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ESG投資と食品産業の展望

ESG投資と食品産業の展望(本文2,303文字)
 
 
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(MUFG)は、令和7年1月15日付にて「ESG投資の観点からみた栄養課題への食品産業の対応」と題した調査レポートを公表しました。
 
MUFGによる本レポートは、食品産業がどのようにして栄養課題に取り組んでいるかについて、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)投資の観点から、食品企業の取り組みを評価し、栄養課題に対する対応の重要性を解説しています。
詳細な情報は<一次情報>ならびに<関連情報>からご確認ください。
 
 
<レポートの概要>
1. 栄養課題の背景
栄養課題とは、栄養不良や肥満、生活習慣病など、健康に関わる問題を指す。これらの問題は、個人の健康だけでなく、社会全体の経済的負担にも影響を与える。特に、発展途上国では栄養不良が深刻な問題となっており、先進国では肥満や生活習慣病が増加している。食品産業は、これらの課題に対する解決策を提供する重要な役割を担っている。
 
2. ESG投資と栄養課題
ESG投資は、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点から企業を評価する投資手法である。食品産業においては、特に「社会」の部分で栄養課題への対応が重要視されている。企業が栄養課題にどのように取り組んでいるかは、投資家にとって重要な評価基準となっている。
 
3. ATNiグローバル・インデックス
ATNi(Access to Nutrition Initiative)は、食品・飲料業界の栄養に関する取り組みを評価する指標である。2024年版のインデックスでは、企業の栄養改善への取り組みが評価され、ダノンが最も高い評価を受けた。ATNiグローバル・インデックスは、企業の栄養改善への取り組みを総合的に評価し、ランキング形式で発表している。
 
4. 食品企業の取り組み
食品企業は、栄養課題に対して多角的なアプローチで取り組んでいる。
4-1. 製品の改良
消費者が健康的な選択をしやすくするために、製品の改良を行っている。例えば、低糖・低脂肪製品の開発や、ビタミンやミネラルを強化した栄養強化食品の提供が挙げられる。これにより、消費者は健康的な食生活を維持しやすくなる。
・ 低糖・低脂肪製品の開発・・・ 多くの食品企業が、砂糖や脂肪の含有量を減らした製品を開発している。これにより、消費者はカロリー摂取を抑えながら、健康的な食生活を送ることができる。
・ 栄養強化食品の提供・・・ ビタミンやミネラルを強化した食品を提供することで、栄養不足を補う努力が行われている。これにより、特に栄養不良が問題となっている地域での健康改善が期待される。
4-2. 栄養教育
消費者教育プログラムを通じて、健康的な食生活を促進している。例えば、栄養に関する情報を提供するプログラムや、学校での教育活動が行われている。これにより、消費者は栄養に関する知識を深め、健康的な選択をすることができる。
・ 消費者教育プログラム・・・ 食品企業は、消費者に対して栄養に関する情報を提供するプログラムを実施している。これにより、消費者は自分の食生活を見直し、健康的な選択をすることができる。
・ 学校での教育活動・・・ 子供たちに健康的な食習慣を身につけさせるために、学校での栄養教育活動が行われている。これにより、将来的な健康問題の予防が期待される。
4-3. サステナブルな原材料の使用
持続可能な農業方法を採用し、栄養価の高い食品を提供する努力をしている。例えば、環境に配慮した農業方法や、地元産の新鮮な食材の使用が挙げられる。これにより、消費者は栄養価の高い食品を手に入れることができる。
・ 環境に配慮した農業方法・・・ 農薬や化学肥料の使用を最小限に抑え、土壌や水質の保全を図る農業方法を採用している。これにより、環境への負荷を軽減し、持続可能な食料生産を実現している。
・ 地元産の新鮮な食材の使用・・・ 地元で生産された新鮮な食材を使用することで、輸送による環境負荷を減らし、地域経済の活性化にも貢献している。これにより、消費者は栄養価の高い食品を手に入れることができる。
 
5. 企業の評価
レポートでは、企業の栄養課題への取り組みが評価されている。例えば、ダノンは栄養改善に向けた積極的な取り組みが評価され、最も高い評価を受けた。一方で、他の企業も改善の余地があり、さらなる努力が求められている。企業の評価は、具体的なデータに基づいて行われており、透明性が高いと評価できる。
 
6. 改善の余地
一部の企業はまだ栄養課題への対応が不十分であり、さらなる改善が求められている。特に、中小企業や新興市場の企業に対する支援が重要である。これらの企業は、資源や知識が限られているため、栄養課題への対応が難しい場合がある。政府や業界団体は、これらの企業を支援するための政策を実施する必要がある。
 
7. 政策提言
レポートは、政府や業界団体に対しても政策提言を行っている。例えば、栄養教育の強化や、持続可能な農業の推進が挙げられる。これにより、食品産業全体の栄養改善に向けた包括的なアプローチが示されている。政策提言は、具体的なデータに基づいて行われており、実効性が高いと評価できる。
 
 
<まとめ>
食品産業は、栄養課題に対して多角的なアプローチで取り組んでいます。製品の改良や栄養教育、サステナブルな原材料の使用など、さまざまな方法で消費者の健康を支援しています。これらの取り組みは、ESG投資の観点からも重要であり、企業の評価に大きく影響します。レポートは、企業の取り組みを具体的なデータに基づいて評価しており、透明性が高いと評価できます。さらに、政府や業界団体に対する政策提言も行っており、食品産業全体の栄養改善に向けた包括的なアプローチが示されています。
 
詳細な情報は<一次情報>ならびに<関連情報>からご確認ください。
 
 
 
<一次情報>
【MUFG】ESG投資の観点からみた栄養課題への食品産業の対応 ~2024年版ATNiグローバル・インデックス~
https://www.murc.jp/library/report/cr_250115/
 
 
<関連情報>
【国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所】日本版栄養プロファイルモデル(加工食品版・料理版)を開発
https://www.nibiohn.go.jp/pr/press/documents/4c7ad5b706b7759758bf09e72f0e4f66b525d674.pdf
【厚生労働省】日本人の食事摂取基準
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
【消費者庁】食品の栄養成分表示制度の概要
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/nutrient_declearation/assets/food_labeling_cms206_20220531_04.pdf
【FAO/ WHO】栄養表示に関するガイドライン(CAC/GL 2-1985)
https://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/codex/06/dl/06a.pdf
 
 

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