広義のプロダクトマネージャーがアウトカムを出すために大切なこと13選
はじめに
こんにちは。IVRyでProductを担当している町田雄哉です。先日入社エントリーも書かせていただいたので、これまでの経歴やIVRyのどこに魅力を感じているのか等は、こちらを是非ご覧ください。
私はこれまで楽天、スマートニュース、IVRyで事業責任者やプロダクト責任者など様々なタイトル、役割を担ってきましたが、個人的にはそのときの組織において名称が異なるだけで、実際はほぼ同じことをやってきていると思っております。一言でまとめるなら、広義のプロダクトマネージャーとして事業を成長させるということをやってきました。
広義のプロダクトマネージャーって何ということについては、IVRy代表の奥西が過去に書いているnoteに非常にわかりやすく書かれているので是非ご覧ください。私もほぼ奥西と同じ捉え方をしておりまして、今度このテーマでもnote書いてみようと思っています。
最近、色々な場面で広義のプロダクトマネージャーって何なんだっけ?とか、どのへんにフォーカスするのが良いんだっけ?とか、どうしたらより大きなアウトカムを出せるんだっけ?とかを話す機会が増えているので、今回は、広義のプロダクトマネージャーがアウトカム(成果、効果)を出すために大切なことについて書いてみたいと思います。
今回は13選という形で13個の大切なことについて書いています。(本当は10選にしたかったのですが、絞りきれず)
大切なこと13選(順不同)
1. 本当に解くべき課題を特定することにこだわる
プロダクトマネージャーの一番の役割はどの課題を解くと最も社会や事業に対するアウトカムが大きくなるかを特定することだと考えています。
この解くべき課題の特定さえ正しくできれば、その課題をどんなプロダクトでどう解決するのかは自ずと出てくると思います。
どうしても、目の前のわかりやすい課題を解決しがちですが(目の前に課題があったら解決したくなるのは当然といえば当然)、無限に課題を解決できるわけではないので、そこの見極めは非常に重要です。
せっかく課題を解決したのに、大きなアウトカムがでないというケース、けっこうあると思います。決して無駄ということはないですが、どうせ同じ時間をかけて解決するのであれば、よりアウトカムの大きな課題を解きたいですよね。
では、解いたときにアウトカムが大きくなる課題とはどんな課題なのか。主には以下のような観点を意識してみると良さそうです。
対象ユーザーが多い課題
複数のユースケースに共通した課題
他に誰も解いていない課題
解決すると同時に別の課題も解決できる課題
なぜその課題を解くのか、その結果、どのようなアウトカムが生まれるのか、プロダクトマネジメントにおいて、まずはここにこだわるべきです。
2. 仮説検証の回数を増やすことで、予測精度を上げる
スタートアップや新規事業は常に新しいチャレンジをしているので、やってみないとわからないというものが多いは事実です。当然、わからないからやらないではなく、蓋然性は高くなくても、どんどんチャレンジしてみようという考え方は非常に重要です。
一方でこういったものの予測精度(≒成功確率)を上げることもプロダクトマネージャーがアウトカムを出していくにあたって、非常に重要なことだとも思っています。
予測精度(≒成功確率)を上げていくには、いくつか方法がありますが、特に仮説検証の試行回数を増やすという点が重要だと考えています。なかなか最初から高い予測精度を出すことは難しいですが、仮説をたて、実行し、検証していくというプロセスを繰り返していくと、知見や引き出しが増えたり、視野が広がったり、論点をよりシャープにおさえることができるようになったりすることで、高めていくことができます。
ただ、実際に自分が担当するプロダクトやプロジェクトで仮説検証のサイクルを回すとなると、ものによりますが1ヶ月から数ヶ月、長いものだと1年かかるかもしれません。そうなるとどうしても、実際に行うことのできる仮説検証の数は少なくなってしまいます。
ではどうしたら良いのか、これは簡単で、自分が担当しているものに限らず、様々なプロジェクトに関して、仮説設定、効果予測、実際の結果の検証のプロセスを一通りやってみれば(自分自身で考えてみて、結果を確認し、振り返ってみる)良いのです。これは、他社のプロジェクトでも良いし、過去のプロジェクトでも良いです、題材はいくらでもあります。それにより、仮説検証の試行回数を数倍、数十倍に増やすことができます。
3. 社内クレジットを貯める動きをする
プロダクトマネージャーが社内で関わるメンバーは非常に多岐にわたる(ほぼ全員?)ので、プロダクトマネージャーがアウトカムを出すうえで、社内のメンバーの信頼を得ることができているかは非常に重要です。
極端な言い方をすると、信頼を得られているかどうかで、自分自身がリードする事業を信じてもらえるか、メンバー全員が同じ方向を向いて、そこにコミットできるかが変わってきます。これができないことには、いくら正しい課題設定がされていても、アウトカムが出るのに時間がかかってしまったり、アウトカムが出ないというケースさえあるかもしれません。
なので、プロダクトマネージャーは社内での信頼を得るための動きを過剰なくらいするべきだと思っています。
自分が任されているミッションにコミットし、やり切ることによりアウトカムを出していくことが本質的な信頼獲得の手段ではありますが、まず意識すべきことはわかりやすく周りの期待を超えることかと思います。期待の超え方としては、期待より早くやる、期待以上の範囲をやる、期待より大きな成果を出すの3つが大きくあります。その中でスキル等に限らずすぐにでも取り組めることとしては、期待より早くやるという部分なので、特にここを意識することをおすすめします。(明日までのタスクを今日中にやるとか)
もちろんその他の基本的な部分のアクションにおいても信頼獲得は可能で、返信をとにかく早くする、障害などの緊急対応、担当が曖昧な案件を積極的に拾うなど、意識さえすれば誰にでもできる部分からやっていくと良いと思います。
また、社内での認知を上げることも非常に重要なので、全体への発信を積極的に行ったり、全社的なイベントや会議等で積極的にコミュニケーションをしていったり、より多くのメンバーと個別にコミュニケーションを行う等も必要です。
4. あえて明確なR&R(Role&Responsibility)をもたない
これに関しては、様々な考え方があると思いますし、基本的にはR&Rをしっかりと定義したほうが組織としてのパフォーマンスは上がるよねというのが定説ですよね。
ただ、広義のプロダクトマネージャーにおいては、ここはビジネス側の責任範囲、ここはプロダクト側の責任範囲とか変にわけることはしないほうが良いかなと思っています。
なぜなら、広義のプロダクトマネージャーの責務は、良いプロダクトを作り、世の中に届けるということだけではなく、プロダクトを通じた事業そのものの成功にあるからです。
事業の成功のためには、プロダクトアプローチでの課題解決も必要ですし、ビジネスアプローチでの課題解決も必要です。より広い視点、より多くのオプションを持ったうえで、プロダクトマネージャーが意思決定できるようになると、成功確率は大きく上がります。
変にプロダクトマネージャーのR&Rを細かく定めてしまうと、どうしても、そのR&Rを範囲内で課題解決しようとしてしまうので、アウトカムが最大化できないケースが多いので注意が必要です。
5. 部分最適になっていないか常に意識する
自分やチームのミッション、目標が明確であり、ミッション、目標へのコミットが強くなればなるほど、無意識のうちに部分最適になりやすいという罠があります。
アウトカムを最大化するためには、部分最適ではなく、全体最適的な視点が重要になってくるので、そこは常に意識を持ち続けたい部分です。
この視点を持つためには、より様々な観点での知見や経験、視野の広さ、視座の高さ等が求められます。
本当に事業全体や会社全体、社会全体で考えたときに、最適な意思決定ができているか常に考える必要がありますが、まずは、自分の1つ、2つ上のレイヤーの人の視点で考えてみる癖付けがおすすめです。
特定のプロジェクトの責任者の場合は、そのプロダクト全体の責任者の視点で考えてみる、プロダクト全体の責任者の場合は、CEOの視点で考えてみる等してみると、部分最適ではなく全体最適視点が持ちやすいですし、自然と自分自身の視座も上げることができます。
6. ユーザーの代弁者になる
ユーザーインタビューやフィードバック、クライアントとの会話などを通して、ユーザーの声を聞き、知ることは当然重要ですが、そこで満足しているとアウトカムに結びつきません。ユーザーが望んでいたから作ったのに、全く使ってもらえなかったというのはよくある話です。
ユーザーの声で出てくるものは、ユーザーが言語化でき、想像できているものだけです。実は本質的な課題は言語化できていないケースも多いですし、ユーザーが提案してくださる解決策もユーザーが想像できる範囲内での解決策なので、より本質的な解決策があるケースが多いです。
ユーザーの言葉を言葉通りに聞き入れるだけでなく、ユーザーのことを本気で知りにいく、ユーザーが考えていること、ユーザーの本当の課題を深く理解する(B2Bであれば、業務プロセスの理解が必須ですし、B2Cであれば、日常生活の理解が必須です)ことで、自分自身がユーザーの代弁者になることができます。それによって初めてプロダクト、事業の成功が実現できると思います。
これは、ユーザーとの関係に限らず、広い意味でのコミュニケーションの基本でもあり、メンバーマネジメント等においても共通です。日ごろから人とのコミュニケーションの中で、その人の考えていることや本質的な課題を想像、理解する癖づけを行うことでも、そういった力を養うことができます。
7. 選択と集中にとらわれない
一般的には「選択と集中」をすべきと言われることが多いですが、今回はあえて逆説的に書いてみました。そもそも日本においては、ジャック・ウェルチが言ったことの誤訳が広まってしまっていると言われておりますが。
今回は日本で一般的に使われている意味での「選択と集中」にとらわれないという観点で書いてみます。
たしかに、最も重要な解くべき課題が明確かつそれが単一な場合や、短期間で勝負をかけに行く必要がある場合などは選択と集中が重要ですが、私たちのようにスタートアップで新しいチャレンジをし続ける以上、より多くのことに小さくチャレンジし続けられるかも非常に重要だと考えています。
私たちは基本的に不確実性の高いチャレンジを行っている点に加えて、多くのチャレンジ機会があるので、そこはあえて絞りすぎず、小さな検証を繰り返しながら、より多くの新しい価値を世の中に届けるということにチャレンジしていきたいと考えています。
また短期視点だけだど、「選択と集中」は正しいことも多そうですが、中長期視点で考えたときには、将来、柱となりうる事業がたくさんある状態を作り上げることは非常に重要です。
(私個人の志向として、限られたリソースでいかに多くのチャレンジができるかということに面白みを感じるタイプなので、バイアスはかかっている自覚はあります)
8. 常識を疑いまくる
過去はこうだったとか、常識的にこうだとか、歴史や常識はまず疑うことから始めるぐらいがちょうど良いと思っています。
大抵のケースにおいて、今まで行われてきたことが完全な最適解ではないはずです。また、過去は最適解だったとしても、社会もユーザーも環境も常に変化し続けますし、今もなお最適解である保証はありません。
今までのやり方や常識が最適解ではないという前提に立ち、本当の課題は何なのか、よりアウトカムを出すためにはどうするべきか等を徹底的に考えることで、新しいアイデアを生み出すことができ、それが新しい常識になります。
一方で、論点の中で、そこまで重要でないポイントに関しては、過去の成功事例や定説を活用することで時間短縮もできるので、そこはうまく使い分けができるとベターです。
また、当然過去のものが最適解なケースもありますが、一度疑ってみることで、ただ受け入れるだけでは気づくことができなかった過去の最適解のより本質的な価値に気づくこともできます。
9. 朝令暮改することを恐れない
朝令暮改という言葉はネガティブな意味で使われることも多いですが、広義のプロダクトマネージャーは、事業、プロダクトの成功のために朝令暮改をおそれず、今できる一番良い意思決定をするべきです。
以前このような意思決定をしたので、本当は変えたほうが良いけど、メンバーの気持ちを考えると変えられないとか、サンクコストが発生してしまうので、変えづらいとか、あると思いますが、最終的にアウトカムが出ないことが誰にとっても最も不幸なので、そこは勇気をもって意思決定するべきです。
新しい情報は常に入りますし、環境も常に変動するので、朝令暮改はある意味当たり前だと考えています。プロダクトマネージャーは自分の過去の発言に良い意味で責任を持ちすぎず、今一番良いと思うことを言うべきです。また当然ですが、他の人が言ったことに対しても、今それが正しいかどうかで判断するべきで、過去の発言によって、判断を変えるべきではありません。
10. 最後の砦意識をもつ
広義のプロダクトマネージャーは事業、プロダクトの成長に責任を持ちます。自分で意思決定をする、自分が事業、プロダクトのクオリティ、価値を担保するといった意識が必要です。
誰かが助けてくれるだろう、多少問題を見逃しても誰かが代わりに気づいてくれるだろうといった考えは持たず、自分がやらないといけない、自分が見逃したら事業がうまくいかなくなるといった危機感も持ちながら取り組むべきです。
なお、これは事業責任を持つようになってはじめて意識することではなく、今現在自分がやっていることの大きさ、重要さに関わらず、全員が持つべき意識だと思いますし、その意識を持てば、必ず結果に結びつくので、まずは目の前のミッションに対して、最後の砦意識を持っていただければと思います。
この意識は必ず大きなアウトカムに結びつきます。
11. 大きな構想を描いた上で、小さく検証する
スタートアップ、新規事業においては、構想の可能性の大きさと検証のスピードが非常に重要です。
事業において、当然、最初が一番不確実性が高い状態ですので、いかに早く重要論点を検証できるかが極めて重要ですし、検証を行った結果、よりアウトカムを大きくするための方針転換の判断や、仮説の見直しを図ることもできます。
全て作り込んでから検証だと時間がかかりすぎますし、一方でどこが論点でなにをまず検証するべきかが明確ではないままスピード重視で検証しても、結果なにも判断できないということもありえるので、最終的な事業構想やプロダクト構想をしっかりと描いた上で、その構想の妥当性を判断するために検証必要な論点をいかに早く検証する方法を考え、実行できるかが重要になります。
12. とにかくやり切る
これは当然といえば当然なのですが、アウトカムを出すためには、これでもかというくらいやり切ることが重要です。
私の前々職である楽天のブランドコンセプトの1つに「GET THINGS DONE」というものがあるのですが、これは今でも自分の根本に根付いている考え方ですし、本当に強い会社、強い人はここの徹底度合いが段違いだとこれまでの経験から思っています。
あわせて、1で書いたように、何をやるか決めることも非常に重要です。自分自身が本当に信じることができないと、やり切ることもできないからです。
自分が決めたことを信じて、考えられることは全部考えるし、できることは何でもやり切るということが、アウトカムを出すにあたっては最も重要なことだと思います。
13. 圧倒的な成功体験を1つ作る
プロダクトマネージャーにとって、圧倒的な成功体験が1つあるかは、その後に大きな違いをもたらします。
これは自分がやったと自信を持って言える圧倒的な成功体験を得た時、そこに至るまでに積んだ多くの素晴らしい経験、成功によって得られる自信、そこからしか得ることのできない学び等が全て合わさって、人は一番成長すると私は考えています。これがあるとないとでは、その後の成功確率も大きく変わります。
そして、成功したからこその学びや勝ち癖っていうのもあると思っているので、これが1つあるのとないのとでは本当に大きな違いがあります。
最後に
今回は広義のプロダクトマネージャーがアウトカムを出すために重要だと思うことを13個あげてきましたが、いかがでしたでしょうか。
今さら言われるまでのことでもないよね、当たり前だよねということが多かったかと思いますが、1つでも参考になる部分や気付きとなる部分があれば幸いです。
今回ピックアップさせていただいた13個は、誰でもすぐに意識、アクションできることだと思っています。
一方で、アクションをいかに早く多く取れるか、いかに大きなアウトカムを出すことのできるテーマに多くチャレンジできるか、そして圧倒的な成功体験を得ることができるかという観点では、そういった機会が多い環境に身を置くことも非常に重要です。
その意味では、現在のIVRyには多くのビジネステーマ、プロダクトテーマがあることに加え、その1つ1つのテーマが非常に大きな事業になりうる、非常に大きなアウトカムを世の中に生み出すことができるものとなっており、広義のプロダクトマネージャーにとっては、最高の環境であると断言できます。
まだオープンにはしていない事業構想も多くありますので、是非一度お話しましょう!