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農業分野のカーボン・クレジット市場が新設
農業分野のカーボン・クレジット市場が新設(本文1,915文字)
農林水産省は、令和6年12月06日に東京証券取引所カーボン・クレジット市場において農業分野の売買の区分が新設されることを公表しました。これは農業分野での温室効果ガス排出削減を目指す「みどりの食料システム戦略」と密接に関連しており、J-クレジット制度を活用することで、持続可能な農業を推進することを目的としています。
区分の新設により、農業分野のクレジット取引が活発化し、温室効果ガスの排出削減が期待されます。なお、売買区分の変更は令和7年01月06日に実施される予定です。
<「みどりの食料システム戦略」とは>
「みどりの食料システム戦略」とは、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるための新たに策定された政策方針です。令和4年には「みどりの食料システム法(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律)」が施行され、政策が掲げる目標の達成に向けて、食料システムの関係者による環境負荷を低減させる活動を後押ししています。「みどり戦略」と略称される場合もあります。
現在、環境負荷低減の支援活動が本格化ししつつあるところですが、行政は引き続き「みどりの食料システム戦略」の積極的な周知活動、戦略に基づく取組を発信、国内の調達・生産・加工流通・消費にわたるサプライチェーン全体へ普及・浸透など、「みどりの食料システム戦略」について食料システム関係者の理解浸透を進めることによって持続可能な生産消費の普及・促進に取り組んでいます。
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図1 みどりの食料システム戦略(概要)
![](https://assets.st-note.com/img/1733715374-cta430v5hle6Cxq2RABkrJPG.png?width=1200)
図2) みどりの食料システム(具体的な取組)
<「みどりの食料システム法」とは>
「みどりの食料システム戦略」の根幹となる「みどりの食料システム法」は、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念等を定めています。そして、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する計画の認定制度を設けることにより、農林漁業及び食品産業の持続的な発展、環境への負荷の少ない健全な経済の発展等を図るものとされています。
<カーボン・クレジットとは>
「カーボン・クレジット」とは、温室効果ガスの削減量や吸収量をクレジットとして認証し、取引できる仕組みです。企業や団体が削減した余剰分を他の企業や団体に売却することができます。
日本取引所グループは、令和5年10月11日に東京証券取引所でカーボン・クレジット市場を正式に開設し、初日に3,689トンの取引が成立しました。この市場は、経済産業省の委託事業として実証され、今回正式に開設されました。参加者は法人や地方自治体などで、J-クレジット登録簿システムの口座を開設する必要があります。市場は1日2回の約定で、取引対象はJ-クレジットのみです。売買区分は「省エネ」「再生可能エネルギー(電力)」「再生可能エネルギー(熱)」「森林」「その他」の5つに分かれています。
今回、農業分野の売買区分が新設され、水稲栽培の中干し期間延長やバイオ炭の農地施用に関するJ-クレジットの取引が可能となりました。これにより、農業分野のクレジット取引が活発化し、温室効果ガスの排出削減が期待されています。
<展望>
農業分野のカーボン・クレジット新設により、温室効果ガスの削減と経済的メリットが推進され、持続可能な農業の実現に向けた取り組みの加速が期待されます。
1. 期待される事項
1-1. 温室効果ガスの削減
農業分野は日本の温室効果ガス排出量の約4.2%を占めており、新設されたカーボン・クレジットにより、水稲栽培の中干し期間延長やバイオ炭の農地施用が促進され、排出削減が期待されます。
1-2. 経済的メリット
農業者は削減した温室効果ガスをクレジットとして販売することで、新たな収入源を得ることができます。これにより、農業経営の安定化が図られます。
1-3. 地域貢献と生物多様性の保全
自然を軸としたソリューション(NbS)型のカーボン・クレジットは、地域の生態系保全や環境意識の向上にも寄与します。
2. 展望
2-1. クレジット取引の活性化
農業分野のクレジット取引が活発化し、農業者の参加が増えることで、市場全体の流動性が向上します。これにより、取引の透明性と効率性が高まります。
2-2. 方法論の拡充
今後、農業分野での新たな方法論が追加されることで、さらに多様な削減・吸収プロジェクトが展開されることが期待されます。これにより、農業の持続可能性が向上し、環境負荷は低減されていきます。
2-3. 国際的な関心の高まり
日本国内だけでなく、国際的にも農業分野のカーボン・クレジットが注目され、グローバルな温室効果ガス削減の取り組みに貢献することが期待されます。
<一次情報>
東京証券取引所カーボン・クレジット市場において農業分野の売買の区分が新設されます
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/241206.html
【農林水産省】農林水産分野のJ-クレジット制度
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/jcredit/top.html
【東京証券取引所】カーボン・クレジット市場
https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/index.html
【東京証券取引所】カーボン・クレジット市場における売買の区分の変更について農業(中干し期間の延長)・農業(バイオ炭)
https://www.jpx.co.jp/equities/carbon-credit/market-system/nlsgeu000006f14i-att/Change_of_Trading_Categories_Agriculture.pdf
<関連情報>
みどりの食料システム戦略トップページ
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/
みどりの食料システム法について
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/houritsu.html
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(令和4年農林水産省告示第1412号)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/houritsu.html#h_69877885961662471448330
みどり戦略施策活用ガイドブック(令和6年1月版)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-183.pdf
みどりの食料システム戦略
https://youtu.be/aMJmHVyGmyY