第110回食料・農業・農村政策審議会企画部会 概要
第110回食料・農業・農村政策審議会企画部会 概要(本文3,291文字)
農林水産省は、令和6年10月2日に「食料・農業・農村政策審議会企画部会(第110回)」を開催しました。部会で審議された内容について概要をご案内します。
<議事>
1. 食料・農業・農村基本計画の策定に向けた検討(国民一人一人の食料安全保障・持続可能な食料システム)
2. その他
<食料・農業・農村基本計画の策定に向けた検討の概要>
1. 食品アクセス
1-1. 現状分析
1-1-1. 物理的アクセス
・ 過去は食料の総量確保で流通が発達すると考えられていた
・ 高齢化や単身世帯の増加、地元小売業の廃業などで食品購入が困難に
・ 移動販売や宅配、買物支援バスの運行が進行中
・ 令和5年度のアンケート調査で89.9%の市町村が対策を実施
1-1-2. 経済的アクセス
・ 低所得者層の増加で健康的な食生活が困難に
・ フードバンクやこども食堂の数が増加
・ 持続的な食品提供のためのプラットフォーム構築が進行中
・ 企業からの寄附食品を効率的に配布する協議会の設立が広がり始めている
1-2. 分析と検討
1-2-1. 5年後のすう勢
・ 65歳以上の単独世帯が増加し続ける見込み
・ ひとり親世帯も増加する見込み
1-2-2. 克服するべき課題
・ 買物困難者や経済的困窮者への対応が必要
・ 地域ごとのフードチェーンの確保・強化が求められる
1-2-3. 検討の視点
・ 各地域がそれぞれの課題に対応した取り組みが必要
・ 関係省庁の連携が重要
・ 食品事業者や物流事業者、NPOなどの連携が求められる
2. 食品安全・消費者の信頼確保
2-1. 現状分析
2-1-1. 食品安全に関するリスク管理措置
・ 食品の安全性を確保することは国の重要な責務であり、農林水産省をはじめ関係府省庁が一体となって取り組んでいる
・ 科学的知見に基づいた指針やガイドラインを策定し、食品を汚染する危害要因に対する対策を示している有害化学物質や微生物についても適切にリスク管理を実施し、安全性を確保している
2-1-2. 食品表示の適正化等
・ 食品表示の適正化は消費者の信頼を確保するために重要であり、農林水産省が食品表示法に基づき監視業務を実施している
・ 不適正表示が認められた場合には、表示の是正や再発防止策を指示している最近では、産地偽装や加工食品の原材料表示の不適正事案が発生している
2-2. 分析と検討
2-2-1. 5年後のすう勢
・ 気候変動により、重金属やかび毒、病原微生物などの汚染状況が変動する見込み
・ 新たな危害要因への対応が必要
・ リスクアナリシスの枠組みに沿った未然防止の対応を着実に実施
・ 健康リスクは低く維持される見込み
2-2-2. 克服するべき課題
・ 気候変動による有害化学物質や微生物の濃度分布の変動
・ 新たな危害要因への対応
・ 生産資材の安全性向上
・ 消費者への知識普及
2-2-3. 検討の視点
・ 科学的知見に基づくリスク評価と管理を推進
・ 新興の危害要因に対する実態調査と指針策定
・ 消費者リテラシー向上のため、SNSを活用した情報発信
・ リスクコミュニケーションの推進
3. 食品産業
3-1. 現状分析
3-1-1. 食品産業の概況
・ 食品産業は国産農林水産物の主要な仕向け先として重要な役割を担う
・ 2022年の食品産業の国内生産額は96.1兆円で、全経済活動の8.6%を占める
・ 食品製造業と関連流通業の生産額は増加傾向にあるが、外食産業は新型コロナウイルス感染症の影響から回復途上
3-1-2. 国内状況
・ 食品産業の大半が中小零細企業であり、機械化・自動化の遅れにより労働生産性が低い
・ デフレ経済下で低価格競争が普遍化
・ トラック輸送に依存しており、ドライバーの減少や時間外労働の上限規制による輸送力不足が懸念される
3-1-3. 海外状況
・ 国内市場の縮小に対し、海外市場は拡大傾向
・ 食料需要増加や気候変動で農産物生産が不安定化し、原料調達リスクが増大
・ 欧米で環境負荷低減や人権配慮の国際ルールが進展し、企業評価やESG投資の基準となっている
3-2. 分析と検討
3-2-1. 5年後のすう勢
・ 少子高齢化とライフスタイルの変化により、単身世帯や共働き世帯が増加し、食の外部化・簡便化が進む
・ 一人当たり食料支出額は、生鮮食品が7%減、加工食品が17%増、外食が8%増の見込み
・ 訪日外国人の飲食消費額は増加傾向にあり、今後も増加が見込まれる
・ 食品産業の事業主の3~5割が70歳以上で、その5割以上が事業承継の意向を示しておらず、事業者数の減少が見込まれる
・ 2030年には2019年比で輸送能力が34.1%不足すると予想されている
・ 世界人口の増加により、国際的な食市場は拡大傾向主要国の飲食料マーケットは2015年の890兆円から2030年には1,360兆円に成長する見込み我が国の農林水産物・食品の輸出額も拡大の余地がある
3-2-2. 克服すべき課題
・ 食料の輸入リスクの顕在化には輸入原材料の調達リスク増大に対応し、国産原材料の利用促進や地域の関係者との連携が必要
・ 物流問題への対応には長距離トラックに依存する物流の効率化が求められる
・ 環境問題等への関心の高まりに対し、環境負荷低減や人権配慮が重要視され、対応が不十分な事業活動は取引停止や資金調達の支障を招く恐れがある
・ 消費行動への情報提供の必要性について、CO2削減などの環境配慮の取組が消費者に十分伝わっておらず、製品選択や行動変容が進んでいない
・ 世界的な技術革新の進展に伴う労働力不足に対応した生産性向上が急務フードテック等の先端技術への国内投資が伸びず、新たなビジネスが生まれにくい
・ 脆弱な業界構造の改善には、中小零細企業が多く、事業主の高齢化により事業継続に支障が生じる恐れ国内人口減少に伴う食料需要減少を見据え、海外市場を視野に入れた転換が必要
3-2-3. 検討の視点
・ 農林漁業者等との安定的な取引関係の確立には、食品事業者と農林漁業者が連携し、原材料の安定調達や新しいビジネスの展開を促進する必要がある
・ 流通の合理化には、標準パレットの導入や中継共同物流拠点の整備、多様な輸送モードを活用したモーダルシフトの推進が必要
・ 環境負荷低減等の促進には、製造工程の脱炭素化や環境負荷低減技術の導入、国際的なルール形成への積極的な参画が必要
・ 消費者の選択への寄与には、有機栽培や環境配慮の情報をラベル表示する「見える化」の取組を進め、更なる仕組みの検討が必要
・ 技術の開発・利用の推進には、AIやロボット等の自動化技術の活用を促進し、生産性向上を図る必要がある
・ 事業基盤の充実等には、事業承継による基盤充実を促進し、地域の食品産業の中堅企業化を図る必要がある
4. 合理的な価格形成
4-1. 現状分析
・ 2021年以降、肥料や飼料などの生産資材の価格が上昇し、高い水準が継続
・ 人件費、エネルギー費、物流費等のコストも上昇し、食料システム全体に影響
・ 国内の農産物価格は一部高騰したものの、多くの品目でわずかな価格上昇
・ 長期的にはデフレ経済下で安売り競争が常態化し、食料品の値上げを敬遠する意識が定着
4-2. 分析と検討
4-2-1. 5年後のすう勢
・ 賃上げや物価上昇を伴う経済への再帰を目指し、食料の価格についてもコスト上昇に見合った価格改定が行われる環境の整備が求められる
4-2-2. 克服すべき課題
・ 品目別のコストの明確化には、コストの見える化が必要であり、幅広い品目を対象にコスト構造の実態調査を行う必要がある
・ 消費者を始めとする関係者の理解醸成には、食料の低価格意識を変えるための情報発信が必要
・ 合理的な費用が考慮される仕組みの構築には、コストを明確化し、速やかに交渉を開始することが必要
4-2-3. 検討の視点
・ 農林漁業者等との安定的な取引関係の確立には、食品事業者と農林漁業者が連携し、原材料の安定調達や新しいビジネスの展開を促進する必要がある
・ 流通の合理化には、標準パレットの導入や中継共同物流拠点の整備、多様な輸送モードを活用したモーダルシフトの推進が必要
・ 環境負荷低減等の促進には、製造工程の脱炭素化や環境負荷低減技術の導入、国際的なルール形成への積極的な参画が必要
<配布資料>
資料1 食料・農業・農村政策審議会企画部会委員名簿
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241002-1.pdf
資料2 基本計画の策定に向けた検討の視点 (国民一人一人の食料安全保障・持続可能な食料システム)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241002-9.pdf
参考資料1 我が国の食料安全保障をめぐる情勢(令和6年8月29 日 食料・農業・農村政策審議会資料)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241002-3.pdf
参考資料2 食料・農業・農村基本法 改正のポイント
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241002-4.pdf
参考資料3 食料・農業・農村基本法
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241002-7.pdf
水戸部委員 意見
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/attach/pdf/241002-8.pdf
<一次情報>
食料・農業・農村政策審議会企画部会(第110回)の開催及び一般傍聴について
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kihyo01/240925.html
<関連情報>
食料・農業・農村基本法
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/index.html
食料・農業・農村基本法(食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律(令和六年法律第四十四号)を反映)
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/attach/pdf/index-12.pdf
農林水産大臣談話「食料・農業・農村基本法改正法の成立に当たって」
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/danwa.html
https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/attach/pdf/danwa-1.pdf
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