令和6年度食品表示懇談会 概要
令和6年度食品表示懇談会 概要(本文5,615文字)
消費者庁は、令和6年12月13日に「令和6年度食品表示懇談会」を開催しました。
<趣旨>
現在、コーデックス委員会の食品表示部会において、「技術革新を利用した食品情報の提供に関するガイドライン」の策定に向け、国際ルールづくりの議論が進んでおり、このような国際的な議論に我が国としても能動的に対応していく必要がある。
政府としても、「消費者基本計画工程表」において、「合理的でシンプルかつ分かりやすい食品表示制度の在り方について、国際基準(コーデックス規格)との整合性も踏まえながら、有識者から成る懇談会において順次議論していく。」としていることから、「令和5年度食品表示懇談会」を開催し、今後の食品表示が目指していく方向性について、中長期的な羅針盤となるような食品表示制度の大枠の議論を行った。「令和6年度食品表示懇談会」では、個別品目ごとの表示ルールと食品表示へのデジタルツールの活用について議論を行っていく。
<議題>
1. 令和6年度食品表示懇談会開催要領
2. 令和5年度食品表示懇談会の取りまとめについて
3. 食品表示へのデジタルツール活用検討分科会について
4. 個別品目ごとの表示ルール見直し検討分科会について
5. 食品表示基準改正について
6. その他
<令和5年度の取りまとめ>
令和6年3月開催の食品表示懇談会にて公表された令和5年度食品表示懇談会の取りまとめは次の通り。
令和5年度食品表示懇談会では、食品表示法の一元化や国際整合性の確保を目指し、加工食品、生鮮食品、添加物の表示基準について議論が行われた。特に、消費者の健康保護と公正な食品貿易を目的とするコーデックス委員会の基準に基づき、表示内容の簡素化とデジタルツールの活用が検討された。また、食品衛生基準行政が厚生労働省から消費者庁に移管されることを踏まえ、合理的で分かりやすい表示制度の構築が求められた。懇談会では、消費者、事業者、学識経験者からの意見を集約し、今後の食品表示制度の方向性について中長期的な視点から議論が行われた。特に、個別品目ごとの表示ルールの見直しや、デジタルツールを活用した情報提供の拡充が重要な課題として挙げられた。
<議事概要>
1. 食品表示へのデジタルツール活用検討分科会について
1-1. 基本方針
デジタルツールを活用することで、容器包装への表示に代わる代替的な手段として情報提供を充実させることが目指されている。これにより、消費者が必要な情報に容易にアクセスできるようにすることが目的である。
1-2. 技術的な課題
デジタルツールの活用にあたっては、情報の管理方法や情報を伝達する媒体、デジタルを活用した制度の運用方法など、技術的な課題が多く存在する。具体的には以下の点が議論されている。
1-2-1. 情報の管理方法
・ 食品表示データのフォーマットの統一が必要である。データの諸規格が統一されることで、データの利用が容易になる。
・ 公開されるデータの利用条件(ライセンス形態)も統一されることが望ましい。
・ データの鮮度や正確性を担保する仕組みの導入が求められる。
1-2-2. 情報の伝達媒体
・ データの流通方法として、集約方式(データを収集し再配布する方法)と分散方式(食品製造事業者が個別にデータを公開する方法)の2つの方式が検討されている。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、最適な流通方法を決定する必要がある。
・ JANコードが加工食品の識別子として広く利用されているが、食品表示情報を提供する目的では一意に識別することができないため、関係省庁と連携して識別方法を検討する必要がある。
1-2-3. デジタルツールの運用方法
・ デジタルツールを活用した制度をどのように運用していくかについても議論が行われている。例えば、データの正確性を確保するための仕組みや、データの流通を効率的に行うための仕組みが必要である。
1-3. 国際的な対応
国際的な議論に我が国としても能動的に対応していくことが求められている。特に、コーデックス委員会におけるデジタルツールの活用の議論を踏まえ、容器包装に表示すべき事項とデジタルツールによる情報提供で代替を許容すべき事項について検討する必要がある。
1-4. 消費者への情報提供
消費者への情報提供を充実する観点から、デジタルツールを用いた情報提供の際には、以下の原則に基づくことが求められる。
1-4-1. アクセスの容易さ
・ 消費者が容易にアクセスできるよう、情報は明確で目立つものであり、かつ読みやすく提供されるべきである。
・ 情報が技術を使用して提供される場合には、消費者への情報にアクセスするための料金が発生しないようにする必要がある。
1-4-2. 情報の正確性
・ デジタルツールを使用して提供される食品情報は、他の言語で表示される場合も含めて、包装食品のラベルや表示上で提供される情報と矛盾しないものでなければならない。
・ 義務的食品情報がデジタルツールの使用のみによって提供される場合には、その情報は流通、保管、小売及び使用の意図された条件下において、食品が安全で販売、消費または使用に適する状態を保つ期間にわたり使用可能でなければならない。
1-5. 今後の進め方
今後の進め方として、まず技術的な課題について議論を行い、その後、消費者への情報開示を充実する観点から、容器包装上の表示の一部を代替する手段としてデジタルツールにより情報提供を行う場合の議論を進める予定である。
2. 個別品目ごとの表示ルール見直し検討分科会について
2-1. 基本方針
個別品目ごとの表示ルールは、横断的な基準に合わせる方向で見直すことを基本としつつ、食品ごとの個別の事情や制定の経緯、消費者の要望等を踏まえながら検討することが求められている。これにより、消費者にとって分かりやすく、かつ実際の利用に即した表示が実現されることを目指している。
2-2. 定期的な確認
表示基準がその時々の情勢に照らして妥当なものであるかどうかを定期的に確認することが重要である。これにより、時代の変化や新たな消費者ニーズに対応した柔軟な表示ルールの運用が可能となる。
2-3. 具体的な検討事項
2-3-1. 表示内容の見直し:
・ 各食品の特性に応じた表示内容の見直しを行う。例えば、冷凍フライ類の「衣の率」や冷凍ぎょうざ類の「皮の率」、チルドハンバーグステーキの「肉の含有量」など、品質を判断するための個別ルールが議論されている。
・ 新たに管理すべき情報やその管理方法、提供手段についても議論を進める必要がある。
2-3-2. 技術的な課題:
・ 情報の管理方法や情報を伝達する媒体、デジタルを活用した制度をどのように運用していくのか等、技術的な課題についても議論が行われている。
・ 例えば、デジタルツールを用いた情報提供の際には、データの正確性や鮮度をどのように担保するかが重要な課題となる。
2-3-3. 国際基準との整合性:
・ 国際的な表示基準との整合性を図ることも重要である。特に、コーデックス委員会での議論を踏まえた対応が求められる。
・ 整合性の確保により、輸出入における表示の一貫性が保たれ、国際的な信頼性が向上する。
2-4. 実施時期と経過措置
各改正事項の施行時期や経過措置期間の終了時期を極力合わせるなど、実施時期の予見可能性を高めるための方策も含めて議論が進められている。これにより、事業者の負担を軽減し、スムーズな移行が可能となる。
2-5. 消費者への周知
食品表示を正しく活用してもらうために、制度の周知普及を実施することが重要である。消費者が新しい表示ルールを理解し、適切に利用できるよう、広報活動や教育プログラムの充実が求められる。
2-6. 今後の進め方
各検討事項については、各分野の専門家からなる議論の場を設けて検討を進める。令和6年度からは、デジタル活用と個別品目の表示ルールの2分科会を設け、より具体的な議論を行う予定である。
3. 食品表示基準改正について
3-1. 想定される食品表示基準改正の事項(案)
・ 栄養強化目的の添加物の表示義務化
令和2年3月31日に公表された「食品添加物表示制度に関する検討会」の報告書を踏まえ、一般用加工食品の横断的義務表示における添加物の免除規定のうち、栄養強化の目的で使用されるものに関する記述を削除する。対象は第3条第1項、別表第4「個別の表示ルール(名称、原材料名、添加物、内容量)」、別表第24「一般用生鮮食品の個別的表示事項」である。
・ 栄養素等表示基準等の改正
令和6年10月11日に公表された「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)を踏まえ、栄養素等表示基準値等を改正する。対象は別表第9「栄養成分及び熱量の表示単位、測定法、許容差の範囲及びゼロと表示できる場合の含有量」、別表第10「栄養素等表示基準値」、別表第12「栄養成分の補給ができる旨の表示の基準値」である。
・ 個別品目ごとの表示ルールの見直し
令和5年度食品表示懇談会の取りまとめに基づき、横断的な表示基準が策定されてから本格的な見直しを行っていない「個別品目ごとの表示ルール」について、令和6年度に開催された「個別品目ごとの表示ルール見直し分科会」における業界団体からのヒアリング結果を踏まえ、食品表示基準を見直す。対象は別表第3「食品の定義」、別表第4「個別の表示ルール(名称、原材料名、添加物、内容量)」、別表第5「名称の規制」、別表第19「追加的な表示事項」、別表第20「表示の様式」、別表第22「表示禁止事項」である。
3-2. 栄養強化目的で使用した添加物の表示について
3-2-1. 栄養強化目的で使用した添加物の表示に関する規定
栄養強化のために添加されるビタミン、ミネラル、アミノ酸等は、食品添加物として取り扱わない国が多く、FAO/WHOも食品添加物の定義に含めていない。日本では、栄養強化目的で使用する場合は栄養成分として取り扱い、表示が不要とされている。ただし、特定の食品(農産物漬物、ジャム類、乾めん類など)については表示が必要である。
3-2-2. 食品添加物表示制度に関する検討会について
検討会は、食品添加物表示制度の在り方を検討するために設置され、平成31年4月から令和2年2月までに9回開催された。検討項目には、無添加表示、栄養強化目的で使用した添加物の表示、普及・啓発・消費者教育、一括名・簡略名・類別名表示、用途名の表示が含まれる。検討会は、事業者の実行可能性を確保しつつ、消費者が求める情報提供を可能とする制度設計を目指した。
3-2-3. 「食品添加物表示制度に関する検討会報告書」の概要
報告書は、消費者基本計画を踏まえ、令和元年度に有識者による検討会で取りまとめられた。主な内容は以下の通り;
■無添加、不使用の表示・・・ 消費者の誤認を防ぐため、「無添加表示」に関するガイドラインを策定。
■栄養強化目的で使用した添加物の表示・・・ 原則全ての加工食品に表示する方向で検討。
■普及、啓発、消費者教育・・・ 行政機関、消費者、事業者団体が連携し、対象世代に応じたアプローチを実施。
■一括名、簡略名・類別名表示/用途名の表示・・・ 「人工」、「合成」の用語を削除し、消費者の誤認を防止。
3-2-4. 食品表示基準の改正(案)
改正案の概要は、一般用加工食品の横断的義務表示における添加物の免除規定のうち、栄養強化の目的で使用されるものに関する記述を削除することである。対象は食品表示基準第3条第1項、別表第4、別表第24である。具体的には、栄養強化目的で使用される添加物の表示省略規定を適用しないように改正される。これにより、農産物漬物、乾めん類、ジャム類、即席めん、マカロニ類、ハム類、ソーセージ類、ベーコン類、魚肉ハム及び魚肉ソーセージ、ウスターソース類、乾燥スープ、食用植物油脂、マーガリン類、調理冷凍食品、チルドハンバーグステーキ、チルドミートボール、果実飲料、豆乳類などの食品において、栄養強化目的で使用された添加物の表示が義務付けられる。
3-3. 栄養成分表示に関する改正内容(案)について
3-3-1. 「別表第9」:食物繊維における許容差の範囲等の見直し。ビタミンB群における測定法の追加。
食物繊維の許容差の範囲等の見直し
2023年度に国内7か所の分析試験機関で行われた試験結果を踏まえ、食物繊維の許容差の範囲を見直す。具体的には、食物繊維の量が100gあたり2.5g未満の場合、許容差を±0.5gとする。また、0と表示できる量を0.5gとする。ビタミンB群については、高速液体クロマトグラフ法を追加する。これにより、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12の測定法が微生物学的定量法に加え、高速液体クロマトグラフ法でも可能となる。
3-3-2. 「別表第10」:日本人の食事摂取基準(2025年版)の公表を踏まえた栄養素等表示基準値の見直し。
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の公表を踏まえ、栄養素等表示基準値を見直す。具体的には、たんぱく質、脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、食物繊維、カルシウム、ビタミンB12、ビタミンDの基準値が増加し、マンガン、亜鉛、銅、ビタミンB1、ナトリウムの基準値が減少する。
3-3-3. 「別表第12」:栄養素等表示基準値の見直しに伴う、栄養成分の補給ができる旨の表示の基準値の見直し。
栄養素等表示基準値の見直しに伴い、栄養成分の補給ができる旨の表示の基準値も見直される。具体的には、たんぱく質、食物繊維、カルシウム、ビタミンB12、ビタミンDの基準値が増加し、亜鉛、鉄、銅、ビタミンB1の基準値が減少する。
<配布資料>
【議事次第】令和6年度食品表示懇談会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_01.pdf
【資料1】令和6年度食品表示懇談会開催要領
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_02.pdf
【資料2-1】令和5年度食品表示懇談会取りまとめ概要
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_03.pdf
【資料2-2】今後の進め方のスケジュール
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_04.pdf
【資料2-3】令和5年度食品表示懇談会取りまとめ
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_05.pdf
【資料3】食品表示へのデジタルツール活用検討分科会について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_06.pdf
【資料4】個別品目ごとの表示ルール見直し分科会について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_07.pdf
【資料5-1】食品表示基準改正について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_08.pdf
【資料5-2】栄養強化目的で使用した添加物の表示について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_09.pdf
【資料5-3】栄養成分表示に関する改正内容(案)について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241213_10.pdf
<一次情報>
令和6年度食品表示懇談会(2024年12月13日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_016/040259.html
令和6年度食品表示懇談会の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/040257/index.html
https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms201_241206_02.pdf
令和6年度食品表示懇談会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_016/
<関連情報>
令和5年度食品表示懇談会取りまとめ
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_007/assets/food_labeling_cms_201_240329_02.pdf
過去実績
https://note.com/fir_institute/n/n24268d3f724c
https://note.com/fir_institute/n/n2aca7c72087d
https://note.com/fir_institute/n/nf93b09e3a870
食品表示へのデジタルツール活用検討分科会(全2回)
https://note.com/fir_institute/n/n9e5a05e12673
https://note.com/fir_institute/n/n5e910321e675
個別品目ごとの表示ルール見直し分科会(全7回)
https://note.com/fir_institute/n/n5a6ae0695592
https://note.com/fir_institute/n/nfc995daa9397
https://note.com/fir_institute/n/n1af909b85690
https://note.com/fir_institute/n/n6471256dab8d
https://note.com/fir_institute/n/n4b43cc7e110d
https://note.com/fir_institute/n/n89ec991ee297
https://note.com/fir_institute/n/n89b53fd8ff43