おばさんと美術館
おば友は美術館が大好きだ。美しい物を見ると幸せな気持ちになる。美術館に行きたがるおばさんに「人は欠如を求める」とおじさんが余計な事を言って水をさす。
おばさんに美が欠如していると言いたいのだろうが、自分の顔と体型をしっかり鏡で見て欲しい。確かにおばさんの周りには美が欠如している。幸せを求めておばさんは、韓流、華流ドラマを見て、美術館に通う。
「この前、フランスに遊びに行った友達が飛行機で14時間かかって完全にお尻が死んだって。1週間たっても、尾てい骨が疼いて椅子にまともに座れないらしい」とオバ友に報告するおばさんY子。
笑、笑、笑。
「ロシアの上飛べないからでしょ。プラス4時間はおばさんにはキツ過ぎる。」
「アメリカはもともと15時間かかるのに行ってたくせに」
「人間て不思議よね。10時間で行けたところが14時間になると途端に辛くなる。更に円安だし。ウクライナが平和になるまでヨーロッパの美術館めぐりもお預けね。」欠如か?美しいものを求めて国境を超えてきた強者のおばさんY子。
「そうそうウクライナと言えば、この前テレビのウクライナ問題で某軍事評論家が「ロシアには文化がない」って発言していてビックリしちゃった。本当にロシアの専門家なの?家の(おじさん)は真剣に聞いてたけど、ロシアの文化も知らないでロシアを語る人の意見聞いて大丈夫って思ったわ」とY子。
「確かにロシアに行って、もしエルミタージュ美術館を見た事があったら、ロシア人を非文化人なんていう発言なんてできないわ」とY子と独身時代に連れ立って海外で美術館めぐりを楽しんだおばさんN子。
「エルミタージュとルーブルならどっちがおすすめ?」
「絶対的にエルミタージュ」とY 子とN子。
「ルーブルじゃないんだ」と不満そうなブランド好きの新婚旅行先がフランスのS子。
「ルーブルも勿論いいわよ。でもルーブルの印象って蔵書の多い図書館。おおーこれも置いてるのか、これもあるのかって感じ。本物には写真にない感動と迫力が確かにあるけど、モナリザなんて沢山人が群がっているところにちょこんとあって、東京でみた時の方が感動したぐらい。でも、エルミタージュ美術館はお城のような建物の中で全ての絵が建物の中の最適な位置にキチンと置いてある。例えばルーブルでダビンチならTheダビンチっていう部屋がってあってダビンチを見るけど、エルミタージュでは地下の暗い古そうな、でもイイ臭いがしそうな木の柱にダビンチの最後の作品とも言われている「聖母子と聖アン」が囲いもされずサラッと掛かっている。嘘でしょ、地下のこんな所に、ダビンチ様に何たる扱いと最初思ったけど、薄暗い中で、仄かな灯りで後ろの木の淡い反射を受けて写し出されたその絵を見た時、ビビビビビーって体に電気が走ったようになったわ。神々しいたらありゃしない。そうそうこんな感じで見るべきねって感じ。絵にもオーラがあるなら美術館が絵のオーラを全開させてた。エルミタージュのような美術館を持つロシアって間違いなく超一流の文化国だって思ったわ。なんだかエルミタージュにもう一度行きたくなっちゃった」とY子。
ウクライナ問題でロシアを野蛮国と評価する軍事評論家とロシアは文化一流国だと評価するおばさん。どちらを信じるか?おば友は、美しいものに飢えたおばさんの直感を信じる。