言葉②
電車に乗っていると、多くのサラリーマンが視界に入る。
鞄を持って、出勤する人。でも彼はなにやら貧血症のようだ。暗そうな顔をしている。皆、病んでいる。何かを皮肉りながら、同時に諦めている。
乗客全員、スマホに顔が吸い寄せられている。
異様な光景?いや、恐怖感なんてない。ちょっと面白いなと思う。でも何か違う。
何を皆見ているのだろう。Tiktokだろうか。僕は高校生だけど、もうZ世代にはついていけない。なんでも略してしまうのはその分身軽になるためだろうか。
「私」を「わ」と言ってみたらどうだろう。
なんか平和な世界になりそうだ。
……なんか今日は言葉が出にくい。
いつもより疲れているからだろうか。なんか気を抜くと村上春樹のような文体になってしまいそうだ。
意味のないことを言うのは難しい。何かを言った瞬間、意味が付与されてしまう。
鳥の囀りになりたいと僕は思う。鳥の言葉はわからないが、なんか感じてしまう。
劇的な瞬間。これでもまだ、意味を削ぎ落とせない。
格言集の表紙をビリビリに破いて、糊で引っ付けて、そこを自分の墓にしてみる。
意味不明だが、そのシーンを想像してみる。無理だ。思い浮かべることができない。
試しに、コンプラ社会の問題について考えてみる。電車でコンプラ社会について考える高校生を演じるのだ。存在をアンバランスにする。
ちょっとだけ書いてみよう。
【コンプラ社会とはすなわち、「多様性の促進」から生まれる「不自由」である。共通前提をなくした人間のアノミーの噴き上がりが引き起こす現象だ。そもそも多様性とはagree to disagre(分かり合えないことをわかりあう)であり、多様性を否定できる権利に属する】
なんか薄い。何も考えず、書いているからだろう。もうちょっと専門用語を増やせばいいのかな。ノイジーマイノリティとリベラリズム的共生原理とか?
電車に乗っていると目立つのは、やはりスマホだ。出発と同時に、示し合わせたように、皆スマホを出す。これじゃまるでスマホは人生の主役じゃないか。確かに人間が世界の主役であったことなんてなかったけど、プライドまで捨ててしまったら困る。
でも「幸福な奴隷」という言葉もあることだし、ほっとけばいいだろう。人間は言葉の魔術性を知り尽くしている。だからそれに自分で酔うこともできる。
考えが長すぎる。やっぱり、早朝の電車はダメだ。ガタンガタンと体が左右に揺れる。この動きはダメだ。
それらしいことを書いてみたは良いけれど、先思いつかない。元々、執筆生活に向いていないのかもしれない。
白黒の電車を見ると、『東京物語』を思い浮かべる。ありもしないノスタルジーに浸って後に、次に岡崎京子が思い出される。この連想に繋がりがあると思うのなら、何かしら不幸なんだろう。
やっぱり今日は調子が悪い。惰性で描き続けることほど恥ずかしいことはない。
あ、着いた。それではまた次の機会に。
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