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大学卒業後、同級生3人で起業。海外ベンチャー企業への道のり。

この記事では台湾の若者がベンチャー企業の起業への道のりについて紹介しています。就活ではなく、起業という挑戦をした台湾の起業家のインタビューです。


https://meet.bnext.com.tw/articles/view/46682を日本語に翻訳しています。



ポッドキャストは現在、非常に人気のあるメディア形式であり、Interactive Advertising Bureau(IAB)とPwCの報告によれば、伝統的なラジオに比べてポッドキャストはまだ未開発の市場の一部であり、近年では年間30%の成長率で市場拡大しています。さらに、Apple、Google、Spotifyなどの大手企業も、積極的にポッドキャスト市場に参入しており、この市場の発展可能性がとても高いことが示されています。

Firstoryの共同創業者兼CEOである于子軒左から(う しけん)は、自分自身とテクニカルディレクターの翁子皓(おう しこう)、チーフオペレーティングオフィサーの劉徳政(りゅう とくせい)の3人は、ポッドキャストが流行する前からこのメディア形式に魅了されており、ポッドキャストの市場の発展性に着目し、ポッドキャストクリエイターのコンテンツを支援し、Firstory Studioプラットフォームを立ち上げることを決意しました。

左から常務取締役の劉德政、テクニカルディレクターの翁子皓、CEOの于子軒 (侯俊偉攝影)

「私たちはポッドキャストターとリスナーとの間の距離を更に短くしたいと考えています。私たちは『サムネイルとオーディオファイルさえあれば、残りは全て私たちにお任せください』と強調します。」と、于子軒さんは控えめながらも自信を持ってFirstoryのサービス理念を述べました。

「一時停止」ボタンを繰り返し押す起業の道: 1年かけての調整、学生からプロフェッショナルへ。

于さんと翁さんは大学三年生の時、アメリカで行われたスーパーコンピュータ競技大会に参加しました、当時、彼らは合計50万件以上の暗号を解読し、2位に20万件以上の差をつけて圧倒的な成績で優勝しました。審査員からも高い評価を受け、Appleのアメリカ本社からの仕事のオファーを受けました。「当時優勝したことで、台湾も世界で勝負できることを改めて知ることが出来ました。それは大きな自信と原動力になりました。」と于さんは笑顔で回想します。
2017年、于さん、翁さん、劉さんの3人は清華大学(日本でいう京都大学)を卒業し、卒業直後に大手企業への就職捨て、起業する道を決意しました。「私たちは卒業と同時に起業を始めたため、仕事のプロセスの右も左もわかりませんでした。」と劉さんは述べ、起業の初期は明確で長期的な方向性が決まってなかったため、最初の1年は試行錯誤の繰り返しでした。共同創業者同士も何度も衝突し、調整し合いながら、協力モデルを見つける必要がありました。また、学生起業家が最も頻繫に直面する問題は「経験不足」であると指摘されていますが、それに対して、豊富な人脈と実務経験を持つ起業家と比べて、卒業と同時に起業するときには「学生身分をあえて利用し、時には間違いを繰り返しながらも、学生特有の若者の吸収力で迅速に経験を積むことができたと述べています。「私たちは自分たちの心構えが専門家になるまで1年かかりました。」と、劉さんは当時の起業初期を振り返りました。

意見の対立だけでなく、初期の未熟さも、製品の位置づけが常に変化する原因となりました。Firstory Studioは2018年3月に製品、「音声主体の友達作りアプリ」を発表しました。その月にクリエイター向けの「創夢市集加速器(優秀スタートアップ企業)」に選ばれましたが、ユーザーのリピート率が低かったため、運営モデルを「音声版のInstagram」に変更しました。しかし、同じ問題に直面し続け、CEOは次のように述べています。「当時、コンテンツ制作者とコンテンツ受信者との間の供給と需要のバランスの問題に対する解決策を見つけるのに苦労しました。」
学生創業者たちは常に初心を持ち続けて挑戦することを恐れないですが、多くの場合、「視野が狭い」という状況に陥ることもあります。チームはPodcast市場でのユーザーとクリエイターの真のニーズを把握するのに1年以上かかりました。2018年末になるまで、3人はアメリカのYC(Y Combinator、採用倍率は20倍)に選ばれたことが、起業の転機を迎えました。

創夢市集でのプレゼンテーションの様子  Firstory 提供


于子軒は当時を振り返りこう言いました。「当時はGoogleキャンパスの隣にあるAirbnbに滞在していました。大家さんの会社も去年YCに参加が失敗したと言っていたけれども『It’s all about process(全てはプロセスの一部)』。なぜここに来たのか、自分たちを信じろ!と言われました。」大家さんから受けた励ましの言葉により、3人は台湾に戻り、自分たちの製品と計画を再構築し、声のコミュニティプラットフォームでの活動を続けることを決意しました。

「サムネイルと音声ファイルがあれば十分です」:自動配信とデータ収集サービスを提供

Firstoryという音声コミュニティプラットフォームをより多くの人に知ってもらうために、2019年3月から、3人はコミュニティプラットフォーム上のコンテンツをPodcast番組に制作し、7月にDcard(台湾のネット)に共有したところ、その番組は急速に人気を博し、Spotifyの週間トップ20まで瞬時に上昇しました。これは3人にとって大きなインスパイアをもたらし、なぜFirstoryをクリエイターとすべての音声プラットフォームの距離を最短距離にしないか、という考えを生み出しました。

今までの、Podcastは制作から公開までの手順が複雑で、特に公開前に、3人のホスティングサービス(ブログの投稿と同様の概念)は手動操作が必要で、クリエイターにとっては大変な作業でした。クリエイターの声がより多くの人に届くことを理念に、Firstory Studioはクリエイターに対してワンストップのサービスを提供し、2019年8月にはホスティングサービスの提供も開始しました。「サムネイルと音声ファイルがあれば、残りはすべて自動で処理されます。」

ホスティングサービスに関して、Firstoryのシステムは迅速にさまざまな音声プラットフォームをサポートし、プログラム関連のコンテンツをFirstoryにアップロードするだけで、自動的にさまざまなPodcastプラットフォームに公開されます。それによって、クリエイターの声ができるだけ多くの人に届けられるようになりました。さらに、Firstoryから公開された番組は、各プラットフォームでのパフォーマンスデータを含む、リスナーの年齢、性別、国の分布などのデータを取得でき、これは他のホスティングサービスにはない技術です。

投げ金(ドネーション)とサブスクによる収益を実現する技術


Firstoryは、コミュニティに関して、創作者のためにウェブサイトを自動的に作成し、そのウェブサイトには個々のエピソードと評価を表示するだけでなく、コメントも含み、創作者とファンの間の交流を深めるのに役立っています。他のPodcastプラットフォームが主に広告収益に依存しているのに対して、Firstoryは各種主要なプラットフォームとLine Pay、Google Payなどとの統合技術を実現し、創作者がアカウントを連携するだけで、スポンサーリンクが生成され、リスナーはオンラインで創作者を応援できるようになりました。そして、Firstoryは収益の20%を利益として取ります。


Firstoryのホームページ  Firstory提供


公式ウェブサイト上のクリエーターの定期購読料金について、于子軒は次のように説明しました。「私たちは消費者が自分の創造的な権利が保護されていることを知ることができるようにするために、この金額を設定しました。ただ、この金額は初心者のクリエーターにとっては高すぎるかもしれません。そのため、現時点(2020年)では無料でサービスを提供しており、将来的に徐々に料金を導入する予定です。」

フィードバックとユーザーのニーズを把握するために、Firstoryは定期的にクリエーターのコミュニティ交流を開催し、サービスを継続的に改善しています。現在(2023)、Firstoryのユーザーは13,000人を超えており、将来的にはモバイルアプリを発売し、リアルタイムのコメント機能を強化していく予定です。これにより、ポッドキャストの制作のハードルが低くなり、コンテンツの品質が向上し、クリエーターは自分のストーリーをより多くの人と共有できるようになります。

一問一答

Q: この社会にどのような価値を提供し、どのような問題を解決したいと考えていますか?
A: 私たちは、すべての人が自分のストーリーを持ち、聞いてもらい、見てもらいたいと考えています。現代の世界では、クリエイターは文章を書き、インスタグラムに投稿し、YouTubeを使い、TikTokで表現できます。Podcastは、音声で自己表現したい場合にとてもいいSNSです。かつてPodcastの使い方は複雑でしたが、今ではFirstoryを使えばクリエイターとリスナーの距離は非常に近いです。

Q: 現在の市場状況を考えると、貴社のサービスの競争上の利点は何だと思いますか?
A: 伝統的なホスティングサービスは非常にシンプルですが、Firstoryはクリエイターが音声ブランドを一元管理できるようにワンストップサービスを提供します。クリエイターは音声ファイルとカバーアートを準備するだけで、Podcastを制作し、専用のウェブサイトを持つことができます。これは従来の手動アップロードが必要なホスティングとは大きく異なります。Firstoryは100以上のリスニングプラットフォームに自動的に配信し、支払い、コミュニティ、データ、評価なども自動的に統合します。

Q: 起業から学んだことは何ですか?また、起業してから今までの経験や感想を簡単に教えてください。
A: 起業パートナー間での対立があったこと、オープンで意図的なコミュニケーションや効果的な議論が非常に重要であることを学びました。限られたリソースとい不確実な状況での意思決定方法、プロジェクトを確実な行動と実験に分割し、チームが決定した目標に向かって進む方法を学びました。初めは曖昧で実際出来るかわからないので、きれいごとのように聞こえるかもしれません。以前の大学で受けた起業のクラスと比較して、実際の起業は2、3年後になって初めて、以前はあまりコミュニケーションが得意ではなく、着実に小さなことから行動や計画する能力がなかったことに改めて気付きました。



Firstory(ファーストーリー)は台湾発のポッドキャストホスティングサービスです。 Firstoryでは、番組をさらに効率的に管理するサポートや、収益化サービスを提供しています。
台湾でのユーザーは1.3万人以上になり、台湾の人気占いYoutuber 唐綺陽(Youtube登録者数104万人)もFirstoryを通してポッドキャストを配信しています。




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