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の代表者・専門家たちは、カカオ生産における技術革新状況や、カカオ生産への展望や戦略、技術開発・技術移転における協力強化、品質向上のためのソリューションや、製品付加価値を高めるための食品安全衛生保証カカオの生産と、それによるカカオ生産の価値チェーンにおける分野ごとの収入向上などについて、情報を提供し共有した。会議では、また、カカオ豆やカカオ加工製品に対する関税や非関税障壁、「ASEAN自由貿易協定(AFTA)の物品貿易に関する協定(ATIGA)」及びASEAN加盟国とその域外国とくに最恵国待遇享受国家との間の「ASEANの締約する自由貿易協定(FTA)」の活用に関する問題が提起された。
持続可能なカカオ開発のために、ベトナム農業農村開発省は、フィトフトラ菌や蚊よけ剤による果実の腐敗に対して強い、高収量で高品質の新しいカカオ品種の開発事業や、エコツーリズム、コミュニティツーリズムと組み合わせた、チェーン(生産 - 購入 - カカオ加工)に沿った生産面積拡大のための優先融資支援のための投資を継続している。NAECタイン センター長は、「この数十年でベトナムのカカオ作付面積は25,700 haから3,417 haへと減少したものの、いまは好ましいシグナルと多くの展望がある。(2016年に)国際カカオ機構(ICCO)がベトナム産カカオを世界のトップ生産地リストに追加したことは、特に好ましい出来事であり、世界的なカカオ需要が、新興人口大国(中国、インド、インドネシア)の需要増に押されて高まりつつある中、ベトナム産カカオは新たな好機を迎えつつある」という。
*2016年、国際カカオ機構(ICCO)は、2013年のパリ「サロン・デュ・ショコラ」でアジア太平洋地域の最高品質カカオに選ばれたベトナムを、正式に世界のトップ生産地リストに追加した。
https://www.confectionerynews.com/Article/2016/03/21/Vietnam-to-win-ICCO-fine-flavor-cocoa-status/
バリア・ブンタウ省のためのカカオ・ビジネス・チャンスを開く
この3年間、省内のたくさんの地方で、胡椒や果樹と混植する形で(集中植林ではない形で)カカオ作付け面積が急速に増加し、高い経済効果をもたらすと期待されている。いまやバリア・ブンタウ省のカカオ作付け面積はダクラク省の1,125 haに次いでベトナム全国第二の625 haである。バリア・ブンタウ省でも、カカオの作付けが最も集中しているのはチャウドゥク県である。専門家たちの評価によれば、当該地方における発酵乾燥カカオ豆の品質はベトナム全国でも第一級に属する。また、当該地域のカカオ栽培モデルは全量買い取り(đầu ra sản phẩm đã được bao tiêu)であるため、農家はカカオ栽培に大きな期待を寄せている。チャウドゥク県農民会副主席(農民協会副会長)のタン・スアン・ドン氏によれば、今年のカカオ収穫季、農家たちのカカオ園は豊作な上に価格もよい。チャウドゥク・カカオ合作社(生産者協同組合)監督のレー・ゴク・カン氏によれば、良好に世話(耕作)をすれば、樹齢6年のカカオノキからは、1サオあたり(1000m2=1アールあたり)3トンの生豆(発酵乾燥豆ではなく、あくまで生豆)がとれる。チャウドゥク・カカオ合作社は、現在、ホーチミンシティーに本社・工場を置くヴアトゥクファム(王食品)公司、ショコラ・マルゥ公司やそのほかの企業との間で買い取り連結(契約)をかわしており(đã liên kết với…để thu mua)農家は産物の売り先について安心している。カカオ原料地域の更なる開発のために、チャウドゥク県は、農産物の付加価値向上を目指すOCOP(JICAがベトナムに導入した一村一品運動)の構築と「ベトギャップ(ベトナムGAP)認証モデルに基づくカカオ栽培規程」を適切に実施できるよう、県内80世帯のカカオ農家を対象に、種苗、肥料、農業物資への投資に、2.7ビリオンドン(27億ドン≒1600万円)の経費を補助(互助)している。チャウドゥク県農民会もまた、2024年8月末、県内の合作社社員及び農民会会員を対象に、カカオ種苗2万本の分与を実行した。このカカオ種苗の購入経費は260ミリオンドン(2億6000万ドン≒約160万円)であり、県農民会が各企業に働きかけて(vận độngして)、その支援を受けたものである。
チャウドゥク県のグエン・タン・バーン人民委員長によれば、県の2025年までの目標は、(ベトギャップを越える)「有機カカオの栽培規程」を完成させて、チャウドゥク県内のカカオ栽培面積を650 haまで拡大させ、そのうちの15 haを「輸出需要に対応するための有機標準に基づくカカオ生産面積」にすることである。「カカオ栽培・開発の優位性(利勢)および潜在性(潜能)とともに、チャウドゥク県は将来的にベトナム最大のカカオ原料地域のひとつに成長し、地域の社会経済開発に積極的に寄与できるものと期待している」と、バーン人民委員長は語った(記事はココマデ)。
ACC-24ブンタウ会議は越国内媒体のほか、フィリピン・ルソン島のイサベラ州立大学HPでも取り上げられた。これは、イサベラ州立大学講師で、カガヤンバレーカカオ開発センター長、ミリーン・R・コープス博士が、今回会議中にACC食品安全技術作業部会(TWGFS)の副議長に任命されたことを祝ってのものである。TWGFSのデータベースなどは公開されているのだろうか。インターネット上では、資料共有サイトSCRIBD(有料)に、古いデータ(2016)が1件載せられているだけのようだ。各カカオ企業は輸出入の際の食品安全問題をめぐり税関当局などと大変なマラソン交渉をしいられていることが多い。TWGFSによる情報提供・公開を切に望む。