#69「悪女について」考
「悪女について」は
有吉佐和子さんの小説で
富豪の女性が突然亡くなり
27人にインタビューしていく
お話です
本人は一切出てこず
外堀から主人公である富小路公子をうかびあがらせます
表紙が美しく、公子をよく表しています
わたしはこの人は
「人生をよく生きるために、圧倒的に努力したトップギバー」
のようにみえます
うらやましい
こんな生き方してみたい。
富小路公子は
出自が分かりません
八百屋の子として育ちます
もとの戸籍の名は鈴木君子でした
けれど
男の人がおもわず守ってあげたくなるような行動をとります
たとえば彼女は、相手が用件を切り出すと
「まああ」
といいます。
これ、実際声に出すと
時が止まるんですよ~~
そして、相手を見つめる時間ができます。
心を奪う、すばらしいテクニックです
いや~使ってみたい。
おそらくこれを環境からではなく
自分の意志で選び取って身につけていきました
彼女のことばは、本当に美しい
所作ふるまいを整えることで
心が整っていく、と考えている私にとっては
お手本みたいな女性です
汚いものとは何か
わかっているからこそできる芸当です
美しくあることや
美しいものを獲得するためなら
誰かに依存するでなく
力を発揮し、大きく決断していきます
手に入れたダイヤモンドやサファイヤの描写は
読んでいてうっとりします
そうして得た自分の財力で道を切り開き
大切なものを守りました
身を差し出すこともいとわず
一心不乱に自分の幸福を追求してる生き様なんです
戦後日本が貧しいなかで
簿記を学び法律を学び
スモールステップで小さな成功を重ねていきます
24時間、身を粉にして働き、学びます
「親のお金で大学出た方にはわかっていただけないでしょうけど
やれなかったことは、やりたかったと
いつまでも思うものですわ」
この言葉は、彼女の本心なのでしょう
自分に14年仕えた家政婦への言葉は
厳しいけれどほんものです
「菅原さん、あなたはあの子の欠点ばかり指摘しているわね
それはよくないわ。
誰にも欠点はあるものよ。
でも、それを指摘するよりも
その人の持っている美しいものをひきのばしてあげる方が
その人の成長も早いし
欠点もカバーできるわ。」
反面、「光子さま」のくだりは
読み進めて声を上げてわらってしまいました
彼女には大切なものに人間とか畜生の区別はないのです
長命のために運動したりする時間など
なかったのは当然と思います
10歳も年齢を偽り
二度の結婚を経て
二人の子どもを育てながら
宝石店や不動産を狙いを定めて買いあさり
自分の力をどんどん強めていったのです
「僕は処女と結婚したつもりでした」
そういう男の人には悪女かもしれないけれど
女にとっては賢さの極みです
いのちを燃やしたのだなぁ。
胸がスカッとする小説でした。
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