【エッセイ】「人の嫌いなところはあっても、嫌いな人はいない」話
私には「嫌いな人」というものがいない。
人がどういう風に「嫌いな人」認定するのかはわからないが、私にもし「嫌いな人」がいるとしたら、それは理由のない、生理的に受け付けない人になると思う。
そんな人も別にいない。
別に、その人の「嫌いなところ」「好きではないところ」はある。
あと「苦手な人」はいる。
でも、それは「嫌いな人」には直結しない。
だって、人間はそこまで単純じゃないもの。
完璧な人間なんていないし、どんな人間だって必ず良いところと悪いところがある。性格も千差万別。
漫画のキャラクターのように何か特徴的な一個の性格を与えられているわけではないし、絶対的な正義も絶対的な悪も存在しない。
さまざまな要素が組み合わさって、感情や考え方が幾重にも重なって、ごちゃごちゃに混じって、ひとりの人間ができている。
そして、私たち他人は、その人の一部分しか見ることはできない。
それに、どれも「自分」であることに変わりはないが、相手によって表に出す「自分」というものも違ってくる。
だから、一つの二つの嫌なところとか、ちょっとした出来事とか、自分への利益不利益とか、それで単純にその人自身を「嫌い」なんてどうしたって思えない。
その人自身を「嫌い」なんて思えるほど、その人のことを知らないんだから。