見出し画像

バレンタインを忘れていた

スーパーの特設売り場を見て、ああそうか、そういえばそんな季節だなと、思い出した。

渡す相手がいないと、こんなにも見事に忘れるものなのかと、ある種の感心を覚えた。

彼とうまくいっていたら、チョコをあげられたのだろうな。どんな風に喜んでくれただろう。ふと、そんなことを考える。

今年、彼は、愛する誰かからチョコをもらうのだろうか。…心がちょっとキュッとなる。

職場では、課の女性が私一人になったのをいいことに、義理チョコ制度を廃止した。

お返しはお気遣いなく、とは言うものの、やはり何かしらお返しをくれる。なんというか、そういう、見返りがあることを分かっていて配るのが、どうも嫌なのだ。

とは言え、大好きな彼が相手であれば、どんな表情で、どんな言葉で、どんなお返しをくれるだろうかと、それもまた楽しみで、バレンタインはきっとあげたくなるのだろうなと、ありもしない想像をしてしまった。

…めっちゃ好きやん。こんな好きやのに、なんで自分から振ったんやろう。私、めっちゃアホやん。

情けなくて笑ってしまう。いや、泣けてくる。会えないことを、どうして?と嘆くから悲しいのであって、会えないことをデフォルトにしてしまえば、もはや感情が揺らぐこともなくなるのでは。哲学者みたいなことを考え始める私。

今年のバレンタインは、一旦気付いてしまったが、気付かなかったことにして、記憶から抹消することとする。

おわり。

いいなと思ったら応援しよう!