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保護犬タカナの事 2⃣
施設の方にトライアルを諦めた旨を伝え、連れ帰ったときと同じくタカナを車で保護犬施設まで送っていく。
当日、車に乗り込んだタカナは、座席の上で背中を伸ばし、お座りをしている。そしてまっすぐ前の道を見据えている。中型犬ということもあり、その姿はまるで正座をした物憂げな人間のように見える。
その姿に私はまた、迷い始める。現段階で彼女が何か特に酷いことをした訳ではない。ビニール袋を見るとグチャグチャにする癖も、こちらが工夫すればなんて事はない。ましてや心配していたように猫に吠えただけで追いかけて噛んだ訳でもない。
信号で車を止めるたびに私はタカナの横顔を見る。やはり真っ直ぐ前を見て正座をしている。なんだかタカナが善人で、ますます自分が悪人に思えてくる。
しかし、自分がいい人だと思いたいだけの気持ちで引き取ることが最もしてはいけない事ではないか。
保護施設に着くと施設の皆を見て、嬉しそうに尻尾を振っているタカナ。いっそ私を嫌っていてくれていたらと彼女からそっと離れようとした時、気配を感じたタカナが私の足元でお座りをするとジッと目を見つめてくる。
『当然、私達又ドライブして帰るんですよね』と訴えてくる。
以前からの知り合いの保護施設の方が「どんないい子でも、居場所が変わる事はストレスになります。落ち着けば極端な行動は少なくなっていきます。タカナはここで猫に危害を加えたこともありません。もう少し様子を見てはどうですか」とアドバイスをくれた。
どんな優しい犬でもストレスが掛ったり、飼い方が良くなければ、問題犬になるのは確かに知っている。もうそう言われると私を信頼してくれているタカナを置いては帰れないとそう思ってしまった。
今度はしっかりイニシアチブが取れるようにタカナと向き合おう。心なしか嬉し気に正座をするタカナを連れて家へと戻った。
結局のところ、タカナは猫と仲良くしたかっただけで、子供を産んだことがある様子のタカナはただただ優しく、猫に対しても面倒見がよかった。猫と寄り添って寝る姿を見た時は嬉しくて施設の方にも報告した。
ただし、ビニール袋を見ると振り回し、中身ごとぐちゃぐちゃにする癖は
とうとう治らないままなのである。