【WIT】火蜥蜴の朝


あのモンスター退治騒動から数カ月。
ドレイク・フレマはある病室へと足を運んでいた。
点滴が落ちる音と、薬剤の独特のにおいが彼を迎え入れる。
その部屋のベッドには、同室であるブラック・シュヴァルツが横たわっていた。
彼は年の瀬の鍋騒動にも目を覚まさないまま、あの日からずっと眠り続けている。

医師に頼まれていた着替えを籠に入れ、代わりに空いた手にはタオルを手にする。置かれていた水差しでタオルを濡らし、横たわったままの彼の身体を軽く拭いてやる。
最早習慣になりつつある、ここ数カ月のドレイクのルーティンである。
彼のバディは異性だ。こればかりは頼むのも申し訳なかったのだろう。ブラックの担当をしている医者からの進言で、彼の身の回りの世話はドレイクが請け負うことになった。
ドレイク自身は勝手に彼を友人だと思っていることもあり、それを快く受け入れた。元々同室でもなければ関わるような相手でもなかったというのに情とは奇妙なもので、こうして空いた時間に足を通わせている。

額を拭いながら、あーこいつ髪伸びたなー、とか。大分痩せたし起きたら何食わしてやろうかなー、とか。そんな適当なことを考えるこの時間が、案外気が楽なのも事実なのだろう。

時折眉間に皺が寄る寝顔が、一体何を夢見ているのかなんて、彼は知り得ない。

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