漁港めぐり【その6】
小学校の頃から興味があったものの1つに深海魚があります。同じ魚類にもかかわらず、水族館や鮮魚売り場でみる魚とは全く異なる形をしていることと、深海という過酷な環境で生きていることに惹かれました。しかし、深海魚は水面に近づくと死んでしまう、食べても水っぽくて美味しくない、と聞かされて、しだいに別のことに興味を持つようになりました。
ここ2, 3年日本各地の漁港を回って魚を購入していると、以外と深海魚が売られていることを知りました。しかし、たまにしか取れないのか値段は高く、寄生虫を調べるには至りませんでした。
舞阪漁港
舞阪漁港は静岡県浜松市の南西にある漁港です。浜名湖の入り口と言ってもいいかも知れません。ここの漁港の船は遠州灘で底曳漁を行なっています。そのため、いわゆる深海魚とよばれる魚も水揚げされています。さすがに、シン・ゴジラのモデルとなったラブカみたいなのはいませんが、瀬戸内海ではみられない魚が売られていました。
この地域でも特別な許可がないと漁港で直接魚を購入する(浜売り)はできません。しかし、漁港の近所の魚売り場でかなり安く購入できます。今回最中を購入したお店の店内の様子を撮影したのですが、おばちゃんからSNSへの投稿を控えるように言われました。小さいお店に興味本位で殺到されたことがあったそうです。そのため、詳細は記述しませんが、舞阪漁港で検索すると最初のページにはでてくるお店です。
ユメカサゴ
名前の通りカサゴの仲間です。今回購入したものは、20cm前後と比較的小型です。瀬戸内民にとっては、珍しい部類の魚になります。
キンメダイ
これも20cmを少し越えたくらいの小型の魚です。この大きさでも和歌山(大阪のとなり)で購入したら1000円近くはしていたと思います。5匹くらいまとめてくれました。
アオメエソ
関東の方ではメヒカリとも呼ばれているようです。目が光の反射で緑色に見えるのが名前の由来です。成熟個体がまだ見つかっていないなど、わからないことが多いようです。
ニギス
シロギスに似ていることからつけられた和名ですが、分類的には全く関係ありません。個人的には、似てるとも思えないです。ニギスが属するグループの魚で有名(食用)なものを探してみましたが、ありませんでした。あつ森でたまに釣れる、デメニギスが同じニギス目の魚です。サケ目と近縁らしいのですが、“目”というグループは、ヒトが霊長目であることを言えば、どれだけ大きな分け方かわかると思います。
ユメカサゴ4匹, キンメダイ5匹, アオメエソ20匹弱, ニギス20匹弱で3800円でした。今回の調査の解剖は、同じく浜松市舞阪にある東京大学附属水産実験場で行いました。大学の実験場は、大学関係者以外も研究目的で使用することが可能です(事前の承認が必要)。これまでも、広島大学や私設の研究所を使わせてもらったことがありますが、今回一番印象に残ったのは、先生をはじめ院生の方が色々とサポートしてくれたことです。たびたび困ったことはないか聞きに来てくれましたし、愛知から静岡までの魚(深海魚)の情報を教えていただけました。まるで、良い旅館に宿泊したかのような感じでした。
検査の結果は?
さて、肝心の寄生虫ですが、全くいませんでした。私が専門としている単生類だけでなく、甲殻類や線虫などもいませんでした。かなり不思議な話です。寄生虫に感染するのには原因があります。例えば、アニサキス(線虫)であれば、クジラやイルカが筋肉中にアニサキスの幼虫をもったイカを食べることで感染します。私が専門にしている単生類は、感染した魚類が単生類の卵を撒き散らします。この卵が、魚が呼吸のために水と一緒に吸い込むことでエラに付着します。中には、皮膚に付着することで感染することもありますが、我々が風邪をひいている人の近くにいるとうつされてしまうのと同じ仕組みで、魚は単生類に感染します。深海は魚の密集度が低いと言われており、感染する機会が少ないことから深海魚の寄生虫が少ないのではないかと考えられます。しかし、今回のアオメエソは群れをつくるので、理屈にあいません。わからないことが多いです。
いつもでしたら、採集した魚は食べるのですが、今回は調理場所の確保ができなかったのと、時間的な関係で魚は全て実験所の方々にお裾分けしました。個人的には、アオメエソとニギスの調理法が気になったのですが、「アクアパッツァが一番」と実験所の教授が言っておりました。ネットで調べてみた所、アオメエソは干物にすることが多いようです。また、ニギスの調理法はクックパッドにけっこう上がっておりました。
私は検査終了後、ホテルの近くのバルで、浜松名物の餃子と研究対象にしているカマスの香草焼きでビールをいただきました。
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