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『現代俳句』2024年4月号

 少し肌寒い日もあったものの桜の季節もあっという間に終わり、夏日になってしまいました。季節の移ろいという言葉の意味がやや怪しくなる今日この頃。スムーズに季節が移ろうことなんてもう難しいのかもしれません。夏日の次の日に急に寒くなったり、雨が降っているのにあたたかかったり。
 そうこうしているうちに梅雨が来て「もう夏ですね」なんて言っているんですから、いやはや、季節に順応するってなかなか難しいものです。

 というわけで、今月も現代俳句を読んでいきます。

百景共吟

うすらひは恋を映さず薄く藍  堀田季何

 「うすらひ」と恋の取り合わせがぴったりだと思います。恋を「映さず」とあるので、うまくいっていないのか、叶わぬ恋なのか、相手との距離を感じさせます。下五の「薄く藍」という色合いの着地も切ない恋の演出に一役買っていて好きでした。

薄墨桜

告白というふくざつを桜散る  椎名鳳人

 直前に恋の話をしたので、この告白も恋と読んでもいいような気がしますが、告白というのは実に多種多様でして……しかも、「ふくざつ」とあればなおさら、一体なにがあったのかと勘ぐってしまいます。「桜散る」という季語の着地も、複雑さの中で散っていく、複雑そのものでもある、という読み方もできるかな、と思います。恋であろうとなかろうと、切実な思いというものをどこか美しく感じてしまう、人間の業であります。

新作現代俳句十句

差し出す  神野紗希

愛足りて白菜くたくたに甘い
 白菜、おいしいですよね。甘くて大好きなんです。正直、時期は問わず食べたいですが、寒い冬にお味噌汁やシチューに入っているととてもしあわせな気持ちになります。この句の好きなところは、その甘い白菜は「愛足りて」だからってこと。自分で作ってもよし、誰かの手料理でもよし。そこに愛があるんです。スイーツの甘さじゃないというのも大事。甘さって、200種類くらいありそう(どっかで聞いた)

翌檜篇(60)

人間であること  渡邊慧七

新米をよこす父親らしき人
 誰なんだ……「らしき人」ということは、父親ではないのでしょうか。これは作中主体の心の持ちようだと思いますが、とは言え「らしき人」と言われているけれども、新米をくれるような人なんですね。わざわざ新米なところに愛情を感じます。

自然と共に  杏星杏忍

長旅で君も私も疲れた月
 着地点の「月」が好きです。長旅に疲れ果ててすっかり夜なんですね。「君も」の君が誰なのか、あるいはなんなのか(もしかしたら連れていたのは犬や猫かもしれないし、ぬいぐるみかもしれない)も考えるのが楽しいです。
 余談ですが、略歴に2010年生まれとあり、極め付きに「俳句をはじめたのは物心ついたときから」とありました。全然先輩やん……と思いました。こういう先輩がたくさんいます。ありがたいことです。

風船持たされて  新谷桜子

カルピスの牛乳割りや毛糸編む
 カルピスを牛乳で割ったことがないので、その味はいかばかりかわかりませんが、いずれにせよ割ったか割ってないかわからない色合い。毛糸を編むあいだに休憩がてら飲んだのでしょうか。牛乳割りがパワーフレーズすぎて笑ってしまいました。おだやかで好きでした。

地区協だより

大分地区篇 安達攝

 大分地区では、地区会員というものがあり、年会費2000円、同一世帯の家族会員は半額という制度があるそうです。もちろん、本部会員になっていただけるに越したことはありませんが、超結社の句会やイベントが絶えることがなければ御の字ではないかと思います。
 というのも、この地区協だよりを読んでいる話をしていて、「関西は府県ごとにないですよね~」なんて軽く言ったら「アクセスいいからね」と返ってきまして。そ、その通りだ……となりました。確かに明石から奈良、近江八幡から神戸、京都から和歌山なんて移動は確かに大変ではあるんですが(実際、わたしも伊丹から移動するとなると、京都や奈良でやや遠く感じる距離感)、駅まで車じゃないと、とか、出先でバスがない、とか、そういうことはほぼないんですよね。
 なので、地区協のいいところは、そういうアクセスだったり、コミュニティの規模だったりの小回りがいいというところにあると思うので、独自路線をガンガン突き進んでいただきたいですね。あ、関現俳もがんばってます!(突然のアピール)

 というわけで、今回はこの辺で。
 巻末に全国大会の応募用紙がついていました。もうそんな季節か……と思いました。今年は会場が奈良なので、投句しようと思います。夏までにいっぱい作るぞ~!
 最後までお付き合いいただきありがとうございました。また次回。

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相田 えぬ
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