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観る将の気持ちが分かった日

今日の叡王戦第3局を見ていて

 普段、結構プロの棋戦をアベマなどでライブで見ることがあるのですが、今日の叡王戦第3局藤井聡太叡王と伊藤匠7段の将棋は鳥肌ものでした。
 私は丁度勝負が佳境になる中盤の終わり~終盤の入り口あたりから終局までをライブで観戦していました。

 将棋は、角換わり腰掛け銀の出だしから、非常に難しい手に汗握る終盤に突入しました。途中まで藤井叡王の有利な展開で進んでいましたが、伊藤7段のものすごい迫力の攻めの前に一手少し甘い受けを選んでしまい、そこから伊藤7段が逃すまいと食いついていく展開がすさまじかったです。

両対局者の感情がもろに出ていた将棋

 

AIでも最善を見つけるのが難しい超難解な終盤戦

 問題の局面が上図です。この局面を水匠にかけてみましたが、なんとAIが出した最善手は藤井叡王の指した手と同じ▲8七銀打でした!しかし、abemaで見ていたらこの▲8七銀打は次善手で本当の最善手は▲7九桂のようです。▲7九桂と打っていれば難しいながらまだまだ粘る余地はあったようですが、▲8七銀打から本譜のように進むと評価値が逆転していきました。
 それにしても、私のPCのスペックもそう悪くはないと思いますが、それでも見つけられないほどの難解な局面ということです。
 
 この時伊藤7段は、鋭い気迫のこもった目線で時折藤井叡王の方を睨みつけ凄まじい闘志が画面から伝わってきました。もう「逃がさんぞ」という声が聞こえてきそうでした。

 その後形勢が苦しいとみた藤井叡王は、相手が考えたい局面では即指しで時間攻めをしつつ、さらに相手が判断に迷うような手順を繰り出し何度もミスを誘うような罠を仕掛けていきました。しかし、秒読みの中での終盤の難所であるにもかかわらず伊藤7段は一度も致命的なミスを犯すことなく叡王を追い詰めていきます。

 その後の藤井叡王はまだ対局中だったにもかかわらず、悔しいという感情が表情に滲み出るようになり、最後はやっとの思いで振り絞って出した声という感じで「負けました。」と告げました。

こんなに将棋を見ていて心を揺さぶられたのは初めて

 オリンピックのマラソンで日本人が金メダルを取った時に涙腺が緩んでしまったことなどありますが、スポーツではなく将棋でこんな熱い感情になったのは初めてでした。将棋は頭脳のスポーツと言われることもありますが、まさにその通りだと思います。

 将棋はスポーツと同じく見るものを感動させる何かがあると今日確信しました。近年観る将の人が増えているということで、指さないで見るだけで何が楽しいのだろうという気持ちも少しありましたが、観る楽しさを始めて感じられた将棋でした。本当に両対局者には見ごたえのあるいい将棋をありがとうと言いたいです。

 あともう一つ気づいた事は、人間の最高峰のレベルの高さです。もうAIと人間はまったく勝負にならないレベルと一般には言われていますが、少なくともAIでは発見不可能な手を人間が指す可能性もまだ十分にあるという事が分かりました。以前も藤井8冠がAIの上を行く手を指したと話題になったことがありましたが、本局でもそれが見られました。

 人間のトップレベルはAIにも引けを取らないくらいの正確性で指すことができるということにも感動しました。まだまだ、人が指す将棋も捨てたものではないですね。

 これからは指す方でも楽しく指したいとは思いますが、プロ将棋の観戦でも楽しみを見出したいですね。是非また第4局では熱戦を期待しています。
 
 最後に蛇足で・・・。今日のタイトル画像がロールケーキなのは、単純に叡王戦のスポンサーである不二家つながりということでした。(笑)


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