原形質流動を見てみよう
高校生物で最初に学習することは、生物の最小単位である“細胞”についてです。生物の体は細胞が集まってできたもので、核,ミトコンドリア, リボソームetc.からできていると習った記憶のある方は多いと思います。細胞の構造(細胞小器官)を学習した後に、これらの細胞小器官の働きの1つに“原形質流動”がでてきます。生物の資料集によると、原形質流動とは「細胞の外形が変化せず、細胞膜より内側の細胞質が流動する現象」と記載されています。観察したときに見られるのは、葉緑体が細胞の中をグルグル回るというものです。(実際は、細胞内の物質が循環する現象なので、葉緑体に限られたことではありません。)
原形質なんて知ってどうするの?
原形質流動をもう少し詳しく説明します。原形質とは、細胞膜の内側全てを指します。元々は、細胞の中の構造が判明していなかった時代に、細胞の中身を指す言葉だったそうです。原形質流動とは、細胞の中の物質が動いているということをさします。
生物(理科)を教えていると「それ知ってどうなるの?」と言われることがよくあります。知らなくても生活はできますが、ちょっとした疑問が明らかになります。原形質流動の場合は、細胞内で物質が移動する仕組みがわかるようになります。例えば、遺伝子の働きの中に「核小体で作られたmRNAが、リボソームに移動します。」という現象があります。このmRNAがどのように移動するのかがわかります。
葉緑体が動く理由
細胞内には、沢山のタンパク質がありますが、その中の一部が線路のような役割を果たしています。その中の1つにアクチンがあり、細胞中にアクチンの繊維が張り巡らされています。このアクチンの繊維の上をミオシンというタンパク質が移動しています。「タンパク質が移動するの?」と思いませんでしたか?このミオシンは二股になっており、片方がアクチンと結合しています。ここにATPというエネルギー源となる物質がミオシンに結合すると、ミオシンの形が変わり、結合が外れ、もう片方がアクチンと結合します。これを繰り返すことで、ミオシンはアクチンの上を移動します。また、ミオシンには葉緑体などの物質と結合する場所もあるため、物質を輸送することが可能になっています。
自由研究に応用可能
細胞内の物質はほとんど透明です。色をつけることはできますが、色をつけてしまうと細胞が死んでしまいます。そんな中、葉緑体だけはもとから色がついているため、原形質流動の観察といえば、葉緑体の循環を観察することになっています。動画は、カナダモの原形質流動です。細胞の形に沿って葉緑体が移動しているのは、細胞膜に沿って伸びているアクチンを移動しているからです。ミクロメーターを併用すれば、回転の速度を計測できます。温度などによって変化するので、うまくいけば自由研究に応用することも可能かもしれません。
参考文献